週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年2月3日号
2024年1月29日 発売
定価 850円(税込)
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【第1特集】過熱! 中学受験狂騒曲(パニック)

何が何でも中高一貫校――。中学受験者数が過去最多を更新しそうな勢いです。一方で社会問題ともいえるような過熱ぶりの弊害も目立つようになりました。そんなパニックの様相すら呈する中学受験の最前線を追いました。本特集では、共学化や大学系列化が起爆剤となり親世代の30年前とは激変した中学序列や、志望校難易度とお任せ度からみた子どもに合った塾選びをリポートしています。また課金地獄の果てに夫婦に修復不能な溝が生まれ離婚危機に陥ったり、合格後に燃え尽きて不登校になるケースなどにも迫りました。
 

【第2特集】岐路に立つ洋上風力


国が進める洋上風力発電入札の第2ラウンド。激戦区の長崎を制したのは、まさかの住友商事連合だった。なぜ商社が強いのか。3海域全勝の深層を追った。

担当記者より

特集「過熱! 中学受験狂想曲(パニック)」を担当した記者の山田雄一郎です。東洋経済オンラインのメルマガ読者の皆さんにアンケートへの回答をお願いし、取材OKの方にお話を聞かせていただきました。ご協力、ありがとうございました。

最初にお会いしたのは仕事始めの1月4日。本を読むことが大好きな娘さんを持つママでした。お話を伺うと、すべてに前向きで好奇心の塊のような娘さんです。自分でどんどん勉強するお子さんで、ママに「親が大変だった」という思いはありません。受けた中学はすべて合格し、その中から娘さんが選んだのは「自分と同じ夢を持っている人が多そうな中学校」。「ここなら明るい空気や品格を身にまとうことができそう」とママも納得です。

次にお会いしたのは、見るからに暗い表情をしたパパ。「息子は受けた中学すべてに合格した」と言います。ところが「中学受験で燃え尽きてしまった」。入学後は勉強をさぼりがち、中1から東大進学という夢に向かって燃える同級生らについていけない。部活の人間関係もギクシャク。次第に中学校を欠席しがちになり、ついに不登校になってしまいました。「中学受験に不満というより、受験させたこと自体を後悔している」と肩を落としています。

3番目は「御三家(開成、麻布、武蔵)」と呼ばれる難関中学出身のパパ。副業で自ら家庭教師をするほどの業界通です。息子に理科を教えるために夜中の1時まで予習するという熱血パパですが、「追い込みの大事な時期に息子が反抗期に入り、勉強しなくなった」と残念そう。でも諦めてはいません。「下の子は反抗期に入る前に受験勉強を終わらせてしまおう」と前向きです。

4番目は娘さんが私立小学校に通っていたパパ。小学校では、放課後に学童を兼ねて外部の提携先塾の個別指導を受けられるということで安心して任せていました。ところが大事な時期に講師がバタバタと辞めてしまい、「それが原因で受験に失敗した」。でも娘さんは強かった。失敗をバネに中学で勉強を頑張りました。中学からは入れなかったものの、高校から第一志望の学校に入ったそうです。

5番目は2月に受験を控える息子さんの現役中受ママ。2つの大手塾で月12万円、家庭教師に月18万円かかると言います。夏休みなどの特別講習で10万、20万、30万円と飛んでいくそうです。でも世帯年収は2200万円。お金がもったいないとは思わないそうです。

6番目は嬉しさいっぱいのママ。娘さんは私立小学校に通っていました。そのまま大学までエスカレーターで行けたのですが、「ぬるま湯につけておくのはどうかな」と受験を娘さんに勧めました。大手塾とカリスマ家庭教師を併用し、偏差値爆上がり中の人気校に合格。中学受験には満足しているそうです。

7番目は苦虫を噛み潰したような表情のパパ。息子さんは通信教育で受験勉強し御三家への進学を目指しました。結果は不合格。滑り止めで受けたミッション系の私立に受かりましたが、そこを蹴り、公立の中学校に。蹴った私立はママの母校でした。「なんでママに内緒で母校への進学を断ったの?」。中学に進学するとママから息子さんへの暴力が始まり、家事の放棄も目立つようになりました。息子さんの朝食のおかずがハム一枚、のり一枚なんて日もザラ。「これはいかん」と離婚しました。

8番目は金融機関にお勤めのママ。公立高校から東大に進学したそうですが、入学すると「御三家出身の同級生は知識が広く、教養が深い」と愕然としたそうです。「伝統のある中学校に入るのは外見的な学歴以上のものがあるのかな」との思いに至り、自分の息子に御三家への進学を勧めました。小学4年生の時に大手塾へ入塾。小6では苦手科目の克服のために現役東大生を家庭教師につけました。結果は合格。息子さんは現在、東大を目指す御三家の生徒が集まる塾に通っているそうです。

他にもさまざまなママやパパがいました。それぞれの家庭にそれぞれのドラマがあります。

子どもの自己実現の足がかりとなり、家庭に歓喜をもたらすこともあれば、子どもや親が悲劇のどん底に陥ることもある。どちらにしてもお金はかかる。御三家なら300万円はザラ、多い人は500万円以上ーーそれが今の中学受験のようです。ジャーナリストの小林美希さんの記事「夫婦に生じた修復不能の溝 課金地獄の果ての離婚危機」を編集しているうちに、短歌のようなものが頭に浮かんできました。

御三家に
夢を描いて
課金沼
金もきずなも
元に戻らず

ぜひ、お手にとってご覧ください。

担当記者:山田 雄一郎(やまだ ゆういちろう)
東洋経済記者。1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
間違いだらけの中学校・塾選び
過熱! 中学受験狂騒曲


過熱する中学受験のリアル

Part1
間違いだらけの中学校・塾選び

中学受験に押し寄せる大学序列変化の大波
[コラム]地方に飛び火する序列異変

親世代とこんなに違う 30年間で激変した序列
■【男女別・中学校偏差値上昇幅ランキング】

志望者が増えた中学校 男子は日工大駒場と横浜創英 女子は普連土と三輪田学園   北 一成
■【男女別・中学校志望者増減ランキング】

塾の情報のみに頼るべからず 口コミサイト「みん中」で高評価 本当にためになる中学校

間違いだらけの塾選び 何が何でも4大塾? 子どもに合った塾はここだ
■「志望校難易度」「塾にお任せ度」からみた主な塾の分布図

推薦枠の拡充に目を奪われるな 高大連携の良しあしは「探究」に表れる   井上 修

Part2
ルポ・中学受験

夫婦に生じた修復不能の溝 課金地獄の果ての離婚危機
合格後に不登校になるケースも 中学受験で「燃え尽きる」子どもたち
「受験うつ」への磁気刺激治療は学会指針に違反の懸念

中受が奪う親と子の時間 プリント管理・宿題で併走… 土日もフル稼働で倒れる寸前
■ある中受ワーママと子どもの1週間

共働きが参戦も、別の難しさ
増える「中受回避」の小学校受験 親自身の「知性」「姿勢」が問われる

Part3
中学受験のデマ

中学受験にはデマと思い込みがてんこ盛り おおたとしまさ
中学受験に「沼る」前に バブル偏差値レシピが生んだ中学受験パニック  おおたとしまさ
・やせ我慢をしてきた私学を功利的な新参者が駆逐する

第2特集
総合商社「3 海域全勝」の深層 岐路に立つ洋上風力
JERA勝利の陰にあった「台湾での苦闘」

[インタビュー]
「死力を尽くして札づくりをしてきた」
住友商事電力インフラ第一部部長 若林浩司/東京電力リニューアブルパワー風力部部長代理 池ノ内岳彦
「28年の運転開始、責任を持って提案した」
JERA常務執行役員 矢島 聡

「火中のくり」を拾ったインフロニア 日本風力開発「大型買収」の全内幕

[インタビュー]
国内最大の「 陸上風力」断念の真相
ユーラスエナジーホールディングス副社長 秋吉 優

ニュース最前線
ダイハツで新たに不正発覚 生産再開はいつになるのか
新社長は「初めて尽くし」 JAL新体制を待つ難題
能登半島地震で電源切れ 「地上波テレビ」の限界


連載
|経済を見る眼|多死社会における家族機能の社会化|藤森克彦
|ニュースの核心|脱炭素推進へ日本でも「ヒートポンプ」の本格推進を|岡田広行
|発見! 成長企業|ジェイ・イー・ティ
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|三井住友信託銀行 社長 大山一也
|フォーカス政治|岸田首相、自民総裁再選への茨の道|塩田 潮
|マネー潮流|現物ETF上場後のビットコイン|木内登英
|中国動態|台湾新総統と米中の新たなバランス|小原凡司
|財新 Opinion&News|恒大系EVメーカー、トップの拘束が呼ぶ臆測
|グローバル・アイ|トランプ再選で恐れるべき独裁への現実シナリオ|ジェレミー・エイデルマン
|Inside USA|英『エコノミスト』誌が突く米リベラルの変調|会田弘継
|少数異見|羽田空港事故のペット騒動から考える
|ヤバい会社烈伝|エネオス トップ連続セクハラ 内側はこんなんです|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法43|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|駅近に残る生産緑地 宅地転用が進まない理由|宮崎智視
|話題の本|『ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか』著者 森下香枝氏に聞く ほか
|社会に斬り込む骨太シネマ|『哀れなるものたち』
|シンクタンク 厳選リポート|
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|ゴルフざんまい|「小林浩美流」 パッティング練習法|小林浩美
|編集部から|
|次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2024年2月3日号」(1月29日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
71ページ ■中学受験のデマと思い込み  ⑧最難関校に多数合格者を出している塾がいい塾?

【誤】:さらに早稲田アカデミーは関西の馬渕教室とも提携しており、1月に関西最難関中学の受験を終えた馬渕教室の精鋭たちが首都圏の最難関中学の合格をさらう遠征受験の結果の少なくとも一部が、早稲田アカデミーの合格者にもカウントされている。
 ↓
【正】:上記の1文を削除