「ビッグデータって10年前くらいにもてはやされたけど最近あまり聞かないねぇ。生成AIも生まれ、かなり発展しているんじゃないかなぁ」
今回の週刊東洋経済の特集『データ錬金術』は、編集部内で次の特集内容について議論していた時に出たこんな声から始まりました。確かにひと昔、「データは宝の山」と言われて、ビッグデータがもてはやされていた時代がありました。
そこで当時、ビッグデータについて発言していた専門家を軒並み取材してみたところ、皆、少々あきらめ顔。詳しく聞いてみたところ、「データが宝の山であることは間違いない。だが、その利活用は容易ではなく、うまく行っているところはそんなに多くない」との話でした。
これはまずいと冷や汗が。そこで最もデータを保有し、かつてビッグデータの販売などを華々しくぶち上げていた鉄道会社や携帯キャリア、そして銀行などを軒並み取材して回りました。すると、そこには意外な姿が。皆一様に「ビッグデータは扱いが難しいんです」と表情が芳しくありません。
よくよく聞くと、「データは大量にあるんです。しかしどう使うのかという目的、ゴールを定めないと、なんら意味がないものになるんです」との声が多数。さらに「データを買う顧客側にデータを加工する人もいないしノウハウもないので……」というのです。
とはいえ詳しく取材すると、大手企業を中心に、さまざまな工夫を施しながらデータの外販に乗り出している企業が。そこで今回の特集では、データを金に換えている企業の取り組みを紹介しています。
また「情報」を生かしているのは表社会の企業だけではありません。アンダーグラウンドの世界でも「情報」は命です。そこで、週刊東洋経済としては珍しく、アウトローたちの情報活用術についてもまとめてみました。
情報が金になることは間違いありません。特集を読んで、新たなビジネスを生み出すきっかけにしていただければと思います。
担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
週刊東洋経済編集部副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社し現職。