特集「介護 異次元崩壊」を担当した野中大樹です。
介護というと、若い世代が高齢者のおむつを換えたりお風呂に入れたりというイメージでしたが、今回の取材で目の当たりにしたのは70歳、80歳を超える訪問ヘルパーたちが自分より年下の介護をする姿でした。
80歳を超えてもヘルパーを続ける彼女たちにその理由を尋ねると「私は福祉の仕事が好きなのよ」と語る方もいれば、「私たちの世代が若い世代の重荷にならないようにしないと」と持論を展開する方もいました。
人間かくありたいと感じ入りましたが、感心してばかりではいられない現実があります。
介護業界は未曾有の人手不足。高齢者人口がどんどん増えているのに、若い世代は低賃金の介護職に魅力を感じず就職先として選びません。その結果、加速度的に進んでいるのが介護職の高齢化です。在宅介護の要である訪問介護員にいたっては、4人に1人が65歳以上になりました。
国は「病院から住み慣れた地域へ」「自宅で最期まで」と、きれいなキャッチコピーで在宅介護を推奨してきました。しかし、在宅介護は今後も持続可能なのでしょうか。
ある訪問介護事業所の役員は言いました。「今は、高齢ヘルパーさんたちの心意気、志によってギリギリ持ちこたえている状態。でも10年後はどうなっているのでしょう」。
特集では、22人の入居者に1人で対応する特養「夜勤」の過酷さや、介護崩壊の果てに過去最多となった高齢者虐待の真相にも迫っています。
介護は、ほぼすべての人が当事者になる日が来ます。その時、心安らかでいられるか。明日の我が身を想像しながら読んでもらえると嬉しいです。
担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

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