週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年2月17日号
2024年2月13日 発売
定価 880円(税込)
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【第1特集】介護 異次元崩壊

今は当たり前のように使える介護サービスですが、急速な人手不足が進行し、かつてない異次元ともいえる崩壊が起きています。「自宅で最期まで」、そんな希望は10年後にはかなわないかもしれません。本特集では84歳のヘルパーが支える「訪問介護」や夜勤時22人に1人での対応を要するほど崖っぷち状態の「特養」など、直面する介護職不足の衝撃的な実態をリポートしています。こうした介護崩壊の果てに生じている、部屋に閉じ込める、薬で動けないようにするなど過去最多となった高齢者虐待の現実も取り上げました。
 

【第2特集】都心百貨店 消滅の先


わが世の春を謳歌する都心百貨店。一方で駅前再開発で消滅危機の都心百貨店もある。各社は富裕層へとターゲットを切り替え、生き残りを図る。

担当記者より

特集「介護 異次元崩壊」を担当した野中大樹です。

介護というと、若い世代が高齢者のおむつを換えたりお風呂に入れたりというイメージでしたが、今回の取材で目の当たりにしたのは70歳、80歳を超える訪問ヘルパーたちが自分より年下の介護をする姿でした。

80歳を超えてもヘルパーを続ける彼女たちにその理由を尋ねると「私は福祉の仕事が好きなのよ」と語る方もいれば、「私たちの世代が若い世代の重荷にならないようにしないと」と持論を展開する方もいました。

人間かくありたいと感じ入りましたが、感心してばかりではいられない現実があります。

介護業界は未曾有の人手不足。高齢者人口がどんどん増えているのに、若い世代は低賃金の介護職に魅力を感じず就職先として選びません。その結果、加速度的に進んでいるのが介護職の高齢化です。在宅介護の要である訪問介護員にいたっては、4人に1人が65歳以上になりました。

国は「病院から住み慣れた地域へ」「自宅で最期まで」と、きれいなキャッチコピーで在宅介護を推奨してきました。しかし、在宅介護は今後も持続可能なのでしょうか。

ある訪問介護事業所の役員は言いました。「今は、高齢ヘルパーさんたちの心意気、志によってギリギリ持ちこたえている状態。でも10年後はどうなっているのでしょう」。

特集では、22人の入居者に1人で対応する特養「夜勤」の過酷さや、介護崩壊の果てに過去最多となった高齢者虐待の真相にも迫っています。

介護は、ほぼすべての人が当事者になる日が来ます。その時、心安らかでいられるか。明日の我が身を想像しながら読んでもらえると嬉しいです。

担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
ヘルパーが消える、サービスが受けられなくなる日
介護 異次元崩壊


[カバーストーリー]80歳超のヘルパーが奮闘 人手不足で崩壊寸前
[インタビュー]24年目の介護保険 改良史か? 黒歴史か?
  認定NPO法人ウィメンズ アクション ネットワーク理事長/東京大学名誉教授 上野千鶴子
  厚生労働省老健局長 間 隆一郎

Part1
介護職不足の衝撃

夜勤密着ルポ! コールが鳴りやまない
22人に1人だけで対応 「特養」は崖っぷち

人手不足なのに報酬減の試練 存続の危機に直面する訪問介護
「塾には行かせられない」「結婚相談所は退会した」 低賃金にあえぐ介護職
[Q&A]あなたの保険料・利用料に直結! 縮小は避けられない? 介護保険の将来像

Part2
介護崩壊の果て

部屋に閉じ込める、薬で動けないようにする
機能不全の組織体制が生む過去最多の高齢者虐待

安易に入院させられるケースも 急増する“単身高齢者”は介護保険だけでは救えない
死に至るケースもあるが実態は闇の中 精神科病院で多発する認知症の人への身体拘束

パワハラ、セクハラ、カスハラにいつまで耐えられるか 介護職員覆面ホンネ座談会
国が就労での利用を認めない 障害者介護の死角
過剰な介護サービスが給付費のムダを生む ケアマネは「集客マシン」か

Part3
踊る介護企業

改革の手法はコンサル仕込み
大規模化と収益増を図る投資ファンド

介護職員の配置基準に風穴を開けた SOMPOケア実証実験の成否
介護業界では高い利益率 「看取りビジネス」急拡大の危うさ
人手不足につけ込んで荒稼ぎ 介護保険料が人材紹介会社に流れる

Part4
介護難民にならないために!

主治医やケアマネ選びに要注意 要介護認定の思わぬ“落とし穴”
親子で時間をかけて検討を 終の住処選びでのミスマッチを防ぐ

第2特集
絶好調なのになぜ? 都心百貨店 消滅の先
[インタビュー]30年前に「百貨店は終わる」 西武百貨店・元社長の先見
  IMA 代表 水野誠一

地獄を見た百貨店アパレルの現在地

[インタビュー]日本社会が二極化している 好立地でもビジネス客が弱い
  J. フロント リテイリング 社長 好本達也
[インタビュー]百貨店は「プロデューサー」 和製ラグジュアリーを目指す
  三陽商会 社長 大江伸治

スペシャルリポート
絶好調の業績でも喜べない 不正に揺らぐトヨタグループ

インタビュー
前駐中国大使 垂 秀夫
「中国が最も恐れる男」が見据える対中関係の急所


連載
|経済を見る眼|今や不人気「公務労働」の魅力向上を|太田聰一
|ニュースの核心|「台湾有事」バブルが残した教訓|西村豪太
|発見! 成長企業|住信SBIネット銀行
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|三井E&S 社長 高橋岳之
|フォーカス政治|自民党混迷で小池新党誕生の現実味|山口二郎
|マネー潮流|今年の原油市場を需給で考える|高井裕之
|中国動態|対外関係で強まる「政法系統」の力|益尾知佐子
|財新 Opinion&News|中国自動車市場に異変、崩れたEVの独り勝ち
|グローバル・アイ|暗号資産企業FTXは破産などしていなかった|イアン・エアーズ/ジョン・ドノヒュー
|Inside USA|トランプの“狂気”、メディアはどう伝えるべきか|瀧口範子
|少数異見|食品ロスと「もったいない」精神
|ヤバい会社烈伝|会社法 そもそも株式会社は略奪装置ってか!|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法45|佐藤 優
|経済学者が読み解く現代社会のリアル|花粉飛散量の多い日ほど 交通事故や労災が増える|明坂弥香
|話題の本|『世界のエリートが学んでいる 教養書必読100冊を1冊にまとめてみた』著者 永井孝尚氏に聞く ほか
|社会に斬り込む骨太シネマ|『一月の声に歓びを刻め』
|シンクタンク 厳選リポート|
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|ゴルフざんまい|オリンピック代表2枠をめぐる戦い|佐藤信人
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