特集「物も人も動かない ドライバーが消える日」をまとめた大野和幸です。
「2024年問題」がいよいよこの4月に到来します。2024年問題とは、主にトラックのドライバーの時間外労働(残業)が年間最大960時間までに規制されるため、物流が滞ると懸念されている問題です。もともとは2019年4月に施行された働き方改革関連法に遡るのですが、顧客に直接影響する自動車運転業や建設業、医師などは例外とされ、5年間の猶予がありました。それがなくなるのがこの4月1日から、というわけです。
しかし、取材の中では、現実との矛盾も垣間見えました。若手ドライバーは休みがほしい一方、50代で家庭もあるドライバーたちは口をそろえたように、「残業をしてでもいいからお金がほしい」と言います。バブル期ピークに入社した今の50代は、当時(90年前後)、先輩たちが派手な芸者遊びをしたり、家を複数持てたりという、武勇伝を聞かされてきた世代。豊富な収入と引き換えに、労働基準法さえ守られてこなかった時代でした。そんな時代にノスタルジーを感じるのもわからないではありません。
これからは違います。年間の残業時間はもちろん、1日と1日の間に11時間の休息時間(インターバル)を設けなければならないなど、きめ細かな対応が企業にも義務付けられます。消費者の目も厳しくなってきており、取引先や地域社会など、さまざまなステークホルダーを意識する必要があるのです。
トラックだけではありません。4月からはタクシーやバスのドライバーも、24年問題の規制の対象になります。需要の大きさに供給が足りず、日本全国でドライバーがいなくなる事態はすぐそこまで来ています。さらに目を転じれば、公共交通の柱である在来線(鉄道)の運転士や飛行機のパイロットすら、絶対数が不足しているのが現実です。
目先、ドライバーが不足すると、どんなことが起こるのか。そうしたことが起こらないよう、今からどんな手が打てるのか。本特集では現場の最新事情から、現在進行中の対処法まで、さまざまな観点からリポートしています。ぜひご覧ください。
担当記者:大野 和幸(おおの かずゆき)
ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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