特集「ゼネコン下剋上」を担当した梅咲恵司です。建設業は4月から時間外労働の上限規制の適用を受けます。この「2024年問題」は社会問題化しかねないトピックスだけに、導入直前のタイミングで取り上げることにしました。
企画段階では、特集のタイトルについては「黒船来襲」を想定していました。「建設業は黒船=外圧じゃないと変えられない」。特集のエピローグで紹介した超大手ゼネコン幹部の言葉です。取材を本格化する前に、雑談の中で出た言葉なのですが、強く印象に残っていたのです。
ただ、黒船だと、「海外から何か圧力があるのか」と読者をミスリードしかねない。そこで、建設業界に新しい図式が生まれるという意味を込めた「下剋上」というタイトルに決まりました。
全国で48万社がひしめく建設業界は、そのほとんどを中小・零細企業が占めます。規模の大きくない事業者は、規制適用への対応も一筋縄ではいきません。現場の最前線にいる職人も、規制適用を受けて週休2日の現場が増えれば収入が減ることになるので、喜べる問題ではありません。
下請け会社や職人は、規制適用をどう見ているのだろうか。そういった問題意識から、サブコンなどの下請け会社や職人などへの取材をいつもより厚くしました。「下請け会社が本音を大暴露」や「下請け・職人の『警戒心』」などのコーナーに反映しています。
ランキングも充実しました。「新卒社員の『3年後定着率』ランキングは、東洋経済のデータ事業局が持つ独自のデータを活用したものです。「『稼ぐ』地場ゼネコンランキング」は、東京・関東圏などエリアごとに純利益の増減額(2期前と直近)を比較したもので、地場に根を張る企業が数多く登場します。
建設業界にはこの先、労働環境が改善され、若者の流入が増えるのか。それとも悪しき慣習が残り、インフラ構築を支える重要産業ながら衰退していくのか。ぜひ、お手にとってご覧ください。
担当記者:梅咲 恵司(うめさき けいじ)
ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。