週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年5月11日号
2024年5月7日 発売
定価 900円(税込)
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【第1特集】溶ける地方創生マネー 喰われる自治体

地方創生が叫ばれ始めてから10年が経ちましたが、地域活性化に成功したという自治体はそう多くないのが実情です。それでは地方創生をめぐる「カネ」はどこへ溶けていったのでしょうか。本特集では地方創生マネーが都会のコンサルに吸い上げられていく実態や、弱った自治体の機能をぶんどる「過疎ビジネス」など、地方創生の虚構を描き出しています。一方でコンサル主導の計画に住民が待ったをかけたケースや地場の中小企業が創生を実現した実例など、喰われないまちづくりに取り組んだ好事例も多数紹介しています。
 

【第2特集】マイクロソフト 「AI革命」の深層


生成AI電撃戦を仕掛け、世界中を熱狂させた巨大IT企業の実像とは。米シアトルの本社に入り込み、その熱源を探った。
 

担当記者より

特集「喰われる自治体」を担当した野中大樹です。

過疎地の自治体職員を「ぶっちゃけバカ」と見下し、「行政機能をぶんどる」などと豪語する男の音声データを初めて聞いたのは昨年秋のことです。声の主は、地方自治体に地方創生のやり方を説いて回っていた企業の社長(当時)で、総務省の「地域力創造アドバイザー」という肩書も持っていました。

地方創生ビジネスの手口を披露していた時の発言ですが、録音されているとは知らなかったために本音が出たのでしょう。音声データを提供してくれた人は、「自治体を喰い物にしようとする、その考えが許せなかった。こういうコンサルタントは実は山ほどいる。警鐘を鳴らしたかった」と、音声データを提供した理由を語っています。

この10年、政府は膨大な地方創生予算を組んできましたが、「まちの人口が増えた」「創生できた」という話はほとんど聞こえてきません。地方創生マネーはどこに消えたのでしょう。

特集では、地方創生マネーが都会のコンサルに吸い上げられてきた実態を明らかにしました。利用者が増え続ける「ふるさと納税」については、過疎地の自治体に寄付したはずの金が「中間事業者」に流れている構図を摘示しています。

3世代同居が多く「地方創生の模範」とされてきた福井県では、実のところ「嫁」が加重負担を強いられている現実があります。現場取材を通して、家事も仕事も背負い込まされている「嫁」たちの本音に迫りました。

石破茂初代地方創生担当相の「企業版ふるさと納税は見直すべきだ」という直言や、人口減少問題の火付け役である増田寛也元総務相の「自然減対策は完全に失敗だった」という厳しい指摘も刮目です。

特集では一方で、コンサルや補助金に依存せず、自分たちで汗をかいて地域の創生を成し遂げようとする自治体の奮闘劇や、地方創生に本腰をあげる地方銀行、信用金庫の実例も紹介しています。ぜひ、ご覧下さい。

担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
溶ける地方創生マネー 喰われる自治体

地方創生マネーは都会のコンサルに吸い上げられていく

Part1 地方創生の虚構
[喰われた自治体]福島県|国見町 弱った自治体の機能をぶんどる「過疎ビジネス」
▶インタビュー 「企業版ふるさと納税は見直すべきだ」 初代地方創生担当相 石破 茂
[両刃の剣]福岡県|吉富町 地元にリスク押し付ける地方創生コンサル
[ブルーオーシャン]長期戦覚悟で乗り出す大手コンサル&広告会社
[税金を喰い荒らす]黒船アマゾン参入で激震 ふるさと納税で儲ける中間事業者
・ふるさと納税依存率トップ50
・ふるさと納税流出によるマイナス額トップ50

10年間でどう変わった? 自治体ランキング
・財政力指数トップ&ワースト50
・10年間の年少人口増減率トップ&ワースト50
[地方創生の模範とされてきたが…]女性が犠牲となる福井モデルの限界
▶インタビュー 「3世代同居に頼らない政策へ」福井県副知事 鷲頭美央
▶インタビュー 「自然減対策は完全に失敗だった」元総務相(日本郵政社長) 増田寛也

Part2 喰われないまちづくり
[「自治」取り戻した自治体]北海道|むかわ町穂別 コンサル主導の計画に住民が「待った」
[補助金に頼らない三セク]大阪府|大東市 老朽化した公営住宅を公民連携で建て替え
[コンサルなし/補助金なし/企業誘致なし]熊本県|天草地域 地場の中小企業が創生を実現
[足元にある資源]福島県|田村市&川内村 企業誘致ではなく足元の資源を掘る
[観光から事業承継、DXまで]地方創生に力を込める地域金融機関

まちづくり力を高めていくために コンサル丸投げ型から人材投資型への転換を

第2特集
[シアトル本社ルポ]マイクロソフト 「AI革命」の深層
「AI半導体」プロジェクトの内幕

ニュース最前線
パナソニックが家電で先手 PB受託で低価格帯制圧へ
“お家芸”事務機で再編加速 三つどもえの最終戦争へ
「不倫問題」で社長が辞任 ウエルシアに浮上する懸念


連載
|経済を見る眼|海外の学歴はなぜ「詐称」の対象になるのか|苅谷剛彦
|ニュースの核心|一方的な「接触」では拉致問題は動かせない|福田恵介
|トップに直撃|スカパーJSATホールディングス 社長 米倉英一 
|フォーカス政治|政権交代実現へ野党に課された宿題|山口二郎
|マネー潮流|循環経済を日本の勝機にしよう|中空麻奈
|中国動態|イエレン訪中が示す米中協調の兆し|梶谷 懐
|財新 Opinion&News|中国広汽集団、三菱自の撤退で600億円減損
|グローバル・アイ|イスラエルはパレスチナを国家と認めるべきだ|ギャレス・エヴァンス
|FROM The New York Times|景気循環はもはや無意味? 「消費主導」米国経済の強み
|少数異見|賃上げ対象外の年俸制やシニアの社員
|シンクタンク 厳選リポート|
|ヤバい会社烈伝|JR西日本 犠牲者の無念が巨大企業を動かす|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法 56|佐藤 優
|経済学者が読み解く現代社会のリアル|熱帯雨林保全と貧困削減 その両立を導く政策設計|津田俊祐
|話題の本|『三井大坂両替店 銀行業の先駆け、その技術と挑戦』著者 萬代 悠氏に聞く ほか
|名著は知っている|『茶の本』[下編]
|社会に斬り込む骨太シネマ|『正義の行方』
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