特集「女性を伸ばす会社 潰す会社」を担当した印南志帆です。私は、世間で言う「育児と仕事を両立する女性」ですが、両立というより、やじろべいのようにぐらぐら揺れる両者のバランスを必死に取っている、というのが偽らざる実態です。
5月の大型連休も、日中は子どもと牧場を馬で駆け、子どもが寝たあと忍者のように寝室をそろりと出てこの特集の原稿を書く、という日々でした。体力が取り柄の自分ですら、全力で、生きています。それでも「会社を辞めたい」とならないのは、この仕事にやりがいを感じられるからです。逆に言えば、それが失われたら挫けてしまうかもしれません。
今回、女性活躍の実態を探るべく、読者アンケートを実施したところ、1825件もの回答が集まりました。寄せられた声を見ていくと、男性は女性が昇進していくことや、慣れない女性のマネジメントで困惑し、女性は「女性活躍は女性の搾取」などと、その本質を見抜いてシラケている、という傾向が見えてきました。男性が好意的に見ていないことは想定内でしたが、女性の反応は意外でした。
なぜ、女性は「女性活躍」に幻滅しているのか。1つ考えられるのは、育児のための時短勤務で働く女性を軽易な業務に転換して評価や報酬を必要以上に下げたり、企業の「花形」部門はいまだ男性社会であったりと、「男性の都合」が優先されている、という実感があるからではないでしょうか。こうした本音を見過ごしていたら、女性労働力を十分に生かせない企業は、これからの人手不足社会で窮地に陥ることになります。
特集内では、アンケート調査結果の詳細を始め、オープンデータを基に作成した「女性活躍『先進』『後進』企業ランキング」、株主総会で投資家が迫る女性役員登用、メルカリ、リクルートなどの「スゴい女性活躍事例」など、最旬データとトピックが満載です。「女性活躍が大嫌い!」そんな方にこそ、手にとって欲しい特集です。
担当記者:印南 志帆(いんなみ しほ)
早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。