特集「中小企業 大廃業時代の処方箋」を担当した大竹麗子です。中小企業と聞くと、経営が苦しい、大変そう…、そんなイメージを持つ方が多いと思います。
確かに、ゼロゼロ融資の返済や金利上昇、原価の高騰など中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。帝国データバンクの調査によると2024年度の倒産件数は11年ぶりに1万件を超える見通しです。
また、中小企業の深刻な悩みである事業承継ではM&Aが解決策として注目を集める一方、事業者数が急増する中で、サービスの質が低下。トラブルに巻き込まれる中小企業経営者も多いです。
一方で、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は「これからは中小企業の時代だ」と断言します。入山教授は「中小企業の強みは小回りが利くこと。変化の激しい時代には、大手企業よりも中小企業のほうが有利だ」と言います。
今回の特集では中小企業の強みを生かし、果敢にチャレンジする複数の経営者を取材しました。
そのうちの1社が茨城県水戸市の酒造会社、明利酒類です。同社は消毒液が払底する2020年3月に高濃度アルコールを消毒液の代替品として販売、20万本を売り上げました。消毒液のヒットもあってコロナ禍を乗り切り、いまは「第二の創業」を目指して高級日本酒やウイスキーの開発に注力しています。
日本の伝統品である前掛けを製造販売するエニシングは世界数十カ国で10万枚を売り上げています。同社の前掛けは世界的なスパイ映画「007」の衣装としても採用されました。
挑戦する経営者の皆さんに共通するのは、ただひたすら行動することです。自社の強みはなにか、市場はなにを求めているのか、徹底的に分析することはもちろん、その後は商機をつかむべく様々な場所に足を運び、多様な人々に会っています。
大手企業のビジネスパーソンもこうした中小企業の挑戦から学べることは多いと感じます。中小企業で働く方も、そうでない方も、ぜひお手に取ってお読みください。
担当記者:大竹 麗子(おおたけ・れいこ)
1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。
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