週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年6月29日号
2024年6月24日 発売
定価 920円(税込)
JAN:4910201350643

【第1特集】ルール変更で市場激変 仁義なき企業買収

経営陣の同意を得ないまま株式公開買い付けなどを行う「同意なき買収」が、環境の整備などに伴って急増しています。現場では、かつての乗っ取りを彷彿とさせるような血で血を洗う壮絶な戦いが繰り広げられています。本特集では投資ファンドが猛攻勢をかけ火の手が上がる同意なき買収の最前線を追っています。またみずほが「同意なき」に参戦するなど、慎重だった従来とは異なり是々非々に舵を切った金融機関の深謀に迫りました。低PBRや余剰資金などを指標に「物言う株主」に狙われる企業ランキングも掲載しています。
 

【第2特集】「金利のある世界」で明暗 99行 地銀決算ランキング


最新決算を基に地方銀行99行の業績や財務体力を採点。さまざまな視点のランキングを作成した。

担当記者より

特集「仁義なき企業買収」を担当した田島靖久です。私は福岡県北九州市の出身。今でこそ奇抜な成人式で有名ですが、子どものころは山口系暴力団と分裂した暴力団とが抗争を繰り広げ、街中でも銃弾が飛び交っていました。登校時、親から「流れ弾には気を付けて」と送り出されていたのを鮮明に覚えています。

まさに「仁義なき戦い」の世界だったのですが、今や表社会の企業同士が「同意なき買収」という名の仁義なき戦いを繰り広げています。買収を提案された企業の経営陣が提案に同意しなくてもTOB(株式公開買い付け)を実施するというもので、最近、急増しているのです。

きっかけは経済産業省が2023年8月に公表した「企業買収における行動指針」。それまでの指針は、買収防衛策やMBO(経営陣による買収)に関するもので範囲が限定的でした。それを上場企業の買収全般を対象とし、買収提案をめぐる一連の対応の在り方についても明示、日本で初めて包括的なM&A指針が誕生したのです。
        
かつて買収といえば“乗っ取り”を想起させるなど悪いイメージがありました。しかし指針が示されたことで、堂々と胸を張って行えるようになりました。また「敵対的買収」の呼び方を「同意なき買収」に改めたことで、心理的なハードルも下がりました。その結果、案件が増えているのです。

そこでこの特集では、同意なき買収の実態を詳細にリポートするとともに、勝つためのノウハウや価格算定のコツといった実務面で役に立つコンテンツも掲載。あわせて同意なき買収の火種になり得るアクティビスト(物言う株主)の株主提案についても詳しく取り上げています。

この一冊さえ読めば、同意なき買収提案をするときにはもちろん、提案を受けた際にも役に立つこと間違いなし。是非、ご参考にしていただければと思います。

担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
週刊東洋経済編集部副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社し現職。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
ルール変更で市場激変
仁義なき企業買収


Prologue[壮絶]
突然浮上の大株主が食指 火の手が上がる「同意なき買収」
[図解]企業買収は「新時代」に突入

PART1 炎上
ブラザー工業が仕掛けたローランドDG買収の舞台裏
[インタビュー]「買収断念は勇気ある決断」 ブラザー工業 副社長 石黒 雅/専務 鈴木 剛

みずほが「同意なき」に参戦 是々非々に舵を切る金融機関
過熱する企業買収新時代 経産省「新指針」策定の衝撃
日本流ルールへの対応がカギ 勝利を呼び込む方程式
サイエンスではなくアート 買収に勝つための価格算定

PART2 火の粉
「安定株主」の心変わり グリコ株主総会の波紋
中小型・地方も油断禁物 物言う株主が狙う企業
[コラム]株主提案が企業に迫る「踏み絵」

「物言う株主」に狙われる企業ランキング
・総合ランキング100
・低PBRで狙われるランキング50
・余剰資金で狙われるランキング50
[コラム] 狙われやすい不動産の含み益ランキング

Epilogue[蠢(うごめ)き]
水面下でささやかれる案件 仁義なき大買収時代

第2特集
「金利のある世界」で明暗
99行地銀決算ランキング

衰退度/有価証券評価損益ワースト/本業利益ワースト/自己資本比率ワースト/預金減少率

ひと烈風録
平田牧場創業者 東北公益文科大学理事長 新田嘉一
奇跡のシルクロード航路 運命に抗った逆白波の経営者

ニュース最前線
MUFGで違法な情報共有 銀行と証券2社に処分勧告
ロームの堅実経営に異変 パワー半導体で乾坤一擲
カーライルがTOB実施 どうなるケンタッキー


連載
|経済を見る眼|今こそ2%物価目標の運用を弾力化せよ|早川英男
|ニュースの核心|カナダの原生林皆伐と、日本のバイオマス発電|岡田広行
|トップに直撃|三井物産 社長 堀 健一
|フォーカス政治|政治資金規正担う第三者機関の役割|牧原 出
|マネー潮流|米中経済のパワーバランスに変化|木内登英
|中国動態|「中国による平和」と経済の深い矛盾|益尾知佐子
|財新 Opinion&News|中国政府が国策半導体ファンド「3号」を設立
|グローバル・アイ|欧州で躍進する極右、政権を担えば嫌われ者に|フィリップ・レグレイン
|Inside USA|異例の6月開催、討論会を前倒すバイデン氏の思惑|瀧口範子
|少数異見|女性天皇のあり方、そろそろ結論を
|シンクタンク 厳選リポート|
|ヤバい会社烈伝|企業決算 過去最高益って 誇っていいんすか?|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と 分析の手法 63|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|生産性改善に何が必要か 3つのミクロ要因に着目|宮川大介
|話題の本|『センスの哲学』著者 千葉雅也氏に聞く ほか
|名著は知っている|『管子』[中編]
|社会に斬り込む骨太シネマ|『アイアム・ア・コメディアン』
|ゴルフざんまい|私がプロゴルファー になれた理由|佐藤信人
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|編集部から|
|次号予告|