特集「仁義なき企業買収」を担当した田島靖久です。私は福岡県北九州市の出身。今でこそ奇抜な成人式で有名ですが、子どものころは山口系暴力団と分裂した暴力団とが抗争を繰り広げ、街中でも銃弾が飛び交っていました。登校時、親から「流れ弾には気を付けて」と送り出されていたのを鮮明に覚えています。
まさに「仁義なき戦い」の世界だったのですが、今や表社会の企業同士が「同意なき買収」という名の仁義なき戦いを繰り広げています。買収を提案された企業の経営陣が提案に同意しなくてもTOB(株式公開買い付け)を実施するというもので、最近、急増しているのです。
きっかけは経済産業省が2023年8月に公表した「企業買収における行動指針」。それまでの指針は、買収防衛策やMBO(経営陣による買収)に関するもので範囲が限定的でした。それを上場企業の買収全般を対象とし、買収提案をめぐる一連の対応の在り方についても明示、日本で初めて包括的なM&A指針が誕生したのです。
かつて買収といえば“乗っ取り”を想起させるなど悪いイメージがありました。しかし指針が示されたことで、堂々と胸を張って行えるようになりました。また「敵対的買収」の呼び方を「同意なき買収」に改めたことで、心理的なハードルも下がりました。その結果、案件が増えているのです。
そこでこの特集では、同意なき買収の実態を詳細にリポートするとともに、勝つためのノウハウや価格算定のコツといった実務面で役に立つコンテンツも掲載。あわせて同意なき買収の火種になり得るアクティビスト(物言う株主)の株主提案についても詳しく取り上げています。
この一冊さえ読めば、同意なき買収提案をするときにはもちろん、提案を受けた際にも役に立つこと間違いなし。是非、ご参考にしていただければと思います。
担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
週刊東洋経済編集部副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社し現職。
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