特集「不安につけこむ医療情報の罠」を担当した野中大樹です。
インターネット内の情報が玉石混交であることはよく知られていますが、もっとも偽情報が溢れているのが「医療情報」と言われます。
YouTubeで「がんに効く」で検索すると、「24時間以内にがん消滅 これを食べて」「野菜スープががんに効く」「セブン 抗がん食品 医師の5選」といった、科学的エビデンスに疑義がある動画がずらりと並びます。
ネット上だけの話ではありません。現実世界でも日本は、科学的根拠のない治療法が横行する「がんエセ医療」大国と言われています。根拠はないはずなのに、100万円~400万円もする免疫細胞療法や200万ほどかかるコロイドヨード療法、165万円の遺伝子治療といった「エセ医療」が氾濫しています。彼らがターゲットにしているのは、自身や家族が余命を宣告され、藁にすがるような思いで治療法を探す人々でしょう。
血液、唾液、尿で全身のがんリスクを測定できると謳うサービスも増えています。手軽さが好評のようですが、科学的根拠は実はあいまいです。今回は、唾液を使ってがんリスクを測定する会社のトップに実情を聞きました。
子供の能力を解析できるという遺伝子検査キットを、ふるさと納税の返礼品に採用する自治体もありました。「やる気」や「怒りやすさ」「持久力」などを測れると謳っていますが、もちろん科学的根拠はなく、製品を供給する会社の社長は、「占いのようなものではないか」という指摘に「よくわかっている」と言ってのけました。
特集では他にも、新型コロナワクチンの有効性についての記事や、この10年、世界的な論争になってきた子宮頸がんワクチン問題の核心にも踏み込みました。
医療の世界の裏側で起きていることを、じっくり読んでいただければ幸いです。
担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。