週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年7月13日号
2024年7月8日 発売
定価 920円(税込)
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【特集】アニメ・エンタメ帝国の覇者 集英社、講談社、小学館の野望


世界的なブームが続いている日本のアニメ・エンタメ。その3兆円規模の経済圏の頂点に君臨するのが、漫画原作を供給し、IP(知的財産)の創出源となっている大手出版社です。従来の出版ビジネスが曲がり角を迎えている中、アニメ・エンタメ帝国の覇者となった集英社、講談社、小学館は今、何を考えているのでしょうか。本特集では非上場会社ゆえに謎の多いそのビジネスの奥の院を、ヒット作の舞台裏を含めて徹底的に解剖します。

担当記者より

特集「集英社、講談社、小学館の野望」を担当した西澤佑介です。

昨年担当した特集「アニメ、熱狂のカラクリ」(アニメ特集)は、私たちの予想をはるかに上回る反響を呼びました。読者からの熱いフィードバックだけでなく、メディアや評論家からも高い評価をいただきました。今回は、それとほぼ同じ執筆、編集陣でお届けする昨年のアニメ特集の第二弾的な位置づけです。

特集のお陰で、アニメ・エンタメ業界の関係者と話す機会が増え、その度に得る新しい知見には驚かされてきました。
特に、大手出版社について話題が及ぶとき、業界関係者の口ぶりが変わるのを感じます。「集英社」という名前が出ると、まるで神聖な存在に対するかのように話し始めるのです。集英社に対する畏敬の念は、業界全体に共通しているようで、その影響力の大きさを改めて実感しました。こうした背景から、今回のアニメ特集の続編テーマとして大手出版社を選びました。

非上場会社であるこれら大手出版社の実情を取材することは困難が予想されましたが、昨年の特集を通じて築いた信頼関係が大いに役立ちました。読者や業界関係者の協力があったおかげで、取材がスムーズに進み、感謝の気持ちでいっぱいです。

取材を進める中で感じたのは、漫画のヒット作を基にする知的財産(IP)がこれほどまでに大きな利益を生むのか、ということです。同じ出版業界にいる者として、その成功には羨望の念を抱かずにはいられません。IPビジネスの奥深さと可能性を改めて認識し、我々も学び取るべき点が多いと感じました。

今回の特集では、大手出版社がどのようにして強力なIPを生み出し、それをどのようにして市場で成功させているのか、その裏側に迫ります。業界内外からの視点を交えつつ、その成功の秘訣を解明していきたいと思います。この特集を通じて、読者の皆様にも新たな発見と驚きを提供できることを願っています。

担当記者:西澤 佑介(にしざわ ゆうすけ)
1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
アニメ・エンタメ帝国の覇者
集英社、講談社、小学館の野望


Part1
エンタメ王の野望

出版大手がIPブームで大変貌 日本エンタメの殿上人に
[図解]マンガ・IPで出版社はこんなに儲かる
逆風の5位以下出版社で続々と… どう出る? 窮余のマンガ参入

【集英社】IP最強企業の葛藤 総合エンタメ化の遠い道
「原作者死後」利権バトルの行方 「ドラゴンボールマネー」めぐる熱狂と混沌
[インタビュー]『ジャンプTOON』統括編集長 浅田貴典 「ジャンプの冠を最大限活用する」
[インタビュー]  集英社ゲームズ執行役員 森 通治 「目指すは"集英社エンターテインメント"」

【講談社】マンガ、IPに全力 野間氏「超出版」戦略の光と影
[インタビュー] DONUTS 代表取締役 西村啓成 「雑誌はIPとして見れば復活余地」

【小学館】ライバルに劣勢 小学館 4代目当主に待ち受ける難路
『セクシー田中さん』問題、同業者が語る本当の論点
ライツからイベント、保育園、刑務所までの何でも屋 小学館集英社プロダクションの正体
[インタビュー]小学館集英社プロダクション顧問(前社長) 都築伸一郎 「社員がやりたい仕事をやらせる」

同じようで異なる給料・社風 3大出版社のキャラクター図鑑

Part2
ヒット作の舞台裏

ヒット作品の心臓部 「マンガ編集者」の実像
敏腕漫画編集者に聞く! 「ヒット」を生み出す編集の役割
 コルクCEO 佐渡島庸平 「SNS 『バズり』は新人賞級 運用支援も編集者の仕事」
 サイバーエージェント STUDIO ZOON チーフエディター 村松充裕 「 作家の『狂気』を 理解可能なものにする」

【KADOKAWA】『リゼロ』で体得したIP価値最大化モデルの止まらぬ進化
[インタビュー] KADOKAWA営業宣伝グループ担当執行役員 工藤大丈 「機能はそろっている、現場がパズルを組み合わせる」

有名出版社が迎える正念場 宝島社「身売り」説、新潮社「危機」説
韓国発だが、ついに集英社も本格参入 縦読み漫画・ウェブトゥーン 始まった「日本勢の逆襲」
ビジネスパーソン必読 最新! 教養としての漫画10
エンタメ界にとどろく 『ワンピ』作者・尾田栄一郎伝説
マンガアプリ国内大手 「めちゃコミ」2800億円巨額買収が持つ意味
乗り遅れるな 「マンガ・IP」四季報

ニュース最前線
あおぞら銀の総会が物語る 「高配当株」の減配リスク
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サマンサタバサが上場廃止 「平成ブランド」の正念場


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