週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年8月24日号
2024年8月19日 発売
定価 920円(税込)
JAN:4910201340842

【第1特集】過熱する1兆円市場 ふるさと納税のカラクリ

ふるさと納税制度の寄付総額は1.1兆円、利用者数は1000万人を突破しました。霜降り肉からキャンピングカーまで60万品目以上にものぼる返礼品で市場が過熱する中、今回の特集では巨額の寄付マネーの行方や税財政にもたらすひずみなど、制度の功罪に鋭く迫りました。全国の市区町村におけるふるさと納税の財政への影響度合いを、さまざまなランキングで浮き彫りにする、最新版のふるさと納税自治体ランキング&データも掲載しています。
 

【第2特集】どうしたパナソニック


株価や業績で“独り負け”のパナソニック。何が問題か。

担当記者より

特集「過熱する1兆円市場『ふるさと納税』のカラクリ」を担当した佐々木亮祐です。
 
7月に山形県に遊びに行く機会がありました。同県には、ふるさと納税に黎明期から力を入れている自治体が多くあります。
 
ある上位の自治体では、ピカピカの道の駅に特産品を生かした商品がズラリ。ふるさと納税によって設備投資や商品開発が進んだのでしょう。一方、最新鋭のセルフレジが何台か遊んでいて、潤沢な寄付を効率的に投資できているのか疑問も感じました。
 
実は、私は8月末で小社を退職します。溜まりに溜まった有休を消化して羽を伸ばそうと考えていましたが、ふるさと納税特集をやると聞き、じっとしていられませんでした。
 
地理的な条件が人々の経済社会活動をどう規定するかを扱う「経済地理学」を大学で専攻していました。庶民の私は、高所得者優遇の側面もあるふるさと納税に興味を抱いて卒論を書き、入社後も6年半追ってきました。入社1年目に書いた記事の反響は今でも忘れません。
 
特集は「カラクリ」と題した通り、ふるさと納税を一から解説しました。制度の仕組みやトレンドから、ポータルサイトのポイント還元や高所得者優遇などの現状の問題点や、地方自治体で起こっている実態までカバーしています。
 
自治体の裏側を支える多くの「地域商社」の方々に取材させていただきました。そのうちの1人が「自治体のふるさと納税担当者は『ボッチ(孤独)』になりやすい」と話していました。特殊な業務であり、初めは役所の中でも理解者を得にくいそうです。そうした方々にこの特集を手に取っていただきたいです。
 
取材先の方々の、地域を良くするため熱心に仕事をする話に感銘を受けました。もう少しこのテーマを追いたいと後ろ髪を引かれつつ、9月から新しい仕事に挑戦します。
 
6年半、多くの取材先や同僚に大変お世話になりました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。私の最後の原稿をご覧いただけますと幸いです。

担当記者:佐々木 亮祐(ささき りょうすけ)
1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
過熱する1兆円市場
ふるさと納税のカラクリ


Part1
過熱する返礼品競争

霜降り肉からキャンピングカーまで 百花繚乱の返礼品
ふるさと納税Q&A解説 返礼品から税金の計算まで制度のキホンを徹底解説
[インタビュー]トラストバンク(「ふるさとチョイス」)代表 川村憲一
「ポイント禁止は妥当。使い道伝えやすくなる」

Part2
寄付金の裏側

ポータルサイトへの規制強化 総務省のポイント禁止に楽天が猛反発
自治体の選定プロセスに課題 役割増す中間事業者 「玉石混淆」の実態
“ふるさと増税”に向かうのか 拡大する税財政の歪(ひず)み
[インタビュー]川崎市長 福田紀彦 「控除額に上限を設けるべき」
[インタビュー]元総務省自治税務局長 平嶋彰英 「現行制度は憲法違反のおそれ」

Part3
[企業版]ふるさと納税の現在地
税制メリット拡充で活用広がる 人材派遣で自治体支援
企業版ふるさと納税で官製談合疑惑 寄付金還流で揺れる自治体
2024年8月公表 [最新版]ふるさと納税 自治体ランキング&データ

第2特集
どうしたパナソニック
株価や業績で“独り負け”のパナソニック。何が問題か

[独占インタビュー]パナソニック ホールディングス社長 楠見雄規
 社内に「5%ボケ」が蔓延 3年間で低採算事業なくす
就任から3年、低収益事業に大ナタ

第3特集
5G(ファイブジー)の誤算
首位争い? それとも我が道? 岐路を迎えた3大キャリアの5G戦略

緊急特集
検証 日本株ショック
米国経済の行方 インフレ再燃とトランプ 景気後退に重なる懸念
窮地の日銀 正しくタカ派を演じたが 「植田ショック」の汚名
[インタビュー]市場専門家に聞く 「日経平均4万円」回復の条件
 第一生命経済研究所主席エコノミスト 藤代宏一
 ブーケ・ド・フルーレット代表 馬渕治好

連載
|経済を見る眼|法人税法の中小企業基準を見直すべきだ|佐藤主光
|ニュースの核心|過去最高の最低賃金に喜べぬギグワーカー|風間直樹
|トップに直撃| ゲオホールディングス 社長 遠藤結蔵
|フォーカス政治|日銀、SNS時代に炎上への備えは|軽部謙介
|マネー潮流|エネルギー市場でアジアの中核へ|高井裕之
|中国動態|中ロの蜜月「南」との関係に自信|𠮷岡桂子
|財新 Opinion&News|英ヴァージン航空、競争激化で中国路線撤退へ
|グローバル・アイ|ノリノリのハリスにはトランプを倒す勢いがある|リード・ガレン
|FROM The New York Times|世界で「最も暑い日」を更新 10年内に来る温暖化の臨界点
|少数異見|自衛隊は台湾有事で戦えない
|シンクタンク 厳選リポート|
|ヤバい会社烈伝|JR東日本 みどりの窓口を求め 電車で来るってか|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法 70|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|女性に立ちはだかる障壁 経営者の「同性つながり」|矢ケ崎将之
|話題の本|『がん「エセ医療」の罠』著者 岩澤倫彦氏に聞く ほか
|名著は知っている|『生物から見た世界』[下編]
|社会に斬り込む骨太シネマ 配信|『ソウルの春』
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