週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年11月2日・9日合併号
2024年10月28日 発売
定価 950円(税込)
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【特集】銀行 大波乱


ついに金利が復活したことで、銀行に好機が巡ってきました。しかし、内憂外患を抱えて隘路にはまり込んでいる銀行は、その追い風を捉えられそうにありません。本特集では、デジタル領域を舞台に異業種から攻勢を受けている状況や、金利復活でも素直に喜べない現実をリポート。また、アンケート調査でわかったメインバンクに対する上場企業の本音や現役・元行員が選ぶ働きやすい銀行、金利復活時代の銀行実力ランキングも掲載しています。

担当記者より

特集「銀行 大波乱」を担当した田島靖久です。

日本銀行が金融政策を転換し、ようやく「金利ある時代」がやって来ました。銀行は集めた預金を貸し出しや有価証券投資などに回し、預金の金利と運用利回りとの差、つまり利ざやで収益を得る商売。そのため金利の復活は待ちに待った大きなビジネスチャンスです。市場もそのときを待っていたとばかりに銀行株を買い、株価は上昇しています。

しかし、冷静に銀行を取り巻く環境を見たとき、お花畑のような気分ではいられないことに気づきます。資産のポートフォリオやビジネスモデルなどによってメリットを享受できる銀行と、そうでない銀行とに二極化されるからです。

今回の特集「銀行大波乱」では、金利が1%上昇した場合の利上げメリットをさまざまな角度から試算、ランキングを作成しました。これを見れば、どの銀行が恩恵を受けることができるのか一目瞭然です。

またここ数年、JR東日本や楽天など、異業種からの銀行参入が相次いでいます。最近ではNTTドコモが銀行参入を明言し、業界を震撼させました。彼らはポイントを使って消費者をグループ内に囲い込む、いわゆる「ポイント経済圏」を展開しており、さまざまな規制に縛られている銀行には脅威に映ります。

慌てたメガバンクは異業種の猛攻勢に対抗すべく、個人を中心とするリテール分野において新たな取り組みを始めました。今回の特集では三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)や、みずほFGが水面下でひそかに進めていたグループ内の再編劇をスクープ。リテール戦争の様子をつぶさにお伝えします。

そこには、黒船の襲来によって、ようやく変わり始めた銀行の姿があります。今回の特集ではそんな注目のテーマに、ビジネスパーソンにとって必読の情報を盛り込みました。ぜひ手にとってご覧下さい。

担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
週刊東洋経済編集部副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社し現職。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
金利上昇でも抜け出せない
銀行 大波乱


Part1 外患
「黒船」続々襲来に焦燥感 幕が上がった 銀行「リテール」異業種戦争
1年4カ月で300万アカウントを突破 三井住友Oliveの誕生秘話
 巨象がついに動き出す ドコモが住信SBIに触手か
 最後の砦まで侵食 PayPayデジタル給与の脅威
「手数料モデル」に落とし穴 デジタルバンクの大苦戦

Part2 内憂 ~金利
「金利ある時代」復活でも素直に喜べない銀行の現実
二極化が鮮明に 金利メリット享受ランキング
・資金利益増加率トップ&ワースト20
・自己資本額に対する円債評価損ワースト50
・預金増加率トップ&ワースト20
早期是正措置の可能性も 巨額含み損におびえる信金 高橋克英

Part3 内憂 ~弛緩
低金利時代のツケ 粉飾見抜けぬ審査の劣化
[インタビュー]「銀行としての基本動作が欠如」 金融庁総合政策局長 屋敷利紀
仕組み金融に続々参入 高収益に目がくらむ地銀
[インタビュー]「アクセルとブレーキが重要」 東京きらぼしフィナンシャルグループ社長 渡邊壽信
出資先銀行が公的資金救済の不名誉 追い込まれるSBI出資地銀
金融庁も問題視 「政策株ウォッシュ」にメス
仕組み債なき時代の存在意義は 八方ふさがりの地銀系証券

Part4 頂上決戦
最後に勝つのは誰だ! メガバンク 3本勝負
[3メガバンクトップインタビュー]
「アジアでの貸出残高は1位 リテールでも攻勢に出る」 三菱UFJフィナンシャル・グループ 社長 亀澤宏規
「Oliveの黒字化は見えた 日本経済の『上げ潮』に乗る」 三井住友フィナンシャルグループ 社長 中島 達
「北米事業はピースが揃った 純利益『1兆円』が視野に」みずほフィナンシャルグループ 社長 木原正裕
メガ初の女性社長誕生も トップ人事大胆予測

Part5 選ばれる銀行
上場企業398社アンケート 取引先からは不満噴出
[図解]不満は期待の裏返し? メインバンクへの注文
現役・元行員が選ぶ働きやすい銀行

Part6 実力
金利復活時代の銀行実力ランキング
・預貸率ランキング
・資金利益増加率ランキング
・銀行実力総合103行ランキング

NEWS&TOPICS最前線
TSMC「ピークはまだ」 敵失でAIブームを独走
ライトオンが自力再建断念 「ジーンズ専門店」の限界
ジャフコでセクハラ事件 業界の「沈黙」は美徳か


連載
|経済を見る眼|日本の物価が上がり始めた構造的な理由早川英男
|ニュースの核心|あなたはラピダス支援に4万円を出しますか山田雄大
|トップに直撃|テルモ 社長 鮫島 光
|フォーカス政治|自民党は日本を統治し続けられるか|山口二郎
|マネー潮流|米国経済の“強さ”が続く4つの理由|佐々木 融
|中国動態|書店苦境でも蔦屋書店が郊外に展開|田中信彦
|財新 Opinion&News|自動車関税をめぐる中国とEUの埋まらない溝
|グローバル・アイ|先進国の保護主義は「世界の格差」を加速する|ケネス・ロゴフ
|Inside USA|大統領選後にも影響、「ニューライト運動」の系譜会田弘継
|少数異見|「安全保障通」の石破首相は本当に大丈夫?
|ヤバい会社烈伝|建設業界 法律守ってたら 会社が倒れるだろ|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法 79|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|24年ノーベル経済学賞 社会制度と国家繁栄の関係|菊池信之介
|話題の本|『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』著者 満薗 勇氏に聞くほか
|名著は知っている|『言語の本質』[中編]
|社会に斬り込む骨太シネマ|『運命屋』
|ゴルフざんまい|懐かしい仲間とのソルハイムカップ観戦小林浩美
|西野智彦の金融秘録|大平・前川会談の全貌④
|編集部から|
|次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2024年11月2日-9日合併号」(10月28日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
62ページ 三菱UFJ銀行・堀直樹会長について、別人の顔を掲載しました。
11月7日公開のウエブ版では正しい写真に差し替えます。