週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年11月16日号
2024年11月11日 発売
定価 880円(税込)
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【第1特集】超・孤独社会

「咳をしても一人」。部屋に誰もいない孤独を詠んだ尾崎放哉の俳句は、今や誰もが直面する現実となりました。単身世帯が4割に上り、身寄りがなく行き場を失う“孤独難民”化した人は特別な存在ではなくなっています。本特集では、急増している身元保証高齢者サポートビジネスやSNS投資詐欺の実態、現役世代も陥る孤独を取り上げるほか、陰謀論にハマる中高年など孤独による病理とその解決策を紹介。ソロ時代の処世術を満載しています。
 

【第2特集】再編必至! 自動車販売サバイバル


10年で約80万台減るとの業界予測が出る国内自動車販売。メーカー主導で再編が始まった。
 

担当記者より

「超・孤独社会」の特集を担当した井艸恵美です。一人暮らし70代の女性を取材しました。女性は60代までは都内の持ち家で暮らしていましたが、ある事情から経済的に困窮し、頼れる家族もいない孤立状態に陥りました。日本では、身寄りのない高齢者が増えています。単身世帯は全体の4割に迫り、子供がいない世帯を合わせると6割に達します。これまで「身寄りがない人」といったら特別な事情を抱えた少数の人たちというイメージでしたが、超高齢社会に突入した日本では、もはや普通です。就職するにせよ、入院するせよ、施設に入所するにせよ、家族の身元保証人を要求する今の社会システムは、限界を迎えつつあるのです。

特集では、家族の代わりに本人の身元保証や見守りをする身元保証ビジネス業界を深掘りしました。社会的なニーズが高まり業者の数は急増していますが、消費者目線では、疑問の残る業者もあります。生前から死後まで安心して任せられるのか。各社の実情を取材しました。

孤独は高齢者だけの問題ではありません。孤独死の4割は20代から50代の現役世代です。給料減少だけでなく深刻な意欲低下を招く役職定年。さらに役職定年世代にも入った就職氷河期世代が今、どのような孤独や夢を抱えているのか。当事者たちの実像を追いました。

孤独と密接な関係があると言われている「陰謀論」にも焦点を当てました。2021年に起きた米国議会議事堂襲撃事件は、「影の政府ディープステートと戦っている」と語るトランプ氏の発言を信じる人々の熱が暴動にまでに発展しました。取材をする前、日本ではまだ深刻な事態に至っていないと感じていましたが、身近なところで恋人関係、家族関係が崩壊の危機に晒される「実害」が生じていました。なぜ、陰謀論が発生し、拡がるのか。その背景にも目を向けました。

ただ、希望もあります。少子高齢化の最先端を走る日本だからこそ、社会的なつながりをもう一度取り戻そうとする動きがあるのです。特集では全国各地の取り組みを紹介しています。ぜひ、お手にとってご覧ください。

担当記者:井艸 恵美(いぐさ えみ)
群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
ソロ時代の処世術 超・孤独社会

誰もが陥る“孤独難民”化 家族がいないのは自己責任ではない

Part1
身寄りなき時代の身元保証
社会的ニーズに合致するが、事業者たちは玉石混淆 急増する身元保証ビジネス
死後の贈与は本人の意思なのか 曖昧な“寄付”の位置づけ
猛暑のこの夏に何があったか 「自己放任(セルフネグレクト)」の末の孤独死
被害額が急増! 孤独な中高年に襲いかかるSNS投資詐欺

Part2
現役世代の孤独
後輩や過去の部下とも疎遠に 意欲喪失が深刻「役職定年」の孤独
早稲田大学は出たけれど 就職氷河期世代のはるかなる「夢」と「幸福」の影
死後離婚も高水準 熟年離婚が減らない3つの理由
[インタビュー]ふかわりょう 苦しくなったら、スマホを置いて散歩しよう

Part3
陰謀論にハマる中高年

上場企業の社長、婚約者、友人… 陰謀論が狂わせたもの
[Q&A]孤独感と密接な関係 陰謀論の正体
ワクチンへの不安を「陰謀論ビジネス」に利用か 反ワク団体「神真都(やまと)Q」を率いた一群の横顔
[インタビュー]作家・評論家 古谷経衡
  ネット右翼・陰謀論に陥らせないために フェーズ2までに家族、同居人が指摘すべし

Part4
孤独を防ぐ処方箋

関係性を取り戻す居場所やソリューション つながりを回復させる
信頼する力を子ども時代から育む 家族機能を社会化する町づくり

第2特集
再編必至! 自動車販売サバイバル
ホンダ 「販社急減少」の真意
トヨタ 「全車種併売化」の成果

NEWS&TOPICS最前線
M&A仲介15社に是正措置 問われる中企庁の本気度
「サブウェイのワタミ」へ 3000店構想の現実味
ネトフリ追うU-NEXT 快進撃導いた「堅実経営」


連載
|経済を見る眼|野党躍進で「高等教育無償化」はどうなる?|苅谷剛彦
|ニュースの核心|与党過半数割れを好機として「政治とカネ」決着を|岡田広行
|トップに直撃|ボストン コンサルティング グループCEO(最高経営責任者) クリストフ・シュヴァイツァー
|フォーカス政治|「伯仲」国会は日本政治を変える好機|飯尾 潤
|マネー潮流|原油と天然ガスが正反対に動くナゼ|高井裕之
|中国動態|北朝鮮の参戦で乱れる中ロの足並み|益尾知佐子
|財新 Opinion&News|中国発の急成長「低価格EC」への期待と不安
|グローバル・アイ|BRICS会議、参加国が増えても中身は空っぽ|ジム・オニール
|FROM The New York Times|現状維持の自民党に大打撃 有権者が抱える根深い不満
|少数異見|「中道保守連合」をあえて提案したい
|ヤバい会社烈伝|ホームヘルパー業界 「お前はクビだ!」 介護界のトランプ|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法80 |佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|全額免除に効果はあるか? 課徴金減免制度の問題点|川越敏司
|話題の本|『移民・難民たちの新世界地図 ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録』著者 村山祐介氏に聞く ほか
|名著は知っている|『言語の本質』[下編]
|西野智彦の金融秘録|大平・前川会談の全貌⑤
|編集部から|
|次号予告|