週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年11月23日号
2024年11月18日 発売
定価 920円(税込)
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【第1特集】地方経済の牽引役 すごい中堅企業100

国は今年、産業競争力強化法を改正し、中小企業を除く従業員2000人以下の企業を「中堅企業」と新たに定義しました。大企業と中小企業の間に新設された中堅企業は、活発な設備投資や雇用で地域経済を支える屋台骨であり、売上高や投資、雇用で日本経済を牽引する主役。本特集では、補助金など国の手厚い支援策を受けられるようになった中堅企業の現状や課題とともに、注目すべき地方中堅企業100社を紹介。伸び盛り中堅企業ランキングも掲載しています。
 

【第2特集】時価総額は一時1兆円 東京メトロ 熱狂なき株式上場


民営化から20年。過去と現在から見えてくる東京地下鉄の未来とは。

担当記者より

特集名から「もしかしたら」と思われる読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、本特集は小誌定番の「すごいベンチャー100」の「中堅企業」版を目指して制作しました。

中堅企業には、これまで売上高が数百億円、従業員数が数百人というざっくりとしたイメージこそあったものの、法律上は明確な定義がなく、中小企業と大企業の狭間で見えにくい存在でした。実際には、国内の設備投資や雇用を牽引する地域経済の屋台骨です。そこに目をつけた国は今年、法律を改正。「中堅企業」について中小企業を除く従業員数2000人以下の企業と定義し、支援策を強化しています。

定義上は国内に約9000社あるとされる中堅企業。その素顔を浮き彫りにできないか、元気な中堅企業から事業を伸ばすヒントを聞きたい、そんな素朴な動機がこの特集の原点です。100社の絞り込みや各社への取材交渉で苦労しましたが、理解ある中堅企業の皆さまのご協力のおかげで何とか特集に結実できました。この場を借りて感謝を申し上げます。

実際に取材をしてみると、突出した技術を軸に国内外の市場を開拓している地方の中堅企業も少なくなく、また元から知っていた企業でも果敢に新しい事業領域に挑戦しているところもあり、発見の連続でした。

工作機械のスギノマシンは、戦時中に工場を大阪から疎開したことが縁となり、富山県が地盤です。国内外5000社を顧客に持ち、赤字は創業来一度もなく、売上高営業利益率が15~20%という高収益性を維持しています。海外売上高が50%を占めるようになった今でも富山での開発・製造にこだわる姿勢に、地域の中堅企業としての誇りと覚悟を感じます。

企業の紹介記事に加え、売上増加率・売上高利益率・初任給・自己資本比率など各指標のランキング、銀行による中堅企業支援の実情、中堅企業の転職事情、産学官キーパーソンのインタビューも掲載しました。通販に次ぐ事業の柱としてスポーツを切り口に地域創生に取り組むジャパネットホールディングスの髙田旭人社長には、1000億円を投じた「長崎スタジアムシティ」の勝算や「やり抜く」経営哲学について聞いています。

今回取材した多くの経営者が立地する地域とのつながりを大事にしながら、自社のアイデンティティや強みをより際立たせることに生きる道、勝ち筋があると考えていました。これは企業規模を問わずに当てはまりそうです。紹介したい中堅企業はまだまだたくさんあり、来年以降もこの特集を定番企画として展開していきたいと考えています。中堅企業の関係者はもちろんのこと、そうでない方にもぜひお手に取っていただきたいです。

担当記者:木皮透庸(きがわ ゆきのぶ)
1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
すごい 中堅企業100

Part1
地域経済の牽引役

[図解]国内の売上高、投資、雇用で伸び盛り 今の日本経済を牽引する主役は中堅企業だ
[インタビュー]「人手不足が迫る企業の新陳代謝」 IGPIグループ会長 冨山和彦

Part2
注目企業

すごい地方中堅企業100社
十文字チキンカンパニー[岩手] 鶏肉生産で東日本トップ級 岩手県北の産業を支える
モルテン[広島] スポーツ用品で世界を開拓 自動車部品や医療機器も展開
サンクゼール[長野] 食のSPAで生産者と消費者をつなぐ 海外はM&A活用し成長目指す
スギノマシン[富山] 超高圧水技術で世界を席巻 グローカルニッチリーダー経営
オーレック[福岡] 車輪タイプ草刈機で国内トップ 業界初の製品も多い
ドウシシャ[大阪] 小さい市場でも「絶対ナンバーワン」狙う 消費者目線の超ニッチ戦略
SWCC(旧昭和電線HD)[神奈川] 初の女性社長がガバナンス改革 躍進する老舗電線メーカー
R&Cながの青果[長野] 信州を軸に青果流通を変革 「おやき」の製販事業にアクセル
テクノア[岐阜] 中小製造企業約4500社が顧客 生産管理ソフトの知られざる大手
ピップ[大阪] 実はシャンプーハットも エレキバンはじめ顧客起点に強み
三洋化成工業[京都] ニッチ化学の「ファーストペンギン」 紙おむつ原料事業撤退で新ステージへ
サンエー[沖縄] 沖縄でコンビニから専門店まで 物流と地元熟知で本土企業の受け皿に
すごい中堅企業 88社リスト

Part3
輝く中堅企業へ 課題と処方箋

[インタビュー キーパーソン3名に聞く]産・学・官が語る 中堅企業の「勝ち筋」
・早稲田大学大学院経営管理研究科教授 入山章栄
・経済同友会副代表幹事、寺田倉庫社長 寺田航平
・経済産業省経済産業政策局長 藤木俊光

融資だけではない 銀行の中堅支援の実情
[地域創生で注目! 2代目社長が語る]ジャパネット流「やり抜く」経営
ジャパネットホールディングス社長兼CEO 髙田旭人
Uターン・Iターン転職事情
中堅企業の買収 海外が興味津々も情報不足が壁

6つの指標で見る 伸び盛り! 地方中堅企業ランキング
売上増加率/1人当たり売上高/税引き後利益/売上高利益率/自己資本比率/初任給

第2特集
時価総額は一時1兆円 東京メトロ 熱狂なき株式上場
[インタビュー]「上場で成長への機運が盛り上がっている」東京地下鉄(東京メトロ)社長 山村明義
脱「鉄道依存」への布石 メトロの「遣唐使」が学んだヒューリックの不動産手法

スペシャルリポート
9000人リストラに社内激震 日産がなくなる日
ホンダに残る日産提携の「違和感」

NEWS&TOPICS最前線
米大統領に再びトランプ氏 先行する期待とリスク懸念
ヤマトが異例の上期赤字 「値下げ戦略」で窮地に
ニコン大株主に浮上した 眼鏡大手「レイバン」の正体


連載
|経済を見る眼|日本への「チップ制度導入」のインパクト|柳川範之
|ニュースの核心|立憲民主党「脱ポピュリズム」は国民に届くか|野村明弘
|トップに直撃|デクセリアルズ 社長 新家由久
|フォーカス政治|与党狙う立憲民主に問われる「度量」|牧原 出
|マネー潮流|トランプ再選が招きうる4つの影響|中空麻奈
|中国動態|民間企業の投資資金、出所変わるか|梶谷 懐
|財新 Opinion&News|トヨタが出資する中国ロボタクシーの実力
|グローバル・アイ|左派と極右の政治的融合、背後に危険な陰謀論|ヤン=ヴェルナー・ミュラー
|Inside USA|再選果たしたトランプが仕込む「暴力」のタネ|瀧口範子
|少数異見|ウクライナ戦争を招いた「失敗の本質」
|ヤバい会社烈伝|au iPhone16深夜2時到着!|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法 81|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|「共通テスト」失敗の要因に 受験生への寒さや雪の影響|鈴木瑞洋
|話題の本|『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』著者 川崎莉音氏・江森百花氏に聞く ほか
|名著は知っている|『下駄で歩いた巴里』[上編]
|社会に斬り込む骨太シネマ|『ドリーム・シナリオ』
|ゴルフざんまい|難易度を左右するピンの位置決め|佐藤信人
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|西野智彦の金融秘録|異次元緩和「解体」への道①
|編集部から|
|次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2024年11月23日号」(11月18日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
55ページ ■すごい中堅企業88社リスト

日本新薬の代表者
【誤】中井 享
 ↓
【正】中井 亨