週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2024年12月7日号
2024年12月2日 発売
定価 950円(税込)
JAN:4910201311248

【第1特集】商社 迫られる転換

新たな稼ぎ方を生み出すべく、商社は転換を迫られています。「脱炭素」といかに折り合いをつけ、消費者ビジネスのどこに価値を見いだすか。本特集では、資源バブル終了と「またトラ」リスクにさらされる総合商社は今後も好業績を維持することが可能なのか、5大総合商社のトップにも直撃し現状と課題を徹底リポート。セブン&アイ・ホールディングス争奪戦をはじめとするコンビニ事業の今や、就活生に人気の5大商社の変わりゆく社風についても解説しています。
 

【第2特集】国立大学 値上げの深層


東京大学が授業料を値上げする。ほかの大学も続くのか。74校の回答から課題に迫る。

担当記者より

「商社 迫られる転換」を担当した印南志帆です。記事のデータを印刷所に送るまで、こんなにも事態が動き、ヒヤヒヤした特集は久しぶりでした。セブン&アイホールディングスの海外企業による買収危機に対する対抗策として、創業家と伊藤忠商事らによる「救済説」が浮上したことについてです。

大手コンビニは総合商社と密接な関係を持っています。ファミリーマートは伊藤忠の実質子会社で、ローソンには三菱商事とKDDIが50%ずつ出資しています。商社特集の取材班では、セブン&アイの買収危機に対し、セブン‐イレブンへの卸売りなどで関係性の深い三井物産と伊藤忠が今何を考えているのかを探るべく、歴史的な経緯の整理、関係者への取材などを進めていました。

セブン&アイと資本関係があるのは三井物産ですが、1970年代から長くて深い関係性を築いてきたのは伊藤忠です。今現在、消費者ビジネスに力を入れているのも同社といえます。

伊藤忠の総帥、岡藤正広会長へのインタビューを実施したのは、セブンのMBO(経営陣による買収)に伊藤忠が参画を検討していることが報じられた翌日の11月14日、朝7時半のこと。岡藤会長が口にしたのは、味を徹底して追求してきたセブンへの敬意と、従前から協力を申し出てきたということでした(詳細は、特集のp54~55ページをお読みください)。ただ、岡藤会長ご自身が自覚するように、セブンの競合であるファミリーマートを擁する同社がセブンに出資するうえではかなり難しい調整が必要になります。

「セブン争奪戦」は早くも佳境を迎えていますが、そもそも総合商社が小売業態に見出す価値とは何なのか、ここでなにをやろうとしているのか。特集内で詳報しています。

ほかにも、「脱炭素ビジネス」との向き合い方、商社を目指す就活生に役立つ5大商社の「社風図鑑」など、盛りだくさんの内容です。ぜひ、ご覧ください。

担当記者:印南 志帆(いんなみ しほ)
早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
商社 迫られる転換 「純益1兆円」の先
資源バブル終了に「またトラ」リスク 転換迫られる総合商社
業界丸わかり! 商社大運動会

[財閥系2大商社 トップを直撃!]「純益1兆円」後も成長は続くか?
「脱炭素ビジネスは業際を超えていく」 三井物産 社長、CEO 堀 健一
「事業同士の掛け合わせがカギ」 三菱商事 社長 中西勝也

PART1
「脱炭素」ビジネスの現実解
  LNG   物産、商事が構想する「稼げる脱炭素」
[インタビュー]「LNGは10年商機ある」 三菱商事 地球環境エネルギーグループ CEO 齊藤 勝

 蓄電池  伊藤忠、住商が模索「蓄電ビジネス」の解
[インタビュー]「再エネは30年以降に貢献」 住友商事 エネルギートランスフォーメーショングループ CEO 麻生浩司
[商社 トップインタビュー]「商売はコツコツ地に足着けてやる」伊藤忠商事 社長、COO 石井敬太 
[商社 トップインタビュー]「強みを掛け合わせ 非資源事業を加速」住友商事 社長、CEO 上野真吾

 洋上風力  丸紅、欧州で「浮体式」参入の勝算
[商社 トップインタビュー]「再エネは 『ひと工夫』で儲ける」 丸紅 社長 柿木真澄
丸紅は雪辱を果たせるか? 洋上風力公募「第3ラウンド」の行方
[スペシャルインタビュー]「商社のライバルは商社にあらず」 日本貿易会 会長 安永竜夫

PART2
コンビニ戦線異状あり

「争奪戦」は早くもヤマ場 セブンのMBOに伊藤忠が参戦の現実度
広告ビジネスは「レジ上」で実証 伊藤忠、ファミマの「メディア化」で攻勢
丸紅はひっそり撤退の一方で スーパーに懸ける住友商事の熱情
KDDIと共闘で「小売りから引くどころか攻めたい」 三菱商事が「ローソン」に見いだす新価値

ワードクラウドで差が歴然! 口コミ&データで比較 「本当に働きやすい」商社
「特別枠」で課長級登用 伊藤忠「女性執行役員」急増のカラクリ
[座談会]現役社員が赤裸々告白! 今ドキ商社の「カネ・仕事・働き方」
[スペシャルインタビュー]伊藤忠商事 会長、CEO 岡藤正広
 「変われない会社から駄目になる。総合商社に5社は不要」

第2特集
本誌独自アンケート 国立大学 値上げの深層
74国立大 アンケート
「値上げ」を望む私大の苦境
[インタビュー]「収益構造の多様化」が値上げの狙い リクルート進学総研所長 小林 浩

NEWS&TOPICS最前線
ソニーとKADOKAWA“買収”で直面する3つの壁
UUUMを上場廃止させる オーナー会社の腹積もり
オリンパスCEO突然辞任 後継探しの苦悩が再び


連載
|経済を見る眼|単身高齢者世帯「都会で6割増」に備える|藤森克彦
|ニュースの核心|人の悲しみ、痛みに寄り添えない政治指導者たち|福田恵介
|トップに直撃|NIPPON EXPRESS ホールディングス 社長 堀切 智
|フォーカス政治|反攻の橋頭堡か、落日・日本の肖像か|軽部謙介
|マネー潮流|安易な物価高対策の連発が生む弊害|木内登英
|中国動態|AI実装先進で雇用問題も先を行く|福本智之
|財新 Opinion &News|中国で振るわぬフォルクスワーゲンの挽回策
|グローバル・アイ|米民主党はエリート目線だから嫌われる|ダロン・アセモグル
|Inside USA|米国の教育をむしばむ「慢性的欠席」の悩み|安井明彦
|少数異見|選挙時の公約に一喜一憂するなかれ
|ヤバい会社烈伝|佐々涼子と日本製紙 絶望の淵で見せる仕事への矜持|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法83佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|トランプ返り咲きは 世界貿易にどう影響するか|松浦寿幸
|話題の本|『地面師たち ファイナル・ベッツ』著者 新庄 耕氏に聞く ほか
|社会に斬り込む骨太シネマ|『イベリン:彼が生きた証』
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|西野智彦の金融秘録|異次元緩和「解体」への道③
|ゴルフざんまい|シニアの試合に思う 両親への感謝|中嶋常幸
|編集部から|
|次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2024年12月7日号」(12月2日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
43ページ ■伊藤忠、住商が模索「蓄電ビジネス」の解

太陽光パネルと蓄電池の補助金に関する記述
【誤】一部は全農から補助金が出るとはいえ、思い切った買い物となった。
 ↓
【正】一部は補助金が出るとはいえ、思い切った買い物となった。
46ページ ■伊藤忠、石井敬太社長インタビュー

過去10年の減損損失が少ないことについて
【誤】さらにシェールガスの失敗など、色々な処理に手いっぱいで資源の積み上げができなかった。
 ↓
【正】さらにメキシコ湾油ガス田の失敗などの処理に手いっぱいで資源の積み上げができなかった。
58ページ ■三菱商事が「ローソン」に見いだす新価値

S.L.C.グループに関する記述
【誤】本社社員8000人
 ↓
【正】本社社員800人
62~63ページ ■口コミ&データで比較 「本当に働きやすい」商社

伊藤忠商事、中野良祐氏の所属部署
【誤】人事・総務部企画統括室
 ↓
【正】人事・総務部企画統轄室