今週号の「新リース会計の衝撃」を担当しました田島靖久と申します。2024年9月、会計に関する基準を決める企業会計基準委員会が衝撃の発表を行いました。
簡単に言えば、これまで貸借対照表(バランスシート)に計上しなくて良かったリースに関してもすべて計上しろという内容です。
それまで「持たざる経営」がもてはやされていたことに加え、財務指標を良くして株価を引き上げることが求められていた企業は、資産をできるだけ軽くするオフバランス化を進めてきました。
にもかかわらず、新基準はすべてのリースを資産と負債に計上しろ、しかも27年4月から強制適用するぞという内容だったため、企業には大きな衝撃が走ったのです。
そうした発表があった直後、ある大手流通企業の副社長が、ため息交じりにこう漏らしました。「とにかく作業が膨大で、果たして2年で間に合うのか」。
聞けば、制度の複雑さはもちろん、店舗や担当者が管理している契約書もすべて洗い出さなければならないとのことで、「うちに限らず、対象となる1万社は新基準対応でとんでもないことになる」と副社長の愚痴は止まりません。「これは特集になる」。副社長の話を聞きながらそう思い、特集を作ることにしました。
特集では、新基準の基本を徹底解説しました。なかでもリースに該当するか否かの判断は容易ではないため、初心者でもわかりやすいよう図解を交えて詳しく説明しています。
新基準ではバランスシートだけではなく損益計算書にも大きな影響を及ぼします。そのため影響が大きな4業界をピックアップし、業界特性に応じた影響をまとめました。さらに新基準適用時の財務指標をシミュレーションし、ランキング化したので併せて見ていただければと思います。
ある監査法人の公認会計士は、「やるべき作業を考えれば、2年で間に合うかどうか。とにかく時間がない」と言います。雑誌を手に取っていただいて必要な知識を身に付け、今すぐにでも取り組んでいただければと思います。
担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
週刊東洋経済編集部副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社し現職。