特集「保険 異常事態」を担当した中村正毅です。取材の中で印象に残っているエピソードがあります。それは損害保険ジャパンの役員が、自動車ディーラーで自社の自動車保険に加入しようとしたところ、「すみません、うちの店は東京海上(日動火災保険)なんですよ」と言われ、加入を断られたというものです。
ディーラーは店舗ごとに担当する損保会社を割り振る「テリトリー制」を敷いています。一部のディーラーでは「鉄の掟」として機能し、例えば東京海上のテリトリー店舗であれば、ほかの損保の自動車保険には加入できないようにしています。
保険販売におけるルールを定めた保険業法では、そうした顧客の意向を無視した販売方法は一切認めていません。それにもかかわらず、ディーラーでは平然と不適切な販売が横行しているのが実情です。
では、いったい何のためにディーラーはテリトリー制を敷いているのでしょうか。それは損保会社に対して、新たにテリトリー店舗が欲しければ、社用車をもっと購入しろ、週末のイベントで駐車場の誘導係をやれなどと、過度な便宜供与を要求するためです。それは生命保険業界でも同様に見て取れます。
そうした長年の悪しき慣習から、保険業界は本当に脱却できるのでしょうか。変革に向けて苦悩する業界の舞台裏を徹底取材していますので、是非手に取ってご覧頂ければ幸いです。
担当記者:中村 正毅(なかむら まさき)
これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険、消費者金融などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。
『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。
創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。
一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。
視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。
図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。
『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。