週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年2月22日・3月1日合併号
2025年2月17日 発売
定価 1,000円(税込)
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【特集】もうけの仕組み 2025


企業がどこからどれだけ調達し、どこに販売しているか――。企業の収益構造や投資機会を見極めるうえで知っておくべき“つながり”の知識を、会社四季報記者が見える化。本特集では、自動車から半導体、食品、玩具まで注目の56業界360社を取り上げ、サプライチェーンの構造をわかりやすく図解しました。近年はコロナ禍や米中対立などサプライチェーンの分断を引き起こす事態が次々と発生。こうしたリスクに備えるうえでも、投資家、ビジネスパーソン必見の特集です。

担当記者より

特集「もうけの仕組み 2025」を担当した松浦です。

突然ですが、メルマガ読者の皆様はビールの主原料で金額がもっとも大きなものをご存じでしょうか?

麦とホップだと思った方、は惜しい。たしかにこうした農産物も主原料に含まれますが、金額で見ると、飲料用の缶(アルミ缶)と宣伝広告費になります。

では、売り先は? 関連する業界は?・・・などなど。

ビール業界を知るには、決算だけでなく、こうした取引構造、つまりサプライチェーンも知る必要があります。

週刊東洋経済では「もうけの仕組み」をというテーマで、2023年と2024年はビジネスモデルに特化した特集を組んできました。3回目となる今回はサプライチェーンを特集しています。

実は、もう何年も前から、サプライチェーンで特集を作れないかと考えてきました。

というのも、2011年の東日本大震災から、近年のコロナ禍に至るまで、企業のサプライチェーンは毎年のように危機にさらされ、大切さが声高に叫ばれています。

一方、企業にとって、どの企業からいくら買って、どこの企業や消費者にいくら売っているか、というサプライチェーンの情報は競争力に直結するため、明らかにされることがほとんどありません。

またビジネスモデルであれば、決算書を基に図解を起こせますが、サプライチェーンの場合はこうした基礎となる資料がほとんどありません。

そのため、われわれにとって、なかなか記事が書きづらく、雑誌のフォーマットに落とし込むのが難しいテーマとなっていました。

とはいえ、サプライチェーンは読者の皆様にとって、知っておくべき重要な内容であることにはかわりません。

そこで、数年前から、産業間の取引金額を記載した、マクロ統計の「産業連関表」に目をつけて、コツコツと解読を進めてきました。

産業連関表が何か、どういった手法で図解しているか、は多少難解な話なので、特集に譲ります。

今回は記者の知見を図解した産業の断面図と、産業連関表を使ったコンパクトな図の2種類を用意し、合計56業界、計66点の図表を盛り込みました。

株式投資の銘柄探し、営業先の開拓、そして雑学やビジネス教養に使っていただければ幸いです。

どうぞお楽しみください。

担当記者:松浦 大(まつうら ひろし)
1984年生まれ。明治大学卒、同大学院修了(商学修士)後、2009年に入社。記者としては自動車、外食、鉄鋼、ホテル・旅行、ゼネコンと住宅・住宅関連業界を担当。妻と娘、息子、オウムと暮らす。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
もうけの仕組み 2025年版

サプライチェーン大図鑑

取引やお金の流れの「図解」で業界を知ろう
主要業界の総需給と天気予想
[図解] これが日本のもうけの流れ
[SCMの達人に聞く] サステナビリティ・コンサルティング 代表 石川和幸
 「川上から川下まで情報を共有する仕組みが必要だ」

テーマ①
地政学リスク

<半導体> 製造には日本企業が欠かせない
先端半導体をめぐる攻防 カギを握る2つのリスク
[SCMの達人に聞く]ラピダス 社外取締役 小柴満信
 「半導体政策は安保政策 自国回帰を前提とすべき」
<自動車> 大変革期を迎えて進む供給網再編
トランプ関税が発動か 揺れる「ドル箱」市場
<電子部品> 材料からの一貫開発型やファブレス型など多様
<パソコン> 部品から組み立てまで中国依存
<ビール類> 主要な材料は「缶」と「広告」
海外生産メリット薄まり 進む製造業の国内回帰
<鉄鋼> 高炉を起点としたエコシステム
<石油製品> 税金などが約25%を占める
<電力> 電力の家計負担は5兆円超え
<サイバーセキュリティー> 「サプライチェーン攻撃」を防ぐための必要な対策

テーマ②
コスト上昇

<陸運> 労働環境を改善し、物流危機を回避
<外食> 仕入れは卸業経由が基本 加工段階の原価低減カギ
<加工食品> 納品期限緩和は道半ば 小売店との連携が不可欠
<アパレル> 「分業型」の課題を克服したSPA
<建設> 採算取れる業界構造への脱皮図る
<マンション> 回転型ビジネスの壁は人手不足と金利上昇
<システム開発> コンサルと派遣技術者を駆使
<Webアプリ> 顧客の囲い込み競争が激化

テーマ③
人口減少・高齢化

<コンビニエンスストア> セブンの棚を支える納品システム
<ディスカウント店> 工場再生し製販一体追求 業務スーパーが安い理由
[SCMの達人に聞く]神戸物産 社長 沼田博和
 「自社で製造するからこそ迅速に価格へ反映できる」
<農業> コメ高騰が揺さぶる農協の支配力
<製粉> 政府が小麦の輸入価格を決める
<冠婚葬祭> 施設の費用と人件費が大きい
<化粧品・はみがき> 一気通貫の販売体制で全体コストを最適化
<医薬品> 薬不足を生んだ、特殊な業界構造
取引の流れを一挙に解説 サプライチェーン図鑑
自動車 /トラック / タイヤ / 造船 /
工作機械/半導体/白物・生活家電/エアコン/
電池/電線・ケーブル/ガラス/陶磁器/
冷凍食品/清涼飲料/畜産/食肉/
水産1/水産2/労働者派遣サービス/時計/
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