「既存融資の追加はもちろん、ゼロゼロ融資など、借りられるものは全部借りた。そのおかげでどうにか社員のクビも切らずここまでこられたが、さすがにもう無理かもしれない」
昨年末、かれこれ15年以上の付き合いになる中小企業社長と会った際、彼が肩を落としながらつぶやいたこの一言がきっかけになりました。
今回の特集は「再来!大倒産時代」。東京商工リサーチの調査で2024年に倒産した企業の件数が、実に11年ぶりに1万件を超えました。コロナ禍で政府のなりふり構わぬ支援策で抑え込まれていた倒産が、平時に戻ったことで一気に噴き出した感じです。
当初は、「コロナ禍が終われば企業業績も回復する」と言われていました。しかし、企業を取り巻く環境がすぐに変わるわけではありません。しかもゼロゼロ融資を始めとする支援策を受けた企業は過剰債務に陥り、かえって苦しくなっていました。
特集では、実際のケースやデータを基に、倒産に至った背景に迫りました。そこには主に中小企業がゼロゼロ融資の返済、円安、物価高、そして人手不足という“四重苦”に苦しめられている現状がありました。
加えて昨今、増加しているもう一つの倒産があります。長年、粉飾決算や架空取引に手を染めてきた老舗企業が、倒産に至るという「コンプラ倒産」です。債務超過に陥っているにもかかわらず、売上高や利益を偽って生きながらえてきたものの、コロナ禍を経て露呈してしまうケースが後を絶たないのです。
そこで、信用調査会社のプロが語る「危ない企業の見分け方」、そしてまんまとだまされてきた銀行員たちの本音も掲載しました。
そして特集の目玉は、全上場企業を対象にした「倒産危険度ランキング」。じつに683社が危険水域にあることがわかりました。
金利が上昇している中で利払い負担が膨らみ、企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。是非、特集を手に取っていただき、お読みいただければ幸いです。
担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
週刊東洋経済編集部副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社し現職。