特集「喰われる自治体―告発―」を担当した野中大樹です。
昨年5月、『喰われる自治体』という特集を作りました。過疎の自治体にバラ色の地方創生を語りながら、他方で「ぶっちゃけバカ」「行政機能をぶんどる」と豪語していた地方創生コンサルの実像を追いました。
すると、「我が自治体も喰われている。取材してほしい」と、全国各地から連絡がきました。電話やメールだけでなく、大量の資料を郵送してくださった方もいました。余白が残らないくらいメモ書きで真っ黒になった資料を見つめながら、この熱い思いを何とか形にしなくてはと考え続けてきました。ようやく形になりました。
「喰われる」その様態は多岐にわたります。たとえば今回は、全国1741自治体の固定電話契約をほぼ独占状態で契約しているNTTを大きく取り上げました。旧電信電話公社の時代から何十年にわたって随意契約を結んでいる自治体ばかりです。ある自治体が、これからの人口減少を見越した支出削減を図ろうと、随意契約から一般競争入札に切り替えようとしました。ところが、その動きが面白くなかったのでしょう、NTTは自治体の入札の準備に徹頭徹尾、協力しませんでした。この自治体は行財政改革の志ある市長と職員たちが奮闘し、何とかNTTの「壁」を突破して競争入札を実現しましたが、過疎が進み、人材が枯渇する多くの自治体で同じことはできないだろうと思います。NTTは利権を保ち続けられます。
医療のことを知らないのに、首長を上手にたらしこんで医療ツーリズム事業を随意契約で受託した地方創生コンサルも取り上げました。地元の経済界が15年かけて準備をした「道の駅」計画を、大手のリース会社がサクっと喰ってしまった茅ケ崎市や、アリーナ建設問題に揺れる愛知県豊橋市の話もとりあげています。
また、喰われないためのまちづくりを実践する事例も紹介しています。ルポライターが茨城県の阿見町や堺町、北海道南幌町を歩き、コンサルに頼らずに人口増を実現した自治体には何があるのか、探りました。
一般財団法人・日本総合研究所が実施する「47都道府県 幸福度ランキング」にひそむ「地方創生のヒント」を、寺島実郎会長に語ってもらうページもあります。
ぜひ、ご覧ください。
担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。
78ページ | ■経済学者が読み解く現代社会のリアル 再エネ投資促進、カギを握るのは市場統合 4段目2行目 【誤】限界電源(=経済的に合理的な電源) ↓ 【正】限界電源(=限界費用が最も高い電源) |