週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年6月21日号
2025年6月16日 発売
定価 950円(税込)
JAN:4910201330652

【第1特集】喰われる自治体 ―告発―

地方創生を掲げながらコンサルティング会社が自治体を“喰っている”実態を追った特集「喰われる自治体」から1年が経ちました。この特集は大きな反響を呼び、発売後には多数の内部告発が寄せられました。本特集では、そうした告発に基づき第2弾を展開しました。固定電話契約や医療ツーリズム受託など、全国各地の自治体から上がるさまざまな“悲鳴”を詳報。一方、地方創生コンサルに頼らずに人口増に成功した自治体の秘訣もお伝えします。全47都道府県幸福度ランキングも掲載しています。
 

【第2特集】漂流する臨海副都心


最初期の構想は40年前にまでさかのぼる人工海上都市・臨海副都心。数々の誤算に見舞われた都の巨大プロジェクトの今と未来を検証する。

担当記者より

特集「喰われる自治体―告発―」を担当した野中大樹です。

昨年5月、『喰われる自治体』という特集を作りました。過疎の自治体にバラ色の地方創生を語りながら、他方で「ぶっちゃけバカ」「行政機能をぶんどる」と豪語していた地方創生コンサルの実像を追いました。

すると、「我が自治体も喰われている。取材してほしい」と、全国各地から連絡がきました。電話やメールだけでなく、大量の資料を郵送してくださった方もいました。余白が残らないくらいメモ書きで真っ黒になった資料を見つめながら、この熱い思いを何とか形にしなくてはと考え続けてきました。ようやく形になりました。

「喰われる」その様態は多岐にわたります。たとえば今回は、全国1741自治体の固定電話契約をほぼ独占状態で契約しているNTTを大きく取り上げました。旧電信電話公社の時代から何十年にわたって随意契約を結んでいる自治体ばかりです。ある自治体が、これからの人口減少を見越した支出削減を図ろうと、随意契約から一般競争入札に切り替えようとしました。ところが、その動きが面白くなかったのでしょう、NTTは自治体の入札の準備に徹頭徹尾、協力しませんでした。この自治体は行財政改革の志ある市長と職員たちが奮闘し、何とかNTTの「壁」を突破して競争入札を実現しましたが、過疎が進み、人材が枯渇する多くの自治体で同じことはできないだろうと思います。NTTは利権を保ち続けられます。

医療のことを知らないのに、首長を上手にたらしこんで医療ツーリズム事業を随意契約で受託した地方創生コンサルも取り上げました。地元の経済界が15年かけて準備をした「道の駅」計画を、大手のリース会社がサクっと喰ってしまった茅ケ崎市や、アリーナ建設問題に揺れる愛知県豊橋市の話もとりあげています。

また、喰われないためのまちづくりを実践する事例も紹介しています。ルポライターが茨城県の阿見町や堺町、北海道南幌町を歩き、コンサルに頼らずに人口増を実現した自治体には何があるのか、探りました。

一般財団法人・日本総合研究所が実施する「47都道府県 幸福度ランキング」にひそむ「地方創生のヒント」を、寺島実郎会長に語ってもらうページもあります。
ぜひ、ご覧ください。

担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

週刊東洋経済の編集方針

  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
  2. 分析力
    複雑な情報やビジネス慣習、制度変化などを分析し、的確に整理。表層的事象をなぞるのではなく、経済や社会の底流で起きている構造を読み解く
  3. 中立性
    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

3つのポイント

視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
喰われる自治体 ―告発―

第1章
多数の内部告発 自治体の悲鳴
全自治体の「9割超」の固定電話契約 自治体を喰い続けるNTT
[新潟県]三条市
自治体から「随意契約」でもぎ取る 医療知らないコンサルが 医療ツーリズム受託の怪 横山 勲
「行政機能を分捕る」を実行したコンサル 過疎ビジネスに襲われた福島県国見町の顛末
[千葉県]流山市
「後始末」に1億円超の公的資金を投入 コンサル主導会社が迷走 「優等生」流山のつまずき 鈴木貫太郎
[愛知県]豊橋市
計画の賛否をめぐって住民投票へ アベノミクス全盛期に号砲 「アリーナ建設」の光と影 関口威人
[神奈川県]茅ヶ崎市
大手に任せて地方創生は成るか 地元経済界悲願の「道の駅」 サクッと喰ったリース大手 鈴木貫太郎
全国1741自治体ほぼすべてに営業 自治体を御する大手の力
[千葉県]浦安市
浦安市は「不当」と主張するも覆らず 文教地区が外資系ホテルと競走馬資金に
「中央官僚の地方派遣」を専門家が一刀両断 賛同者2~3割程度の挑戦をせよ 木下 斉

第2章
喰われないまち こうつくる

[地方ルポ]コンサルに頼らず人が増えた 3つの町の共通項は「住宅政策」 ルポライター 大月えり奈
[茨城県]阿見町
人口5万人突破で「市」に昇格
[茨城県]境町
25年借りれば 家がもらえる
[北海道]南幌町
人口増加率首位の大胆な住宅補助策

[インタビュー]47都道府県 幸福度ランキングに潜む 「地方創生のカギ」
日本総合研究所会長の視点 アジアダイナミズムと日本海物流を生かせ 寺島実郎

[インタビュー]価値をひっくり返す
内閣官房副長官 青木一彦/日本総合研究所 主席研究員 藻谷浩介
ランキングで読み解く 若者に選ばれる自治体 若者が消える自治体

第2特集
漂流する 臨海副都心
解体された「幻の博覧会」が生んだ遺産
幻想に終わった「情報都市」構想の代償

[インタビュー]臨海副都心の生みの親が直言 東京都市大学名誉教授 平本一雄

NEWS&TOPICS最前線
源流の豊田織機を非上場化 トヨタグループ大再編へ
大荒れのSiC半導体が ルネサスとロームを翻弄
日本郵便に前代未聞の処分 避けられない物流への影響


連載
|経済を見る眼|「孤立死2万人」への対策を考える|藤森克彦
|ニュースの核心|マスク氏がトランプ氏と決別、テスラが走る悪路|山田雄大
|トップに直撃|野村総合研究所 社長 柳澤花芽
|フォーカス政治|参院選後に「自・立」大連立の現実味|塩田 潮
|マネー潮流|コメ問題解決には新農業が必要だ|中空麻奈
|中国動態|相次ぐ習近平の権力不安定化の議論|加茂具樹
|財新 Opinion&News|成長を続ける中国「ロボタクシー」の現在地
|グローバル・アイ|トランプの「美しい減税」がもたらす「危機の形」|ケネス・ロゴフ
|Inside USA|議員高齢化で切迫、民主党の世代交代が急務に|安井明彦
|少数異見|経済戦争でなく本当の戦争になってきた
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法 107|佐藤 優
|経済学者が読み解く現代社会のリアル|再エネ投資促進、 カギを握るのは市場統合|伊藤公一朗
|話題の本|『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の弱さ考』著者 井上慎平氏に聞く ほか
|名著は知っている|『ザ・ワーク・オブ・ ネーションズ』[上編]
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|西野智彦の金融秘録|植田丸、2年目の逆風④
|ゴルフざんまい|27年間のマスターズ 解説で学んだ極意|中嶋常幸
|次号予告

今後の発売スケジュール

  • 11/10(月) 週刊東洋経済 2025年11月15日号

訂正情報

「週刊東洋経済2025年6月21日号」(6月16日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
78ページ ■経済学者が読み解く現代社会のリアル 再エネ投資促進、カギを握るのは市場統合

4段目2行目
【誤】限界電源(=経済的に合理的な電源)
   ↓
【正】限界電源(=限界費用が最も高い電源)