現代語訳 暗黒日記

昭和十七年十二月~昭和二十年五月

清沢 洌著/丹羽 宇一郎編集・解説
2021年12月3日 発売
定価 2,200円(税込)
ISBN:9784492062203 / サイズ:四六/並/304

大東亜戦争は非常なる興亡の大戦争である。筆を持つ者が、後世のために、何らかの筆跡を残すことは、その義務である。すなわち書いたことのない日記をここに始める。将来、大東亜外交史の資料とするためである。神よ、日本を救え。
昭和十八年十月一日 清沢 洌

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日本人はもう二度と戦争などするはずがない。恐らく日本人のほとんどはそう考えているだろう。しかし、その確信は極めて頼りない、むしろ大きな勘違いであることは、清沢洌の『暗黒日記』を読めばわかるはずだ。

清沢の日記に綴られている戦時下の日本人とその社会の姿は、驚くほど現代と似ている。まるで我々の現在のありさまが清沢に見透かされていたかのようだ。相手変われど主変わらずというが、何かひとつきっかけを得たならば、日本人はたちどころに、戦前のような好戦的な国民になってしまいかねないという危惧さえ覚えずにはいられない。

戦争というのは、どこまで行っても手段のはずだ。それも非常手段だ。目的ではない。にもかかわらず、戦時日本では、いつの間にか手段であるはずの戦争が目的となってしまった。

なぜ我々は、いや権力者は、殺し合いの決断をしてしまったのか。なぜ我々は戦争国、神の国日本への橋を渡ってしまったのか。なぜ300万人を超える犠牲者を出すまで戦争をやめることができなかったのか。そして、今の我々日本人のどこがその後変わったと言うのだろうか。問題の答えも、また『暗黒日記』の中にある。――はじめにより

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概要

反軍部を貫いた外交評論家が戦時下の政局や生活を記した貴重な記録。二度と戦争に近づかないために、立ち返るべき原点がここにある!

目次

序 章 暗黒日記の前史
第1章 昭和十七年十二月~昭和十八年十二月
     ──日本はなぜ勝ち目のない戦争に突っ込んでいったのか
第2章 昭和十九年一月~九月
     ──政治の強権化と情報統制に逆らえないメディア
第3章 昭和十九年十月~昭和二十年五月
     ──現実とかけはなれた銃後の国民意識
終 章 暗黒日記の後の日本

著者プロフィール

清沢 洌  【著】
きよさわ きよし

リベラルな自主独立の主張を貫いた外交・政治評論家、ジャーナリスト。1890年長野県北穂高村青木花見(現・安曇野市)生まれ。郷里の研成義塾に学び、1906年渡米。ホイットウォース大学卒業後、シアトル、サンフランシスコの邦字新聞社に勤める。帰国後、中外商業新報社(現・日本経済新聞社)外務部長、東京朝日新聞社企画部次長、報知新聞論説委員などを歴任し、1929年フリー評論家に転身。石橋湛山や嶋中雄作らと交友を深め、『東洋経済新報』『中央公論』などで反軍国主義の姿勢を貫いた。終戦直前の1945年5月21日、急性肺炎で死去。

丹羽 宇一郎  【編集・解説】
にわ ういちろう

1939年愛知県生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。同社社長、会長、内閣府経済財政諮問会議議員、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画(WFP)協会会長などを歴任し、2010年に民間出身では初の中国大使に就任。現在、公益社団法人日本中国友好協会会長、一般社団法人グローバルビジネス学会名誉会長、福井県立大学客員教授、伊藤忠商事名誉理事。著書に、『丹羽宇一郎 戦争の大問題』(東洋経済新報社)、『人間の器』(幻冬舎)、『会社がなくなる!』(講談社)など多数。