年金制度の問題点を理解するための論点40
1998年に初版を発行した『図解 年金のしくみ』の第6回目の全面改訂版です。かつて年金は現役世代の人にとっては将来の退職後のことなので、あまり関心が向かなかった方も少なくなかったのではないでしょうか。しかしながら、日本社会の少子高齢化の進行が社会問題となるのに伴い、特に団塊の世代が65歳を迎え年金受給者が増加する一方で、年金制度を支える現役世代が減少していることから、年金制度は持続可能か、将来の年金額は大幅に減額されるのではないか、などの年金制度に対する不安が高まっています。
先述の関心が向かなかった方の中には、理解しようとすると、年金制度の種類が多くて、それぞれのしくみをすべて理解するのはやさしくない、また、何が年金制度の具体的な問題点で、それに対してどのような対策がとられているのか、今後どのような改革が進められるのか、などの全容を把握するのも簡単ではない、といったことが理由でその時期になったら考えようと思っていた方もいるのはないでしょうか。現在、国民の年金制度に対する不安が払拭されない状況も、国がそれらを払拭できるような年金改革が実施できていないという見方もできますが、年金制度・しくみや問題点を理解するのが容易でないということも影響していると思われます。
本書はこうした事情を踏まえ、各年金制度の基本的なしくみや、年金の数理・財政・資産運用のしくみ、年金改革の動向や将来の課題などを40テーマに絞り、図表を多用し、やさしく解説することに努めています。また、客観的な資料をもとに作成し、注目度の高いキーワードを取り上げていることも特徴です。
第6版では、2012年に、社会保障・税一体改革に関して成立した年金改革関連四法による、消費税率引き上げによる基礎年金の国庫負担の財源確保、2015年10月に予定される厚生年金と共済年金の一元化の実施といった、2004年以来の久しぶりに大きな年金改正と、2014年6月に公表された5年1度の厚生年金・国民年金の財政再検証の結果に基づく公的年金の将来像のほか、企業年金における従来の厚生年金基金の受け皿になる確定拠出年金や確定給付企業年金のしくみ、年金基金によるコーポレートガバナンス、公的年金だけに頼らない私的年金による自助努力といったトピックスの解説に注力しています。従来からの年金制度の基礎的なしくみを解説する部分と合わせて読まれると、年金制度の全容についての理解が進むと思われます。