独裁者の倒し方

暴君たちの実は危うい権力構造

マーセル・ディルサス著/柴田 裕之訳
2026年1月7日 発売
定価 2,420円(税込)
ISBN:9784492224359 / サイズ:四六/上/328

「世界の厄介者」はなぜ倒れないのか?
側近たちとの避けられないトレードオフ、非道な行動の背後にある、裏切りや暗殺、叛乱への恐怖……
独裁政権の特異なパワーバランスや脆弱性を明らかにし、抑圧なき世界を実現するための書。

「思考を喚起する」--エコノミスト紙
「圧倒される」--フィナンシャル・タイムズ紙
「愉しく読める」--デイリー・テレグラフ紙
「完全に引き込まれる」--ブライアン・クラース(『なぜ悪人が上に立つのか』著者)

エコノミスト紙「2024年度ベストブック」に選出、世界20カ国で刊行!

独裁者は側近がつくる。
独裁者になるということは、降りられないランニングマシンの上で走り続けるようなものだ。
彼らはその立場上、「穏やかに辞任する」という出口戦略を持ちえず、常に脅威にさらされているのだ。
政権のパワーゲームという視点で独裁制を読み解く画期的な書。

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概要

「世界の厄介者」はなぜ倒れないのか? 独裁政権の特異なパワーバランスや脆弱性を明らかにし、抑圧なき世界を実現するための書。

目次

序――黄金の銃のパラドックス
恐怖におびえながら生きる独裁者
「リビアのゴッドファーザー」の悲惨な最期
独裁者はどのように失脚するのか?
注目すべきは独裁者個人よりも政権の仕組み
取材した人々と本書の構成
……

第1章 降りることのできないランニングマシン
独裁者が権力を求める理由
国内一の金持ち
後継者という敵
民主化という選択肢
亡命という選択肢
……

第2章 内なる敵という脅威
皇后エカチェリーナによるクーデター
独裁者が必要とする3つのグループ
権力を維持するための食料の分配
「独裁者のジレンマ」と人材のプール
お金というアメと弾圧というムチ
……

第3章 軍人たちを弱体化する
ガンビアの独裁者を倒すクーデター計画
作戦当日の夜とその後
クーデターの回数と成功率
クーデターにかかわる3つのグループ
首都をおさえるべき理由
……

第4章 叛逆者、武器、資金
私腹を肥やし過ぎて失脚した独裁者
叛乱を起こすことは困難になっている
叛逆の理由と手段
反政府勢力の資金源となるダイヤモンド
身代金による資金集め
……

第5章 国外の敵、国内の敵
独裁政権は戦場では有利
スターリン政権における粛清の嵐
戦果報告における?の蔓延
秘密作戦による外国の介入
失敗したアメリカのカストロ排除作戦
……

第6章 民衆に銃を向ければ負け
抗議行動の拡散という脅威
抵抗運動の「3.5%ルール」
弾圧が裏目に出るとき
政権を正当化する試み
敵対勢力の「抱き込み」と連帯の阻止
……

第7章 暗殺の他に選択肢がないとき
独裁者殺しは正当化できるか?
暗殺される可能性とそれを防ぐ方法
アフリカの独裁者を守るロシアの準軍事組織
安全のために自らを隔離する
国民から切り離されたプーチン大統領
……

第8章 政権交代の難しさ
独裁者が倒れたときに起こること
独裁体制が崩壊した後のスーダンを見舞った悪夢
繰り返す独裁政治のサイクル
内戦を避けるための権力継承の規則
民主制につながる非暴力的な抗議行動
……

第9章 独裁者の倒し方
外国勢力が独裁政治のサイクルを断ち切る2つの方法
独裁者の力を弱めるためにすべきこと
敵対者を監視し抑圧する技術を与えない
制裁措置の実施や防衛保障の停止
ライバルの人物に力を与える
……

謝辞
原注

著者プロフィール

マーセル・ディルサス  【著】
まーせる・でぃるさす

ドイツのキール大学安全保障政策研究所の客員研究員。オックスフォード大学で学び、反政府武装勢力によるクーデターが未遂に終わった2013年にはコンゴ民主共和国で働いていた。政治をテーマとするニュースレターのThe Hundredを執筆し、NATOやOECDといった主要な財団や国際組織に助言を与えてきた。

柴田 裕之  【訳】
しばた やすし

翻訳家。早稲田大学、Earlham College卒業。訳書に、ケイヴ『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』、エストライク『あなたが消された未来』、ケーガン『「死」とは何か』、ベジャン『流れといのち』『自由と進化』、オーウェン『生存する意識』、ハラリ『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』『NEXUS 情報の人類史』、カシオポ/パトリック『孤独の科学』、ドゥ・ヴァール『サルとジェンダー』、ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する』、リドレー『進化は万能である』(共訳)、ファンク『地球を「売り物」にする人たち』、リフキン『限界費用ゼロ社会』『レジリエンスの時代』、ファーガソン『スクエア・アンド・タワー』『大惨事(カタストロフィ)の人類史』、コルカー『統合失調症の一族』、ガロー『格差の起源』(監訳)、グレイ/スリ『ゴースト・ワーク』、ゾルン/マルツ『静寂の技法』、クラース『なぜ悪人が上に立つのか』『「偶然」はどのようにあなたをつくるのか』、他多数。