藩札の真実に迫る!
江戸時代を通じて、金属貨幣である金貨、銀貨、銅貨とは別に、西日本を中心に諸藩では「藩札」と呼ばれる紙幣が流通していました。流通した藩札は、江戸時代の経済システムにおいてどのような地位を占めていたのか。濫発されて価値が大きく下落したという通説は本当か。
本書は藩札に関する初の全国的かつ本格的な研究書です。貨幣史においてきわめて重要な位置づけにありながら、その種類・発行時期の多様さからどうしても地域研究にとどまりがちだった藩札について、全国・江戸全期にわたって網羅・研究しています。これまでの藩札に関するさまざまな学説上の見解の相違や、藩札にまつわる一般的な誤解に対し、丹念に証拠を集めることで、その実態を解き明かしていきます。
第1章 藩札前史としての私札の発展 ――伊勢国射和地方で発行された富山札を中心として 第2章 藩札の一般理論 ――経済学の視点から 第3章 藩札の流通実態 ――日本銀行による委託研究の成果を中心として 第4章 いわゆる藩札=信用貨幣論争について 第5章 銭匁勘定と銭遣い ――江戸期幣制の特色を再検討する 第6章 幕末期、藩札は濫発されたのか ――藩札発行高推計に基づき、濫発論を再検討する 第7章 藩札の整理について ――明治初年における通貨統合の一側面