西欧の没落は決定的だ。世界の中心はアジアへと回帰する。
日本はそこで成熟国らしく生きればいい。
ヨーロッパは金融と為替は統合したものの、財政危機によって分裂し始め、次第にユーロは減価していく。頼みの綱のアメリカも財政がとても厳しく、不況は新興国にも及んでいる。減速局面にある世界経済の中で、日本経済は相対的に順調であり、ユーロ安・ドル安・円高が続く。
世界経済は、西洋の没落とアジアの台頭(リオリエント)という100年に一度、あるいは数百年に一度の大きな構造変化の最中にある。その変化の中で、国内経済が成熟段階にある日本企業は、東アジア・南アジアに進出することによって高成長を維持することが可能である。
日本にとって必要なのは、アジアの主要なプレーヤーとしてアジア経済統合の重要な役割を担っていくことであり、「日本は成熟国らしく生きればいい」。「ミスター円」が、経済成長や発展に関する考え方を見直し、成熟社会のあり方を提言する。
第1章 ヨーロッパ危機で西洋の没落が始まった 第2章 リオリエント 第3章 為替レートから読むグローバル経済 第4章 日本経済に起きている構造変化 第5章 自虐的な日本悲観論 第6章 パラダイム・シフト
榊原英資
さかきばら・えいすけ
青山学院大学教授.
1941年生まれ.東京大学経済学部卒業.大蔵省入省後,ミシガン大学で経済学博士号取得.IMFエコノミスト,ハーバード大学客員准教授を経て大蔵省国際金融局長,財務官を歴任.2010年より現職.
『榊原英資 インド巨大市場を読みとく』(共著),『幼児化する日本社会』,『強い円は日本の国益』,『日本人はなぜ国際人になれないのか』,『辺境から中心へ』(東洋経済新報社),『財務省』(新潮新書),『なぜ日本の政治はここまで堕落したのか 松下政経塾の大罪』(朝日新聞出版),『「通貨」で読み解く世界同時恐慌』(アスコム)など著書・論文多数.