稀代の経済学者、小室直樹氏。その小室氏の代表作、『小室直樹の資本主義原論』(1997年刊)と、『日本人のための経済原論』(1998年刊)とを合本した新装版が本書です。
◆経済学の真髄をわかりやすく解説
第Ⅰ部の『小室直樹の資本主義原論』は、資本主義が成立する諸々の条件を歴史的に解明しながら、日本経済が抱える致命的な問題点を抽出。
第Ⅱ部の『日本人のための経済原論』では、経済学の真髄を可能な限りわかりやすく解説しています。
特に後者には数学を用いた説明が登場しますが、相互連関図式やグラフを駆使して、直感的に読者が内容を理解できるようになっています。
◆まるで予言しているような指摘が
驚かされるのは、共に20年以上前に発表された著作であるにもかかわらず、今の日本が置かれている経済事情を、まるで予言しているかのように論じています。
たとえば、第1部第7章「腐朽官僚制を無くさずして日本は変わらない」、第Ⅱ部第7章「日本は鵺(ぬえ)経済だ」、第8章「依法官僚制と家産官僚制の矛盾」では、日本経済を資本主義と社会主義が混在した「鵺(ぬえ)経済」と喝破し、官僚制を景気低迷の根源とみなしています。まさに数字の上では好景気と言われますが、今の日本経済の実態を言い当てています。
資本主義の抱える矛盾や課題について経済史の観点から多くのことを教えてくれる本書は、わが国の未来を考える必要に迫られている今、経営者やビジネスパーソン、そして政治を司る人々が熟読すべき内容となっています。