中国は「失われた20年」へ突入した!
評論家やジャーナリストによる、印象に基づいた中国脅威論は間違っている。数字やデータに立脚しないで中国について書かれた本をいくら読んでも、中国の全体像を理解することはできない。しかし中国の発表する統計データは信頼性に欠け、肝心なデータが伏せられていることも多く、実証的な研究をすることが難しい。
本書では、不確実な情報やデータに基づいて的確な判断を行うことができる「システム分析」の手法を用いて中国経済に迫る。そこで明らかになったのは、過去20年間にわたり謳歌してきたバブルが崩壊し、低成長を余儀なくされる「失われた20年」が始まった中国経済の実像であり、貧富の格差が拡大し汚職がはびこるという奇跡の成長の"からくり"である。
普通の開発途上国にすぎない中国の実像を描き出すとともに、日本がとるべき長期的視点に立った対中戦略を示した一冊。
序 章 奇跡の成長とバブル 第1章 急速に少子高齢化する中国 第2章 中国はごく普通の開発途上国 ――投資額が異常に多いいびつな構造 第3章 成長から取り残される農民 第4章 都市住民は豊かになったのか 第5章 中国解剖図 ――奇跡の成長のからくり 第6章 中国共産党と国家 第7章 中国の「失われた20年」が始まった 第8章 日本への影響
川島博之
かわしま・ひろゆき
東京大学大学院農学生命科学研究科准教授.
1953年東京都生まれ.1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得のうえ退学(工学博士).東京大学生産技術研究所助手,農林水産省農業環境技術研究所主任研究官,ロンドン大学客員研究員などを経て,現職.
主な著書に,『世界の食料生産とバイオマスエネルギー』(東京大学出版会,2008年),『「食糧危機」をあおってはいけない』(文藝春秋,2009年),『農民国家 中国の限界』(東洋経済新報社,2010年),『食の歴史と日本人』(東洋経済新報社,2010年),『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版,2011年),『「戦略」決定の方法』(朝日新聞出版,2012年)がある.