WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす

カール・ローズ著/庭田 よう子訳/中野 剛志解説
2023年4月14日 発売
定価 2,640円(税込)
ISBN:9784492444740 / サイズ:四六/並/360

「WOKE」という切り口で、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と裏側を読み解く。
■「WOKE」とは:「WAKE=目を覚ます」という動詞から派生した言葉。公民権運動時代から使われていた言葉だが、近年は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。
■「WOKE CAPITALISM」とは:企業が気候変動対策、銃規制、人種平等、LGBTQなど性的平等実現などに取り組む様子。【「WOKE CAPITALISM」のチャート図】


【「WOKE CAPITALISM」のチャート図】

リベラルな「WOKE CAPITALISM」の実践で企業イメージ&株主価値が向上
⇒翻って保守層は「意識高い系」に反発し、選挙では保守党派に投票
⇒保守党派の伸長は、「WOKE」な企業にとっても実はプラス。むしろ「減税」政策の恩恵を受けチート化。さらなる利益がもたらされる。
⇒この構造が継続し続けることで、社会階層は固定化。民主主義の破壊につながり社会はディストピア化。しかし、企業はどちらに転んでもユートピア化。
⇒繰り返し


近年「WOKE」という言葉がよく使われている。「wake=目を覚ます」という動詞から派生したこの言葉は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。
たとえば、一般消費者向け企業が、気候変動、銃規制、人種平等、LGBTQなど性的平等、性的暴力廃絶などに参加する様子は「Woke Capitalism」と呼ばれる。
Woke Capitalismの実践で成功した企業は「社会正義」に取り組むことで、株主価値向上にも顧客の開拓・維持にもつながる。
一方で、リベラルなWokeの実践は保守層の反動を煽り、その反動による投票行動で政治は企業に優しい保守党に委ねられる。トランプ現象はその象徴だ。あまつさえ伝統的に企業に優しい保守党派により減税にも与れる。「Woke」を糧にしたキャピタリズムというわけだ。
ある意味で企業にとっては無敵である。ただし、社会には深刻な分断がもたらされ固定化し、民主主義が破壊されることにもつながってしまう。
「WOKE」という切り口で、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と裏側を読み解く、オリジナルかつユニークな論考。

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概要

「なんちゃって企業倫理」が民主主義を滅ぼす。「WOKE」視点で現代資本主義の裏側を読み解く、オリジナルかつユニークな論考。

目次

【巻頭解説】偽装された新自由主義(中野剛志)

第1章 ウォーク資本主義に関する問題

第2章 企業ポピュリスト

第3章 ウォークの意味の逆転

第4章 資本主義、ウォークになる

第5章 株主第一主義

第6章 ウォークネスの皮を被った狼

第7章 見た目が良くても環境に良いとは限らない

第8章 CEOアクティビスト

第9章 人種、スポーツ、ウォークネス

第10章 人種的資本主義とウォーク資本主義

第11章 ウォークな企業の最高のあり方

第12章 右手で与える一方で

第13章 ウォーク資本主義から目を覚ます

著者プロフィール

カール・ローズ  【著】
かーる・ろーず

シドニー工科大学組織論教授。主な研究テーマは、企業が市民や市民社会からその行動に対してどのように責任を問われ、また問われるべきかに関すること。この研究は、社会における企業の役割を批判的に問い直し、繁栄を皆で分かち合えるようにすることを目的とする。倫理、政治、経済について、主流派や独立系の新聞に定期的に寄稿している。著者の記事は、『ファスト・カンパニー』、『ビジネス・インサイダー』、『ガーディアン』、『コモン・ドリームズ』、『カンバセーション』などで読むことができる。近著にCEO Society: The Corporate Takeover of Everyday Life(Zed Books, 2018, with Peter Bloom)、Disturbing Business Ethics (Routledge, 2019)がある。著書はこれまで、中国語、オランダ語、ハンガリー語、イタリア語、韓国語、ポーランド語、スペイン語、トルコ語に翻訳されている。

庭田 よう子  【訳】
にわた ようこ

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。主な訳書に、ヤーデン・カッツ『AIと白人至上主義』(左右社)、ダニエル・リー『SS将校のアームチェア』(みすず書房)、ヨラム・ハゾニー『ナショナリズムの美徳』(東洋経済新報社)などがある。

中野 剛志  【解説】
なかの たけし

評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。 2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』 (集英社新書)、『国力論』(以文社)、『富国と強兵ー地政経済学序説』(東洋経済新報社)、『変異する資本主義』(ダイヤモンド社)などがある。