こんな時代だからこそ、伝統と勤勉で、道は開ける。
かつて経営学の泰斗ピーター・ドラッカーは言った。
「トヨタが潰れることはあっても、日本香堂が潰れることはないだろう」。
あるいは、未来学の大御所ダニエル・ベルもまた言った。
「同社は日本文化の伝道師である」。
かくも世界的知性の激賞をほしいままにする日本香堂は、「香り」のトップメーカーである。業績後退に重くのしかかる景気悪化の影が日々濃くなっていくなかで、30%から40%も売上げを伸ばしている超優良企業でもある。
需要が頭打ちになり、価格競争で疲弊し、縮小するばかりの国内市場――。いかにすれば新たな価値を生み出せるのか。成長への道筋が得られるのか。真の意味での価値創造企業、国際企業の姿とはどのようなものなのか。
年間200日を海外で過ごし、自らグローバル市場開拓の陣頭指揮を執りつつ、国内では伝統の美意識にもとづく繊細かつ柔軟なマーケティング戦略を構築するのが、日本香堂代表取締役会長の著者である。彼がたゆまず実践するビジネスマン、経営者としての価値創造の極意、哲学が明かされる。
一読すれば、いかに価値創造が伝統や文化と密接な関わりを持ち、同時に熾烈なグローバル市場環境を味方に付ける鍵がまさしくそこにあるのがわかるはずだ。伝統と文化を中軸としつつイノベーションとマーケティングを両輪として疾駆する日本香堂の企業哲学、成長のための方法論がわかりやすく示される。
巻末ベッツィ・サンダース氏(『サービスが伝説になる時』著者)との当意即妙の対談も一読の価値あり。
序 章 ベトナムは日本香堂の戦略拠点 第1章 香りある心豊かなくらし 第2章 日本香堂成長の軌跡 第3章 よき社風をつくる 第4章 伝統価値をグローバル展開する 第5章 変革の経営哲学 第6章 「アウトサイドイン」経営 第7章 次の日本を創造するベンチャー・マインド 第8章 ISSIMBOWの旗印の下に
小仲正久
こなか まさひさ
㈱日本香堂代表取締役会長.
昭和11年9月、㈱日本香堂創業者長男として東京に生まれる.
昭和34年3月、慶應義塾大学法学部卒業(学生時代はボート部で活躍). 同年4月、 ㈱日本香堂入社.
昭和40年4月、専務取締役就任.
昭和56年10月、代表取締役社長就任.
平成4年6月、代表取締役会長就任,現在に至る.
㈱日本香堂入社以来,伝統の線香を日用品としてポジショニングし,積極的な広告活動とともに量販店チャネルを開拓.線香の顧客価値を高める活動を継続し,「毎日香」「青雲」を線香を代表する全国ブランドにつくりあげる.トップメーカー,グローバル企業として揺るぎない地位を築く.
著書に,『アドベンチャー精神と価値創造経営――革新こそ新たな伝統を生む』(ダイヤモンド社,2004年)がある.