今、日本は深刻な雇用の危機に直面している。
せっかく採用しても短期間で辞めてしまう若者が後を絶たない。しかも最近では、過酷な「ブラック企業」ではなく、待遇も環境も整った「ホワイト企業」で理由不明の離職が目立ち、経営者や人事担当者を困惑させている。
限られた人材をどう活かすか――。
これはもはや経営の技術論ではなく、生存戦略である。
日本企業では「メンバーシップ型」か「ジョブ型か」という議論が多いが、直面する人手不足対策やリテンション(離職抑制)には、社員でありながら半ば自営業のように働く「自営型」が切り札になる。実際に、自分の裁量と工夫で仕事をすることでモチベーションや仕事のやりがいが高まり、それが「離職ゼロ」を現実化しているのだ。
働き方改革も、もはや人事制度をいじったり、スキルアップを図ったりする程度では追いつかないことは明らかである。働き方の仕組みそのものを根本から変え、反転攻勢をかけるべき時がきている。
【目次】
第1章 「ホワイト離職」は何を物語る?
1 恵まれた職場の〝落とし穴〟
2 隠れた承認欲求に注目を
3 今こそ「新・労働の人間化」を
第2章 〝言ったもん負け〟の日本の職場
1 「見かけの勤勉」の背後に視線を!
2 1+1<2の時代
3 共同体型組織からの脱却は不可避
第3章 「自営型社員」という新たな選択肢
1 ジョブ型が普及しない、これだけの理由
2 ジョブ型からイノベーションは生まれない
3 近年ますます加速する「自営型」への移行
4 自営型社員のメリット
5 自営型導入をめぐる不安・課題
第4章 自営型社員先進国に学ぶ①─デンマーク
1 〝いい加減〟の哲学
2 〝フラット〟かつ〝異質〟がイノベーションのカギ
3 ゆるい境界
第5章 自営型社員先進国に学ぶ②─中国・台湾
1 業績連動+裁量権
2 自営型マネジャーと一般社員
3 川上から川下まで
第6章 中小企業の下剋上が始まる
1 アナログ社会の復権
2 期待される「現代の職人」
3 中小企業の環境変化への対応力
第7章 離職ゼロの生存戦略
1 野性を呼び覚ませ!
2 人材版「イノベーションのジレンマ」を解く
3 「革命」は周辺から