ジェ ジェ ジェ ジェンガ♪
「当たり前すぎる」を世界ブランドへ。
アフリカ生まれの女性起業家が、生み育てたゲームの物語。
失敗、失敗、失敗……大成功!!
――ジェンガはなぜ、世界で2番目に売れているゲームなのか!?
ジェンガというあのおもちゃにとって、2013年が誕生から30周年の年にあたると聞けば、意外な話にも感じる。
もっと大昔からあってもおかしくないような気がするし、あの単純な遊びの「誕生」の瞬間というのもなかなか想像ができない。
ジェンガには、「精巧な翡翠のかけらで中国人がこの遊びをしていたのが起源である」だとか、「何世代にもわたってガーナ人が遊んできたアフリカ発の遊びである」だとか、そんな都市伝説さえあったのだ。
この本はそんな嘘の歴史を容赦なく退ける。
1983年のロンドンでJENGAが新製品としての産声を上げるまでの「開発秘話」。
そして血で血を洗う弱肉強食のおもちゃ市場をジェンガが生き残り、この世界で「2番目に売れているゲーム」となるまでの驚異の過程。
ゲームそのものの新規性の確立から、「ネーミング」の決定的な力、マーケティングの方法に、流通網の確保、強力なブランド構築とアートの関係、科学・金融・テレビ・芸術へと分野をまたいだ影響力をこのおもちゃが持つに至った理由。
ジェンガというメガヒット商品とその周りを、縦横無尽に語りつくす。
驚くべきは、ジェンガというゲームを「生み出した人」とジェンガという製品を「世界に展開する道を開いた人」が、同一人物であるということかもしれない。
ゲーム・デザイナー、起業家という肩書きに加え、この本の出版で作家としてのデビューまで果たした英国人女性、レスリー・スコット……そう聞くと、どんな完全無欠のスーパーウーマンが現れるかと思いきや、彼女はどこにでもいそうな「普通」の人。
陽気でおおらか、破天荒の気配を漂わせつつも、特段の才能の持ち合わせは、ない。
大学は中退、上手くいっていた高給の仕事を辞めたと思ったら、事業の失敗で母親の家まで手放す羽目になり、共同でビジネスを立ち上げた仲間との友情には亀裂……。あらゆる危険を背負い込んで、崩れるたびにワッと叫ぶ。でも、それでも懲りずにまた積み上げることから始め続ける様子は、まるでジェンガじみた日々だ。
いつだって、根拠はなくとも自信満々。暗中模索、失敗だらけ。
バリキャリスーパーウーマンには程遠い姿も窺えるが、成功者が真っ先に割愛してしまいそうな失敗談までを、率直に盛り込んだ彼女の語りにこそ、ビジネスライフへのヒントと、しがらみの中で不自由ながらも働かないわけにいかない、そんな私たち自身の共感は喚起される。
「こんな不器用なサクセスストーリーなんて……最高!」
驚異の実現、そしてその過程で起こった失敗や大失敗を含めた、まさにこれがリアルなのである。