2012 年版発行にあたって
国際財務報告基準(IFRS)の利用が世界的に広まるなか、アメリカの会計基準設定主体である財務会計基準審議会(FASB)と国際会計基準審議会(IASB)は、より質の高い会計基準の策定を目指して協力関係を深めており、2006 年2 月に公表し、その後アップデートされた覚書(Memorandum ofUnderstanding)に基づき、両者の基準のコンバージェンスを進めている。コンバージェンスの結果、この1年でFASBは公正価値や包括利益計算書に関する基準を改訂している。
その一方で、米国証券取引委員会(SEC)は、2011年5月にスタッフペーパー「米国の発行企業(注:「SEC登録企業」と同義)の財務報告制度への国際財務報告基準の組込みに関する検討のためのワーク・プラン-考えられる組込方法の探究(Work Plan for the Consideration of Incorporating International Financial Reporting Standards into the Financial Reporting System for U.S.Issuers - Exploring a Possible Method of Incorporation)」を公表し、IFRSをアメリカの財務報告システムにどのように取り込むかに関する一つの案を提示している。SECは、アメリカの株式公開市場におけるIFRSの採用について2011 年を目途に判断するとしており、今後の動向が注目されている。
日本においても、日本におけるIFRS採用の動向や、日本の会計基準のIFRSへのコンバージェンスの議論などに関連して、アメリカの会計基準の動きが直接的にまたは間接的に日本の会計基準に影響を与えており、その動向には多くの関心が寄せられている。こうした環境下にあって、アメリカの会計基準の動向を理解することは、今後のIFRSおよび日本の会計基準の動向を見極めるうえでも重要であり、直接アメリカの会計基準を適用している企業の経理・財務担当者はもとより、IFRSの導入準備を進めている企業の関係者や日本基準の将来動向に関心を持つ方々にとっても有益であると思われる。
本書は、2011年6月までに公表されたアメリカの会計基準を対象として取扱っており、本書を執筆するにあたっては、以下の点に重点を置いている。本書が読者各位の業務や学業のお役に立てれば幸甚である。
1.実例を豊富に取り入れ、また、説明をできるだけ平易に行い、職業会計人、企業の経理担当者はもちろんのこと、一般ビジネスマン、学生等にも容易に理解できる内容にした。
2.アメリカの会計基準の主たる項目を網羅的に取入れる一方、各項目の会計処理および開示内容については、そのポイントを短時間で理解できるようにした。
3.適宜、会計基準等の原文を参照しやすいよう、主な会計基準等の関連パラグラフを記載した。
4.実務に役立つように、可能な限り充実した解説を加えた。
5.アメリカの会計基準の説明に加え、適宜、日本の会計基準およびIFRSとの比較を織り込んだ。
第1章 最近のトピックス 第2章 アメリカの会計原則 第3章 連結決算と持分方 第4章 公正価値の測定 第5章 金融商品 第6章 外貨関連事項 第7章 非貨幣取引 第8章 収益の認識 第9章 棚卸資産 第10章 リース会計 第11章 利子費用の資産化 第12章 資産除去債務 第13章 減損会計 第14章 研究開発費 第15章 ソフトウェア 第16章 企業結合 第17章 退職その他の従業員給付 第18章 株式報酬 第19章 その他債務(偶発損失、リストラ関連費用および 環境関連債務) 第20章 資本会計 第21章 包括利益 第22章 税効果会計 第23章 会計上の変更および誤謬の訂正 第24章 異常項目 第25章 1株当たり利益 第26章 キャッシュ・フロー計算書 第27章 セグメント情報 第28章 関連当事者との取引 第29章 中間財務報告 第30章 アメリカ基準に基づく連結財務諸表の実例および ASCのリスト
あらた監査法人
あらた監査法人は、卓越したプロフェッショナルサービスとして監査を提供することをミッションとし、世界最大級の会計事務所であるPwCの手法と実務を、わが国の市場環境に適した形で提供している。さらに、国際財務報告基準(IFRS)の導入、財務報告に係る内部統制、また株式公開に関する助言等、幅広い分野でクライアントを支援している。
PwC Japan
プライスウォーターハウスクーパース ジャパン
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