ナショナリズムの美徳

ヨラム・ハゾニー著/中野 剛志解説/施 光恒解説/庭田 よう子訳
2021年3月26日 発売
定価 2,860円(税込)
ISBN:9784492444603 / サイズ:四六/上/328

トランプ政権の外交基盤となり、アメリカ保守主義再編や欧州ポピュリズムに大きな影響を与えた問題作!

自由と民主主義を守るのは国民国家であるとして、誤解されがちなナショナリズムの価値観を問い直していく。
その一方で、リベラリズムのパラダイムは、専制や帝国主義と同じだと警鐘を鳴らす。
ナショナリズムと国民国家400年の歴史を再評価する括目に値する1冊。
中野剛志、施光恒の両氏によるダブル解説付。


<「解説」より>
★政治秩序とは、本質的に、非リベラルなのである。しかし、すべてのリベラルな統治形態は、非リベラルな政治秩序を基礎としている。そして、そのリベラルな統治形態を成立させる非リベラルな政治秩序こそ、ハゾニーが擁護する「国民国家」にほかならない。ーーーーーー中野剛志氏(評論家)

★本書の意義は数多くある。欧米の新しい保守主義を理解するのに資するであろうし、先進各国で進む国民の分断現象を考察する際にも有益な視角を与える。とくに指摘したいのは、本書の議論が、現行のグローバル化の問題点を認識し、それを克服しうる「ポスト・グローバル化」(グローバル化以後)の世界の在り方を考えるうえで必要な認識の枠組みを与えるという点だ。-----施 光恒氏(政治学者)


<本書の特徴>
◎「無政府状態」と「帝国主義」を両極に置き、その中間的なものとして「国民国家」を置いている。
◎無政府状態と帝国主義との比較で、国民国家がもっとも、個人の自由や多様性を擁護し、発展させることができる政治体制であるとしている。
◎文化や起源、宗教を共有しているという連帯意識があってはじめて、近代的な自由民主主義の政治制度や市場経済も機能させられるとしている。
◎「リベラリズムは自由な秩序をつくるどころか帝国主義に近い」とはっきり述べている。
◎「トランプ以後」の米国保守主義勢力が目指している姿。

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概要

自由と民主主義を破壊したのはリベラリズムだった!トランプ外交、アメリカ保守再編や欧州ポピュリズムに大きな影響を与えた問題作。

目次

[巻頭解説]不寛容な「リベラリズム」、多様性を尊重する「国民国家」(中野剛志)

序 章 ナショナリズムへの回帰

【第1部 ナショナリズムと西洋の自由】

第1章 世界秩序の2つのビジョン

第2章 ローマ教会と帝国としてのビジョン

第3章 西洋のプロテスタント構造  

第4章 ジョン・ロックとリベラル構造

第5章 不信を抱かれたナショナリズム

第6章 帝国主義としてのリベラリズム

第7章 リベラリズムに対するナショナリストからの提案

【第2部 国民国家とは何か】

第8章 政治哲学の2つのタイプ

第9章 政治秩序の基盤

第10章 国家はどのように生まれたのか?

第11章 事業と家族

第12章 帝国と無政府状態

第13章 秩序原則としてのネイションの自由

第14章 国民国家の利点

第15章 連邦という解決策の虚構

第16章 中立国という虚構

第17章 ネイションの独立の権利?

第18章 国民国家からなる秩序の諸原則

【第3部 反ナショナリズムと憎悪】

第19章 憎悪はナショナリズムへの反論か?

第20章 イスラエルに対する誹謗中傷活動

第21章 イマヌエル・カントと反ナショナリズムのパラダイム

第22章 アウシュヴィッツの2つの教訓

第23章 第三世界とイスラムの非道な行為が見過ごされているのはなぜか?

第24章 イギリス、アメリカ、その他気の毒なネイション

第25章 帝国主義者はなぜ憎むのか

終 章 ナショナリズムの美徳

[巻末解説]グローバリズムを乗り越えるための必読書(施 光恒)

著者プロフィール

ヨラム・ハゾニー  【著】
よらむ・はぞにー

イスラエルの哲学者、聖書研究家、政治理論学者。エルサレムのヘルツル研究所所長。公共問題研究所のエドマンド・バーク財団会長。研究機関シャレムセンター創設者。『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ニューヨーク・タイムズ』『ニュー・リパブリック』などに寄稿多数。著作に、The Jewish State: The Struggle for Israel’s Soul(『ユダヤ人国家─イスラエルの魂を求めて』)、The Philosophy of Hebrew Scripture(『ヘブライ語聖書の理念』)などがある(いずれも未邦訳)。エルサレム在住。

中野 剛志  【解説】
なかの たけし

評論家。1971 年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996 年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。 2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』『世界を戦争に導くグローバリズム』(ともに集英社新書)、『国力論』(以文社)、『富国と強兵─地政経済学序説』(東洋経済新報社)、『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ともにベストセラーズ)などがある。

施 光恒  【解説】
せ てるひさ

政治学者、九州大学大学院比較社会文化研究院教授。1971 年、福岡県生まれ。英国シェフィールド大学大学院政治学研究科哲学修士(M.Phil.)課程修了。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。著書に、『リベラリズムの再生』(慶應義塾大学出版会)、『英語化は愚民化 』(集英社新書)、『本当に日本人は流されやすいのか』(角川新書)などがある。

庭田 よう子  【訳】
にわた ようこ

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。主な訳書に、ファン・デル・クナープ編『映画『夜と霧』とホロコースト』(みすず書房)、ゲーノ『避けられたかもしれない戦争』(東洋経済新報社)、ストームほか『イスラム過激派二重スパイ』(亜紀書房)などがある。