週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年2月22日号
2020年2月17日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】船・港 海の経済学

新型肺炎のために乗客・乗員が下船できない大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。世界の注目が集まりましたが、そもそもクルーズ船とはどのようなものなのか。急成長するクルーズ観光の可能性とリスクを緊急分析しました。
ほかにも「船・港」の周辺には難題が山積しています。環境規制強化によって日本の海運会社は大きな投資を求められています。中韓に敗れた日本の造船業界はさらなる再編に追い込まれそうです。日本の港湾の競争力低下も止まりません。本特集では「海をめぐるグローバル競争」の最前線を多面的に掘り下げました。
 

【第2特集】CSR企業ランキング2020年版


CSR(企業の社会的責任)と財務の両データで作成する東洋経済版CSR企業ランキング。14回目の今回はトップ3を通信会社が独占し、KDDIが初のトップに。2位はNTTドコモ、3位は日本電信電話。以下、上位300位まで収録しています。
 

担当記者より

取材で訪れた名古屋港に巨大な船が着岸していました。聞けば、世界最大のコンテナ船の長さは約400mとのこと。日頃、鉄道の取材を中心に行っている私は、東京駅の新幹線ホームの端から端までがだいたいそのくらいの距離だと思い当たりました。つまり、新幹線1本分です。そんな大きなものが世界の海上を行き来しているのかとにわかには信じられませんでした。

コンテナ船の巨大化は、ここ10年ほどの間に急激に進んだそうです。業界では、コンテナ船の積載量を表す単位として「20フィートコンテナ1個分=1TEU」が使われていますが、2005~06年に1万TEUを超える積載量のコンテナ船が現れたと思ったら、現在は2万3000TEUを超えるまでになっているとのこと。実に2倍以上です。

船が大きくなれば、1隻当たりの投資額も大きくなります。それでも、たとえばアジア・欧州間を1周するには約77日かかるとされているので、週に1便運航しようとしても11隻の船が必要になる。世界各地に航路を展開しつつ、これを1社で賄おうとするのは大変なことです。そこで進んだのが、ほかの船社と組んで運航しようというアライアンスの動きでした。

現在、世界のコンテナ船業界は、3つのアライアンスに集約され、共同運航などを行っています。が、この3アライアンス体制に落ち着くまでの業界はまさに戦国時代。規模を争って合従連衡が相次ぎ、戦いから脱落し経営破綻する会社も現れたのですが、その戦乱の時代については誌面に詳述しています。

読者のみなさんの多くは「船」について意識する機会はあまりないと思いますが、日本の貿易に占める海上貨物の割合は99.6%。実は私たちの生活に密接かかわっているのです。『週刊東洋経済』としても初めて取り上げる「船・港 海の経済学」特集をぜひお手に取ってお読みください。

担当記者:小佐野 景寿(おさの かげとし)
東洋経済記者。1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
ニッポンの生命線が危ない
船・港 海の経済学


[ 図解 ]海運と港湾をめぐる大激変

Part1 クルーズ船
コロナ直撃、ブームの行方
現役世代の支持集めるクルーズベンチャー
プロがイチ押し「お薦めクルーズ
高まる人気の陰で休止航路も 国内フェリーは激動の時代へ
世界の港を買いまくる中国 根底に「マラッカ・ジレンマ」

Part2 海運 
脱炭素化で船舶が大激変
海運大手3社の業績 コンテナ事業が急改善
群雄割拠から「天下三分」へ コンテナ船業界の戦国史
「鉄道やトラックも活用する」 ONE CEO ジェレミー・ニクソン
海運大手3社トップに直撃
「環境分野でトップランナーに」 日本郵船社長 長澤仁志
「LNGビジネスで低炭素化をリード」 商船三井社長 池田潤一郎
「今期黒字転換。風力、水素で先鞭」 川崎汽船社長 明珍幸一

Part3 港湾
世界の港は規模の時代に
IT化で存在感増す名古屋港 東京・横浜の一体運営は幻に
「港は自動化なんかしてもしょうがない」 藤木企業会長 藤木幸夫
巨大船導く港のスター 船長よりも偉い「水先人」とは?
連夜の説明会で市長に罵声 混迷極める「横浜カジノ」

Part4 造船
中韓に敗退、業界再編へ
世界最大級の鉱石運搬船が竣工
レンタルやシェアリングも選択肢増えるクルーザー
洋上風力発電で「作業船」に脚光

第2特集
信頼される会社
CSR企業ランキング 2020年版
SDGsの進化はCSRのハードルを上げていく

スペシャルリポート
日本の経常収支に構造変化 10年後には赤字化も?

ニュース最前線
新型肺炎の「致死率」 武漢だけ突出する理由
告発者の死に中国世論は沸騰 ほころぶ「習近平一極」体制
DeNAが巨額赤字に転落 見えてこない反転戦略
加速する「選択と集中」 日立が目指す再編最終章


連載
経済を見る眼|やめるのも選択肢、「廃業」のすすめ|佐藤主光
ニュースの核心|ある財閥オーナーの死と韓国企業の現在|福田恵介
『会社四季報』ルーキー登場|HENNGE
トップに直撃|セブン銀行社長 舟竹泰昭
フォーカス政治|後継候補も野党も無力化 「安倍1強」暴走の重い代償|塩田 潮
グローバル・アイ|パナソニックで芽生える社内起業離脱を喜ぶ英国の「視野狭窄」
INSIDE USA|トランプvs.カリフォルニア 米大統領選、もう1つの舞台|瀧口範子
中国動態|新型肺炎で注目集めた軍病院 軍改革で民間サービス縮小中|小原凡司
マネー潮流|投機の円買い、実需の円売り|佐々木 融
少数異見|日本は人権三流国? 注視の日中首脳会談
知の技法 出世の作法|仕事に活用できるメモの技法③|佐藤 優
経済学者が読み解く現代社会のリアル|金融リテラシーの向上 プラスの影響だけ?|森 知晴
人が集まる街 逃げる街|下田市(静岡県) 新型特急が変えるアクセス|牧野知弘
クラシック音楽最新事情|アシュケナージ引退 その去り際の美学|田中 泰
話題の本|『日本の品種はすごい』著者 竹下大学氏に聞く ほか
「英語雑談力」入門|the point of no return (後に引けない段階)|柴田真一
経済クロスワード|船・港湾・造船
編集部から|
読者の手紙 次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2020年2月22日号」(2月17日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
83ページ ■NSユナイテッド海運 船長の氏名

【誤】仲村和宏氏
 ↓ 
【正】仲本和宏氏