週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年3月14日号
2020年3月9日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201320301

【特集】マンションの罠

価格は高騰しているのに品質はよくない……今、そんな新築マンションが増加しています。中古であっても、管理不全の物件が数多く出回っています。思わぬ「罠」にはまらないためには、消費者が情報武装をする必要があります。
しかし、デベロッパーが作成するパンフレットや無料雑誌を見ても売り手にとって都合の悪いことはいっさい書いてありません。そこで本誌の出番。本特集では、売り手にとって都合の悪い情報も、すべて隠さず伝授します。
 

【スペシャルインタビュー】SBIホールディングス社長 北尾吉孝


「金融業界は再編の嵐が吹き荒れる」。年頭に北尾吉孝SBIホールディングス社長がブログで語った言葉は宣戦布告だったのでしょうか。注目人物の胸中を探りました。「これから3年」で決着するとされた再編の行方が注目されます。

担当記者より

情報洪水、という表現がぴったりでしょう。都市部にいると世の中はマンション情報であふれています。

駅のラックには無料の住宅情報誌が差し込まれ、ネットを調べれば星の数ほど記事が出る。ただ、残念ながら、そのほとんどは「広告」です。一見公平中立を謳っていても、実際は売り主であるデベロッパーからお金をもらっていることがほとんど。これではマンションの強みは分かっても、弱みが表に出てくることはありません。

そこで考えたのが、営業の最前線であるモデルルームをひたすら巡り、物件を自分の目で確かめ、現場の生の声を拾い、マンションの本当の姿を確かめることでした。

ただし、営業担当者もわざわざ時間を割いているのですから、こちらも冷やかしではいけません。惚れたマンションがあれば本当に買えるよう準備を整えて、真剣勝負でモデルルームを訪問しました。

驚いたのは、価格が上昇しているにもかかわらず、仕様はグレードダウンしていること。外観デザインが賃貸マンションのようにチープだったり、超高級物件のトイレがタンク式だったり。部屋の面積もどんどん狭くなり、ろくに収納もありません。モノによっては5年、10年前に建った中古の方が優れているくらいです。

こんな状況ですから、もどかしい思いをしているのは買う側だけではありません。あるモデルルームでは、営業担当の男性がためらいがちにぽつり。「建築費が高く、そのままの仕様では販売価格も高くなってしまいます。ですから、仕様は多少落とさざるを得ません」。売る側も質が落ちていることを理解しつつ、お客に薦めなければならないのです。

今がマンションの買い時かと聞かれれば、そうではないかもしれません。それでも、家賃がもったいない、資産を持ちたいなどの理由から今持ち家が欲しい人もいるでしょう。ならばせめて、質の低いマンションを掴まされないよう、買う側もあらかじめ目利き力を養っておかなければいけません。そこで企画したのが今回の特集です。マンション開発・販売の実情を丸裸にしてやろう――。売り手と買い手の間に横たわる情報の非対称性を埋めるべく、徹底取材しました。

マンション特集はさまざまなメディアが取り上げていることもあり、みなさんにとっては目新しいものではないのかもしれません。が、今回の特集にはここでしか読めない情報が満載です。ぜひともお読みいただければ幸いです。

担当記者:一井 純(いちい じゅん)
東洋経済記者。不動産業界担当。
ビル、マンション、商業施設、物流施設、証券化、再開発など。趣味は写真と業務スーパー訪問。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
デベロッパーの売り方、全部バラす! マンションの罠

[ 図解 ]様変わりした分譲マンション市場 なぜこんなに高いのか
減り続けるマンションの青田売り

Part1 7つの購入チェックポイント
広さ:部屋はどこまで狭くなる? 変わる「自宅」の役割
広告:間取り図でここまでわかる 部屋が抱える「不都合な真実」
設備:高級?コストカット? 設備・仕様チェックポイント
モデルルーム :「マンションの達人」が伝授 見るべきポイントはここ!
価格:市況高騰でも諦めない 価格の「歪み」はこう探す
立地:郊外マンションの現実 商業施設に近いかが肝心
ご意見番に聞く、マンションの選び方
 スタイルアクト代表取締役 沖 有人 トータルブレイン副社長 杉原禎之
管理:進む管理状況の「点数化」 管理を買う時代が来る
「管理はボランティアではない」 マンション管理業協会理事長 岡本 潮
新築より売れる中古 後悔しない買い方とは
中古マンション 業界DEEP事情
 ヴィンテージマンションの正体/「地権者住戸」にご用心

Part2 セールストークの本音
急増するコンパクト住戸 その価値は本物か
パワービルダー系が挑む 経済性重視のマンション
「大手との『価格差』が最大の武器」 アーネストワン執行役員 マンション事業部長 片山剛志
豪雨への対応急務だが追加コストの負担見えず
不正利用問題の発覚で住宅ローンを借りづらくなるケースも
住宅ローンの繰り上げ返済は損?
マンション 値上がり値下がりランキング
 東京都/神奈川・千葉・埼玉/10年前比/タワマン/大規模物件/20階建て未満/駅徒歩11分以上/駅別

[インタビュー]デベロッパーに直撃
三井不動産レジデンシャル
「世田谷区と足立区の坪単価が同じになった」
野村不動産
「じっくり売る方式へ変更 均等積立への移行は課題」
住友不動産
「マンションは売り急がない 竣工後こそ真価が問われる」
三菱地所レジデンス
「価格と品質の両立が課題 過度な経済性は追わない」
東京建物 
「高額物件でも販売堅調 『田の字』脱却は勇気要る」

スペシャルリポート
中国では新車販売9割減 「新型コロナ不況」の深刻度
[ 国内消費 ]外国人蒸発、国内客も急減 小売り各社は軒並み悲鳴
[マクロ経済]株価2万円割れのリスク 過度な萎縮の回避が必要に

スペシャルインタビュー
SBIホールディングス社長 北尾吉孝
「吹き荒れる再編の嵐 その中心はSBIだ」

ニュース最前線
楽天携帯新料金で猛追 激安プランが抱える制約
企業説明会が相次ぎ中止 前例なき就活戦線の実情
TOB阻止狙い徹底抗戦 前田道路が出した「奇策」


連載
経済を見る眼|予測できない未来への対応力|苅谷剛彦
ニュースの核心|金高騰に凝縮された異常な市場心理の実体|中村 稔
『会社四季報』ルーキー登場|恵和
トップに直撃|大幸薬品社長 柴田 高
フォーカス政治|命懸けた官僚の抗議も無視 安倍政権は「腐臭を放つ鯛」|千田景明
グローバル・アイ|未来を先取りする”クールな韓国”リビア内戦は中東の縮図
INSIDE USA|バイデン氏 想定外の善戦 民主党の指名争いなお混沌|肥田美佐子
中国動態|防疫と経済復興を同時に進行 中国は「人民戦争」勝利に自信|富坂 聰
マネー潮流|ウイルス問題で露呈した薄ら寒い事実|森田長太郎
少数異見|本物の天才を活かせない社会の悲劇
知の技法 出世の作法|コロナウイルス騒動に隠れたイラン国会議員選挙の結果|佐藤 優
経済学者が読み解く現代社会のリアル|高まるESG投資の機運 日本はどう向き合うか|竹内純子
人が集まる街 逃げる街|長崎市(長崎県) 歴史ある港町 再生への道は|牧野知弘
クラシック音楽最新事情|コロナショック直撃 激震が走るクラシック界|田中 泰
話題の本|『クラシックへの挑戦状』著者 大友直人氏に聞く ほか
「英語雑談力」入門|game-changer (変革を起こす人・もの)|柴田真一
ゴルフざんまい|日本女子ゴルフをアジアへ、世界へ|小林浩美
経済クロスワード|マンション
編集部から|
読者の手紙 次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2020年3月14日号」(3月9日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
26ページ ■中国では新車販売9割減、「新型コロナ不況」の深刻度の記事中

小見出し
【誤】パナはPC販売中止
【正】パナはPC在庫切れ

本文
【誤】販売を中止している
【正】一部製品で在庫切れが起きている