週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年4月4日号
2020年3月30日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】変わる民法&労働法

4月1日に施行される改正民法では、債権法が大きく変わるほか、金融や保険ビジネスに影響を与える法定利率の変更、産業全般に関わる消滅時効の統一など、重要な改正点が多い。本特集では、ビジネスパーソンなら知っておきたいポイントを徹底解説する。
さらに、国民的な関心を集める改正相続法のほか、企業活動や私たちの日々の働き方に直結する労働法についても、わかりやすくまとめている。
 

【総力特集】激震! コロナ危機 土壇場の世界経済

欧米での爆発的な感染拡大により、リーマンショック以上の経済悪化が濃厚です。「自宅待機令」下の米国現地ルポに各国の政策対応、トヨタも国内工場停止に至った自動車産業、ほぼ半値になったREIT市場など徹底取材。

担当記者より

この4月から、正規社員と非正規社員の不合理な待遇差を禁じる「同一労働、同一賃金」ルールが施行されますが、私の担当する物流業界でもこの問題が大きく取り上げられています。ECの普及によって急増している宅配便需要を支えているのは、物流業界で働く数多くの非正規社員です。2月中旬には、日本郵便の非正規社員が、東京地裁に正社員との待遇差改善を求めて集団提訴しました。日本郵便の場合、全従業員の約半分が非正規社員です。

ところが、この訴訟が単なる「非正規による待遇改善の訴え」ではないことを、私は取材して初めて知りました。そこには、同じ志をもって活動する数多くの正規社員の姿があったのです。

実は日本郵便は、正規と非正規の「待遇差を埋める」という名目の下、正規社員の手当等も削減していました。たとえば、年始手当を非正規社員にも支給する一方で、年末手当は正規社員も廃止。一部の正規社員に支給していた住居手当も廃止され、扶養手当は半額に削減される予定です。

ただ、さらに丹念に取材を進めるうちに、会社としてもどうしようもない事情があることがわかってきました。人手不足の影響から、高騰が続く人件費。物量は増える一方なのに、実は物流運賃は昭和時代の水準から大きく変わっていないという背景もあります。そんな構造問題を考えながら帰宅したある日、自宅の郵便受けには1通の「不在通知」が…。

私の自宅への再配達のために、配達員の労働を無駄に増やしてしまったことに罪悪感をおぼえました。さらには「配送料無料」が当たり前だと思っている数多くの利用者の存在が、物流企業のコストを圧迫しているのも事実。個人のごく身近な意識が、この難しい問題を引き起こす一因になっていることをあらためて感じたのでした。

 

担当記者:佃 陸生(つくだ りくお)
東洋経済記者。物流業界担当。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。趣味は読書、音楽鑑賞、映画鑑賞など。SF小説とパンクロックがとくに好き。好きなアーティストはBad Religion、NOFX、Anti-Flagなど。

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週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

週刊東洋経済の編集方針

  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
  2. 分析力
    複雑な情報やビジネス慣習、制度変化などを分析し、的確に整理。表層的事象をなぞるのではなく、経済や社会の底流で起きている構造を読み解く
  3. 中立性
    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

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視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
「知らない」では済まされない! 変わる民法&労働法

ビジネスと生活を変えるポイントはここだ!

Part1
民法 仕事の新ルール 債権法改正に対応せよ
売買 契約不適合責任へ変更 柔軟な解決策が可能に
免責特約はどうなる? 「知りながら…」はダメ
定型約款 個別の同意を不要に ユーザーの認識が焦点に
売買・請負 IT業界の請負どうなる!? 案件の実情に応じ契約を
「短期消滅時効」の廃止 債権回収5年で統一 時効変更で得する業種も
賃金債権の消滅時効 当面は「3年」へ延長
法定利率 当面は3%に 事故の損害賠償額に影響
保証(賃貸借) 貸主は入念に確認しよう 保証の上限額設定が必須に
保証(事業用融資) 個人保証人を保護 債務者情報の提供義務化
[相続 配偶者居住権] 死ぬまで自宅に住める 2次相続時に節税のメリットも
[相続 遺言書保管] 法務局で保管可能も安心は禁物 自筆証書遺言に潜むリスク

Part2 労働法 働き方改革の一環で雇用ルールが変更に
同一労働同一賃金 不合理な待遇差は禁止 非正規の待遇改善を援護
[同一労働同一賃金 Q&A] ゼロからおさらい 不合理な待遇差解消策
時間外労働の上限規制 大企業に続き中小も導入 なお高い「残業抑制の壁」
[テレワーク]新型コロナ予防で急拡大 間違わない導入の秘訣5

第2特集
デジタル化で進む“下克上” 広告大乱戦
広告氾濫時代の成功者 お客はアプリで捕まえる
「広告ではなく“体験”を考える」 アクセンチュア執行役員 インタラクティブ本部統括本部長 黒川順一郎
クッキーが使えない! 「狙い撃ち広告」の曲がり角

総力特集
土壇場の世界経済 激震!コロナ危機
「グローバル化のリスクと金融経済の肥大化が露呈」 日本総合研究所会長 寺島実郎
[LA現地ルポ] 銃を求める人たちも コロナパニックの壮絶
「感染症対策は素人には無理 “日本版CDC”が必要だ」 米CDC元客員研究員 加藤茂孝
[自動車] 中国に加えて欧米市場も崩壊 トヨタさえも崖っぷち
[ソフトバンクグループ] 株価急落で破格の資産売却
[REIT、不動産] 物件開発の資金回収に暗雲

スペシャルインタビュー
前松本市長 菅谷 昭「被害者に生かされないチェルノブイリ事故の教訓」

ニュース最前線
コロナの感染対策は長期戦 「自粛継続」に専門家の葛藤
5G時代が静かにスタート 通信大手の乏しい差別化
常識破りの「2枚看板店」 ワークマンの大胆な挑戦


連載
経済を見る眼|拡充すべき「居住の安定」政策|藤森克彦
ニュースの核心|新型コロナが招くEU瓦解の危機|大崎明子
『会社四季報』ルーキー登場|SREホールディングス
トップに直撃|マネジメントソリューションズ社長 高橋信也
マネー潮流|株価下落より深刻な原油価格暴落|高井裕之
フォーカス政治|「ポスト安倍」で思惑呼ぶ 首相と菅長官の「隙間風」|歳川隆雄
グローバル・アイ|コロナ発の債務危機に先手を打てバイデン氏復活も残るサンダース氏の影
INSIDE USA|新型コロナ感染者の急増でトランプ再選シナリオは一変|渡部恒雄
中国動態|供給と需要のダブルショック 八方ふさがりの中国経済|梶谷 懐
少数異見|自家用車のサブスクが加速させる自動車離れ
知の技法 出世の作法|ロシア対外情報庁トップが日本に送ったシグナル|佐藤 優
経済学者が読み解く現代社会のリアル|ウイルスに冒される世界金融市場の危機|米倉 茂、中北 徹
人が集まる街 逃げる街|前橋市(群馬県) 水と緑あふれる新しい街へ|牧野知弘
クラシック音楽最新事情|傑作『ポーギーとベス』 30年ぶりのMET上演|田中 泰
話題の本|『裁判官も人である』著者 岩瀬達哉氏に聞く ほか
「英語雑談力」入門|accommodate( 適応する/応える/収容する)|柴田真一
経済クロスワード|民法
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  • 10/20(月) 週刊東洋経済 2025年10月25日号