週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年6月20日号
2020年6月15日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】電機の試練

エレクトロニクス業界が軒並み赤字になったリーマンショックから12年が経過しました。業界の中には、ソニー、日立製作所のように得意分野を明確にして復活した企業がある一方、パナソニック、東芝のように改革途上にある企業もあります。

そこに襲いかかったコロナショック。目の前の需要が一気に蒸発したことで、多くの企業が業績を悪化させました。しかし、詳しく見ていくと、その影響はさまざま。早くもコロナショックを克服し、飛躍を見せている企業もあります。

本特集では、最新の2020年3月期決算を基に、電機各社の課題と戦略を分析しました。電機メーカーに勤める関係者だけでなく、投資家、就活生にとっても必読の特集です。

 

【巻頭リポート】米国「分断危機」の深層 止まらない抗議デモ


5月25日、ミネアポリス市で白人警官が黒人男性を暴行し死なせる事件が発生。この事件を端緒とした全米での抗議デモと暴動が収まりません。「経済格差」に「感染格差」。人種間の分断は拡大しており、大統領選にも大きな影響を与えることになりそうです。

担当記者より

テレビはシャープ、冷蔵庫もシャープで洗濯機は日立、電子レンジが東芝で、食器洗浄機はパナソニック。10年ほど前に買いそろえたわが家の家電ラインナップです。私たち日本人にとって馴染みあるこれらの家電メーカーですが、実はいまやほとんど「家電メーカー」ではないことをご存知ですか。

たとえば、日立製作所は今やIoT基盤を軸とした社会インフラの会社です。ソニーだってかつての稼ぎ頭だったオーディオやテレビの売上高は全社の1/4程度に過ぎず、それよりも映画などのコンテンツと半導体が屋台骨です。

業界全体が軒並み赤字となったリーマンショックから10余年、各社はその間「脱家電」への道を模索し続けてきました。その裏には、大量のリストラがあったことも事実です。三洋電機のように会社自体がなくなってしまった例もあります。数十年前に有名大手メーカーに就職し、これで安泰とばかりに意気揚々と社会人人生を歩み始めた人たちも、まさかこんな状況になるとは思ってもみなかったはずです。

今回のコロナで、各社とも「脱家電」の流れはいよいよ決定的となるでしょう。日本から家電を作って売るメーカーがなくなってしまうかもしれません。それは遠い先の話ではないはずです。わが家の家電を次に買い替えるタイミングには、選択肢がガラリと変わっている可能性もあるのです。

とはいえ、まだまだ私たちの生活を支える家電業界。iPhoneや中国製が台頭し日本メーカーの影はすっかり薄くなってしまったスマホも、カメラに使われているセンサーはほとんどがソニー製。鉄道に乗ればそこには東芝や日立、三菱電機のシステムが使われています。

この特集では、直面するコロナ禍に各社がどう立ち向かうのかを徹底的に分析しました。そして各社はどのような会社を目指しているのかを考えました。家電業界の10年後の姿を探るヒントをご提供できればと思います。

担当記者:高橋 玲央(たかはし れお)
東洋経済記者。名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。半導体、電子部品などを担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
電機の試練

12年で激変した収益体質 電機8社の財務指標をチェック

Part1  揺れる名門
構造改革はいつ終わるのか 視界不良のパナソニック
見つめていたのは「人」 振り返るべき山下改革の神髄
薄れた鴻海マジック シャープ「再成長」の茨道
半導体の収益が改善せず 東芝「車谷改革」の憂鬱
[INTERVIEW]東芝 社長兼CEO 車谷暢昭 「市場混乱の今こそ M&Aのチャンスだ」
合従連衡がたどる茨の道 もがき続けるJDIとルネサス

Part2 改革は進むか
記憶によみがえる過去の失敗 ソニーの不安はPS5
[INTERVIEW]ソニー 副社長 勝本 徹 「金融やエンタメにも研究開発を広げていく」
狂う上場子会社売却の算段 日立を襲う数多くの難題
[INTERVIEW]日立製作所 社長兼CEO 東原敏昭 「車はCASEが加速 規模で1番手を目指す」
産業メカトロニクスへの集中が裏目に “優等生”三菱電機の誤算
人員リストラで復活したが… NEC、富士通を脅かす外敵
著名アナリストが読み解くソニーとパナの課題 
5期累計営業CFで比較 コロナ耐久力ランキング

Part3 コロナ後の勝機
存在感増す富士フイルム、キヤノン ヘルスケア事業に熱視線
[INTERVIEW]富士フイルムホールディングス 会長兼CEO 古森重隆 「アビガンは偶然ではない 未来へ投資を続けた結果だ」
[INTERVIEW]コニカミノルタ 社長 山名昌衛 「遺伝子検査の需要増に応える」
[INTERVIEW]テルモ 社長 佐藤慎次郎 「エクモをより使いやすくする」
半導体製造装置、工作機械の前途 装置の日本優位は変わらず
[INTERVIEW]ディスコ 社長 関家一馬 「社会や生活が変化し 半導体需要は一層増加」
[INTERVIEW]安川電機 社長 小笠原 浩 「5Gが整備されれば 工場自動化が加速する」
[INTERVIEW]オムロン 社長 山田義仁 「V字回復はできない 製品群の総合力で勝負」
日本勢が強い最先端の電子部品 コロナ禍に負けない5G
[INTERVIEW]村田製作所 専務(次期社長) 中島規巨 「日米韓の5G部品では 強みがさらに生きる」
企業再生のプロが語る電機の未来 

巻頭リポート
止まらない抗議デモ 米国 「分断危機」の深層
装甲車が街中に配置されたサンタモニカを歩く 「午後2時以降は外出禁止」という異常事態

ニュース最前線
「持続化給付金」に疑惑続々 受託法人の不可解な釈明
原宿に異色の「旗艦店」 ユニクロ変革の試金石
コロナ禍でも自販機増やす コカ・コーラの強気姿勢


連載
|経済を見る眼|模索すべきコロナ対策の「重点化」|佐藤主光
|ニュースの核心|次の感染拡大への備えはできているか岡田広行
|トップに直撃|セイコーエプソン 社長 小川恭範
|フォーカス政治|内閣支持率急落の原因と 「菅バッシング報道」の真偽|歳川隆雄
|グローバルアイ|コロナで高まる債務免除の必要性|ウィレム・ブイター
|INSIDE USA|立ち上がる保守系政策集団 「アメリカン・コンパス」の正体|会田弘継
|中国動態|価値観の対立が引き金 現実になった米中「新冷戦」|小原凡司
|財新|「コバルトフリー車載電池」開発に進展EC大手が「ライブコマース」で激突
|マネー潮流|コロナ禍で一変した米国の政局|高井裕之
|少数異見|世界からソーシャルディスタンスの日本
|知の技法 出世の作法|国内外情勢で混迷する トランプ大統領の行動|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|根拠ある政策決定を促す 研究データベースのすすめ|松多秀一
|人が集まる街 逃げる街|千葉県 浦安市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|自動演奏に録音機能も 究極のピアノオーディオ|田中 泰
|話題の本|『記者失格』の著者 柳澤秀夫に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|chill out|柴田真一
|経済クロスワード|日本の電機
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2020年6月20日号」(6月15日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
55ページ ■“優等生”三菱電機の誤算

2段目「直近5年間の累計投資額の内訳」について
【誤】国内では機械の制御に使われるACサーボやシーケンサーの増産に加え、400億円を投じて愛知県に新工場を建設した。

【正】国内外で機械の制御に使われるACサーボやシーケンサーの増産、自動車機器の電動化対応などに4200億円超を投じた。