週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年8月15日号
2020年8月3日 発売
定価 780円(税込)
JAN:4910201330805

【特集】コロナ時代の新教養

コロナ禍という前代未聞の大変動に対応するためには、過去の常識を疑い、脳内メモリーをリフレッシュすることが不可欠です。

時代の変化を知るための9本の誌上講義に加え、最新オンライン独習術を伝授。今読むべき本もたっぷりと紹介します。新常態を生き抜くための「知のガイドブック」としてお役立てください。
 

【スペシャルリポート】文具業界を揺るがす動乱 「コクヨvs.プラス」の全真相


昨年末のぺんてる株をめぐる文具2強によるプロキシーファイト(委任状争奪戦)。両社のバトルには、8月に設立したプラスの卸子会社が2年前の計画で一度頓挫していたことにも伏線が。縮小する文具業界再編をめぐる壮絶な主導権争いに迫ります。

担当記者より

特集「コロナ時代の新教養」を担当した山本舞衣です。コロナ禍の中でオンライン取材が主流となる中、経済学者の安田洋祐先生には、新規感染者数が減っていた時期にたまたまタイミングが合って貴重な対面取材ができました。特集の中では、安田先生におすすめの本を5冊ご紹介いただいています。

実は先生には、誌面に掲載した5冊以外にもう1冊、おすすめの本を挙げていただいていました。それが『資本主義の新しい形』(著・諸富徹、岩波書店)です。誌面の都合上5冊に絞り込まなければならなかったため、内容がやや専門的なのもあって、泣く泣く掲載をあきらめたのです。

この本は、「資本主義の“非物質化”が急速に進んでいる」という前提に立ち、その変化にうまく対応できなかったことが日本経済の停滞につながったと説明しています。そこから安田先生とのお話は、IT化の進展などによって、経済価値は急速にモノからサービスへ、人々の価値観も“有形”から“無形”へシフトしているという昨今の大きな動きなどに広がりました。「お金以外の大事なものに多くの人が意識を向け始めているのに、可視化がうまくいっていない」という先生の指摘にはうなずくばかりでした。

私たちの働き方にあてはめて考えるとよくわかります。仕事のやりがいはもはや給料の額だけではない。しかし、現実には給料以外の客観的かつ有力な指標はない。ただ、たとえば自分の仕事がどのくらい社会に貢献しているかが数値として「見える化」されるならば、それは金銭と同等かそれ以上に、働く人のモチベーションとなる可能性もあるのではないか(それを利用した経営者による搾取は論外として)。こうしたお話は、私自身にとってもこのコロナ禍の中での働き方をあらためて見直すきっかけにもなりました。

ステイホームで在宅勤務が始まり、ご自身の仕事や働き方について、見つめなおす機会があった方も多いのではないでしょうか。自分の仕事がどのような形で報われるのか。無形の価値や金銭以外の何かについて、思いを巡らせてみてもいいのかもしれません。

もしお時間があれば、ぜひ『資本主義の新しい形』もお読みください。誌面で紹介した『ラディカルマーケット―脱・私有財産の世紀』との対比が興味深い1冊です。

担当記者:山本 舞衣(やまもと まい)
早稲田大学商学部卒、2008年東洋経済新報社に入社し、データ編集、書籍編集、書店営業・プロモーションを経て、2020年4月育休を終え『週刊東洋経済』編集部に。「経済学者が読み解く現代社会のリアル」や「クラシック音楽最新事情」、「厳選ノンフィクション」など主に連載を担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
コロナ時代の新教養

Part1  集中講義
コロナ時代を生きる術
[ 第1講 概論 ]  数学者 藤原正彦
教養を手に入れ世界を回す 情報を選択する力が必要
[ 第2講 読書 ] 立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口治明
ステイホームの今こそ読書を 本で得た知識は生きる
[ 第3講 政治・経済 ] 思想史家・政治学者 白井 聡
生きるために『資本論』を読め 階級構造の現実を知る
[ 第4講 歴史 ] 青山学院大学教授 飯島 渉 
疫病史観の知見 コロナの「現在地」を探る
[ 第5講 経営 ] 経営コンサルタント 大前研一
ビジネスリーダーの心得 「プランB」を策定しよう
[ 第6講 哲学 ] 東京女子大学教授 黒崎政男
コロナ時代を思索する 時空を超えて得たもの
コロナ時代に必要な5つのキーワード
[ 第7講 宗教 ] 宗教学者 島田裕巳
問い直される存在意義 今こそ生きる意味を探れ
[ 第8講 社会 ] 思想家 内田 樹
新自由主義が終焉 「自給率」が問われる時代へ
[ 第9講 人間関係 ] 京都大学総長 山極寿一
ゴリラに学ぶコミュニケーション ネットで仲間はできない
70人の経営者・スペシャリストが語る アフターコロナの岐路

Part2  独学習慣
オンラインで学ぼう

インフォデミックを乗り越えろ 進化する「知の蓄え方」
3つのチェックポイントで読み解く 怪しいグラフの見抜き方
[ コロナ時代の英語術1 ] ビジネスに効く心得とコツ "新日常"を生き抜く英語
[ コロナ時代の英語術2 ]  オンラインサービス活用法 非対面がビジネス力を養う
[ 今こそ学ぶプログラミング ] ・エクセルVBAで業務効率化・AIで人気「Python」を知る

Part3  最強読書
本で教養を身に付けよ

 [ INTERVIEW ]一橋大学 名誉教授 野口悠紀雄
今日からできる! スマホで新聞や雑誌情報を整理
 [ 読書 ] リアル書店で出合った本
作家・フランス文学者 鹿島 茂  「優れた歴史地図は 未来を考えるツールだ」
 [ 読書 ]  人間と環境のあり方とは?
東京工業大学教授 中島岳志 「 僕らの文明観を考え直すときがきた」
 [ 読書 ] 新しい社会のヒント
大阪大学大学院准教授 安田洋祐 「ハイエクで知る 社会主義の理想と現実」
「既成概念への疑義」を読む 教養としてのSF小説

スペシャルリポート
文具業界を揺るがす動乱 「コクヨ vs.プラス」の全真相
[ INTERVIEW ]ぺんてる 社長 小野裕之 「まずは信頼関係の構築 それなしに協業はない」

スペシャルインタビュー
元ラグビー日本代表 畠山健介
「ラグビーファンの拡大には リーグのプロ化が不可欠だ」

ニュース最前線
台数増えすぎがもたらした 自販機補充労働の過酷実態
公取委が半世紀ぶりの処分 学生服「値上がり」の真因
「Go To事業」開始でも 厳しいHISの財政事情


連載
|経済を見る眼|ワーク・ライフ・バランス適正化を逃すな太田聰一
|ニュースの核心|コロナ禍で苦しむ診療所に十分な支援を岡田広行
|トップに直撃|JR東日本 社長 深澤祐二
|フォーカス政治|「世襲」を軸に考える「ポスト安倍」千田景明
|グローバルアイ|児童労働や児童婚は増加必至 「コロナ世代」の救済が急務だ|アビー・アハメド/ゴードン・ブラウン
|INSIDE USA|地上イージスの失敗で露見 古くて新しい日米摩擦|ジェームズ・ショフ
|中国動態|度を越した習近平「神格化」の弊害|益尾知佐子
|財新|米国で中国系250社に上場廃止リスクファーウェイ上期好調の先に待つ暗雲
|マネー潮流|新型コロナウイルスと「専門知」への疑問森田長太郎
|少数異見|激化する米中対立、日本はどう振る舞うべきか
|知の技法 出世の作法|日韓の歴史認識問題を 北朝鮮が利用し始めた|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|新しい州間協定は米大統領選を変えるか郡山幸雄
|人が集まる街 逃げる街|山形県 酒田市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|ジャズとクラシックの融合 カプースチンの思い出|田中 泰
|話題の本|『韓国人、韓国を叱る』の著者 赤石晋一郎に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|bring about ~|柴田真一
|ゴルフざんまい|次元が違う 米ツアーの怪物|三田村昌鳳
|経済クロスワード|コロナ時代の学び
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