週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年11月28日号
2020年11月24日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】地銀 最終局面

「地方銀行は将来的に数が多すぎる。再編も1つの選択肢になる」──。菅義偉首相の発言により、地銀再編に再びスポットライトが当たっています。青森―みちのく統合説にとどまらず、ゆうちょ銀行が地銀再編のためファンドをつくるといった情報も飛び交いました。

菅政権からは資本面だけでなく、デジタル化や効率化のプレッシャーもかかっています。改革を迫られる銀行とその行員の将来をルポと最新データで徹底分析します。
 

【第2特集】5大商社「次の一手」 前編


著名投資家の株式保有が明らかになり、にわかに注目が集まった日本の総合商社。各社は次の一手をどう展開しようとしているのか。

担当記者より

特集「地銀 最終局面」を担当した田島靖久です。それは、特集取材も佳境を迎え、校了が目の前に迫ってきた11月10日のことでした。日銀が地銀再編を支援する新しい制度を発表したのです。業界はたちまち蜂の巣を突いたような騒ぎに。慌てて、それまで準備していたカバーストーリーをすべて書き換え、チーム以外の記者にも取材応援を要請。約1週間でなんとか最新の情報を盛り込んだ特集が形になりました。

9月に菅首相が「(地銀再編は)選択肢の一つ」と発言して以来、私たちは全国を駆け回って、その地域の経済状況と再編をめぐるさまざまな思惑を取材してきました。これまで長きにわたって金融当局が再編を呼びかけてきたにもかかわらず、変わることのなかった業界ですが、菅首相からの最後通牒を突きつけられたうえに、具体的な政策で爆弾を投げ込まれたのです。

いよいよ追い詰められることになった地銀ですが、難しいのは、中小地銀にとって経営統合こそがベストな選択肢とも限らないことです。取材を重ねるほど、再編にはさまざまな障害が横たわることをリアルに感じます。では、地銀が今後歩むべき道とはどこにあるのでしょうか。地域の顧客が求める役割をあらためて考え直す必要があるのかもしれません。

特集には、最新の9月決算データを使った地銀ランキングも収録しています。こちらもまた、決算発表から数日で作り上げたもの。より最新の情報を織り込めるよう、私たちも校了日という小さな爆弾を抱えながら、追い詰められる中で作った特集となりました。

担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
東洋経済記者。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2019年10月から現職。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
地銀 最終局面

[プロローグ] 菅首相が追い込む 地銀の崖っぷち
地銀再編は何のためか 自助、自立は簡単じゃない
 
Part1 土俵際の地銀
追い詰められて待ったなし 大胆予測!地銀大再編
不祥事で幻に終わった ゆうちょ銀行再編ファンド構想
生き残るのは何行か 全国地銀“生存”MAP
北陸から九州まで総ざらい 列島縦断“再編”ルポ 
[関東] ついに動いた群馬 横浜は首都圏連合へ
[東海・甲信越] 静岡・山中は統合か モテモテの中京銀
[北陸] 3行連合実現すれば北陸大連合も視野に
[関西] 関西地銀と連携加速 りそなが狙う野望
[中四国] 同床異夢の四国連携 トマト銀に関心も 
[九州] 十八親和銀の誕生で仁義なき戦いが勃発 
自社サービス利用地銀に急接近  SBIが次に狙う銀行
「われわれが再編を主導することはない」  SBIホールディングス社長 北尾吉孝
自社商品を優先的に勧めると利益相反に SBIの運用資産急伸
トップアナリストも参戦 地銀再編に群がる人々
合併地銀の事例に学ぶ 経営統合の「効果」と「限界」

Part2 薄氷の経営
最新の9月決算データで徹底分析 やばい地銀はここだ!
最新決算で分析 地銀危険度ランキング
「生き残るための4つの法」 東洋大学教授 野崎浩成
地銀だけではない 信金・信組を襲う再編の波
信金・信組 ベスト&ワースト 地域別ランキング

Part3 迫られる大変革
支店長が「コンビニ店長」に? 激変する仕事と出世
「年功序列」に代わる「専門性」 変わり始めた出世の道
銀行員匿名座談会 俺たちに明日はない?
[エピローグ] 本格化する再編時代 地銀が歩むべき新たな道

第2特集
バフェット銘柄の成長戦略  5大商社「次の一手」〈前編〉
住友商事 5大商社で唯一の赤字見通し 成長担う「3事業」の重責
「メディア事業は花火で終わらせない」 住友商事副社長 南部智一
三井物産 資源商社はどこまで変われるか カギ握る「非資源」の拡大
「アグリ事業で収益を下支えする」 三井物産執行役員 高田康平 

ニュース最前線
パナが9年ぶり社長交代 低迷脱却へ山積する課題
ソフトバンクGが入れ込む 上場株投資に影のキーマン
「檸檬堂」がメガヒット コカ・コーラの緻密な戦略


連載
|経済を見る眼|「自助」と社会保障強化は好相性|藤森克彦
|ニュースの核心|行政と国民の「タッチポイント」が必要だ|野村明弘
|トップに直撃|物語コーポレーション 社長 加藤央之
|フォーカス政治|都構想を葬られた「維新」の前途多難|塩田 潮
|グローバル・アイ|ぬるい政権移行は禍根を残す トランプの罪を徹底的に裁け|ヤン=ヴェルナー・ミュラー
|INSIDE USA|バイデンを縛るトランプ現象 日本は米国の混乱を覚悟せよ|ジェームズ・ショフ
|中国動態|中国の被害者意識が育む対外強硬策|益尾知佐子
|財新|大型国有企業「華晨汽車」がデフォルト北京ダックの老舗が深刻な経営不振に
|マネー潮流|株高は米大統領選挙より景気を反映|森田長太郎
|少数異見|いま一度考えたい多様性の大切さ
|知の技法 出世の作法|バイデン政権に攻勢かける 日本の「表外交」と「裏外交」|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|マスク着用への意識は なぜ日米で異なるのか|上武康亮
|リーダーのためのDX超入門|米動画ベンチャー廃業が問う「目利き力」|山本康正
|人が集まる街 逃げる街|埼玉県 浦和|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|音楽の力を世界に示す ウィーン・フィル来日|田中 泰
|話題の本|『人新世の「資本論」』 著者 斎藤幸平氏に聞く ほか
|経済クロスワード|地域金融機関
|「英語雑談力」入門|captivate|柴田真一
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