週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年3月27日号
2021年3月22日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】全解明 半導体パニック ―自動車vs.スマホ 争奪戦の深層―

半導体産業は世界的なデータ通信量の拡大で超活況。コロナ禍によるテレワーク需要もあって世界中で争奪戦が起きています。その直撃を受けているのが自動車業界です。今年1~3月には半導体不足により世界で100万台近くの減産になると推計されています。
 

【第2特集】“転売ヤー”の是非


法律で禁じられている転売品はごくわずか。ネット上では高額転売がやりたい放題で、さらに増えそうだ。

担当記者より

特集「全解明 半導体パニック」を担当した高橋玲央です。自動車業界が今、半導体不足に揺らいでいます。昨年末、ドイツのフォルクスワーゲンが減産を発表。そのときは日本にとっては対岸の火事、大したことはないと思っていました。ところがです。年明けからホンダやSUBARUなど多くの会社が生産調整に追い込まれました。しばらくこの騒ぎは収まりそうもありません。

実は自動車には、自動ブレーキやセンサーだけでなく、カーナビやパワーウインドウなど電気で制御される部品がたくさんあります。「走る半導体」と言われるゆえんはまさにそこにあります。それらのどれが欠けても自動車は完成しません。

かつて厳密な生産計画を指示するのは自動車メーカーでしたが、最近は様子が変わってきています。スマホやPC、データセンターの拡大で半導体が多く使われるようになり、半導体メーカーの発言力が強くなっているのです。あらゆる産業が半導体をほしがる中、その争奪戦に敗れ、十分な量を確保してもらえないといった事態が発生しているのです。

日本企業の時価総額トップはトヨタ自動車ですが、台湾の半導体企業TSMCはトヨタの2倍の時価総額があります。そのTSMCに大量の半導体を生産委託しているアメリカのアップルに至っては10倍近く。かつて世界一を誇った自動車産業の存在感が小さくなってしまうのはさみしいのですが、その現実にどう向き合っていくかを考える時期に来ているのかもしれません。

半導体不足の影響が及んでいるのは自動車業界だけではありません。ソニーのプレイステーション5は品薄で入手困難になっていますが、背景にはやはり高性能の半導体確保が思うように進まなかった事情があります。今号の第2特集では、人気ゲーム機が高額で取引されている転売市場の実態にも迫ります。ぜひお手にとってお読みください。

担当記者:高橋 玲央(たかはし れお)
東洋経済記者。名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。半導体、電子部品などを担当。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
自動車vs.スマホ 争奪戦の深層 
全解明 半導体パニック


[図解] 自動車メーカーを襲う 「半導体不足」4つの理由
これだけは押さえておきたい 車と半導体 基本のキ

Part1 新王者・半導体の戦略
時価総額はトヨタの2倍! 独走するTSMCの正体
米国の強硬策はオウンゴールに 中国「半導体強国」へ猛進
3度の巨額買収で急変化  ルネサス「車依存」から脱皮
2023年には供給不足に? シリコンウェハー増産に壁
日本の製造装置に恩恵 爆騰する半導体関連銘柄
「増産余地が乏しく2022年まで需給は逼迫」 オムディアコンサルティングディレクター 杉山和弘 
「中国で日本の半導体技術を発揮する」ブイ・テクノロジー社長 杉本重人

Part2 自動車帝国の試練
自動車のスマホ化が止まらない 半導体が握るクルマの未来
半導体でも“備え”が生きた トヨタが「3.11」で得た教訓
電池の次は半導体の自給目指す 中国・EV立国の現在地
「半導体メーカーと戦略関係を築く時代が来る」 ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリスト 中西孝樹

第2特集
増殖を誰も止められない
“転売ヤー”の是非

一時は転売市場で正価の2倍に コロナ拡大が招いたスイッチ価格の異常
継続的な転売行為にご用心 個人間のネット取引に監視の目を光らせる国税庁
ユーザーの不満は放置できない 高額転売の「禁止」は可能か 2次流通の規制強化に難題
「高額転売対策で法律のお世話にはならない」 メルカリ日本事業CEO 田面木宏尚

スペシャルリポート
「わざとスマホ壊して!」 ドコモ店員、衝撃営業の闇
代理店へ「頭金」0円強要 ドコモに独禁法違反の疑い

ニュース最前線
楽天に1500億円を出資 日本郵政、荷物確保への焦り
シャープ子会社が不正会計 露呈したガバナンス不全
後発薬大手の日医工が不正 拡大至上主義が招いた歪み


連載  
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|ニュースの核心|東電は原発事故の被害者に真摯に向き合え|岡田広行
|発見!成長企業|タカラバイオ
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|キリンホールディングス 社長 磯崎功典
|フォーカス政治|放置は許されない政権の無責任体質|山口二郎
|グローバル・アイ|泡と消えるか、世界を変えるか グリーン革命「バブル」の行方|ウィリアム・ジェーンウェイ
|INSIDE USA|通商の焦点は労働者と環境 バイデン新関税の裏事情|安井明彦
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|財新|マカオの観光業、春節商戦が不発窮地のファーウェイ、新型スマホ投入
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|少数異見|形だけの中小企業化を許してはいけない
|企業事件簿|終わりなき骨肉の争い ロッテ財閥の世にも奇妙な資本関係|高橋篤史
|知の技法 出世の作法|イラク訪問で形勢拡大を狙うローマ教皇の意図|佐藤 優
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|リーダーのためのDX超入門|時価総額9兆円、韓国発ECベンチャーの衝撃|山本康正
|話題の本|『廃炉』著者 稲泉 連氏に聞く ほか
|経済クロスワード|半導体と自動車産業
|人が集まる街 逃げる街|長野県北佐久郡 軽井沢町|牧野知弘
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|読者の手紙 次号予告|

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