週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年4月24日号
2021年4月19日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】不動産投資 天国と地獄


コロナ禍の下でのカネ余りで、賃料収入を狙ったマンションやアパートへの投資熱が高まっています。東京都心部では空室も増えているなど、決してローリスクではありません。市場構造の変化を的確に捉えたうえで挑戦しないと、大ケガすることもあります。

高利回りが狙えるエリアのランキングや銀行へのアプローチ方法など、最新の知識を満載。新法制定後もトラブルが絶えないサブリースについても深掘りしました。
 

担当記者より

特集「不動産投資 天国と地獄」を担当した梅咲恵司です。「不動産会社の営業担当者に言われるがまま物件を購入する人が多い。そういう投資家は、結局は赤字で苦しんでいる」。3月上旬、都内で個人投資家向けに区分マンションの買い取りを行う業者の事務所を訪れると、社長が苦笑まじりにそう話しました。

通された会議室には、壁一面に手紙が貼られてあります。「運営が赤字で悩んでいましたが、買ってもらえて、肩の荷が下りました」「ようやく手放せました」――。業者が物件を買い取ったオーナーからの感謝の手紙の数々でした。

別の不動産仲介会社関係者も「実際に物件を見て購入する投資家は2割程度。とくに、初心者は投資を安易に考えがち」と語っていました。

株式投資などと比べて「ミドルリスク・ミドルリターン」とされる不動産投資。中でも賃貸住宅は景気変動に強く、不況期にも稼働が落ち込みにくいことが利点です。預貯金や債券などほかの金融商品よりも総じて利回りが高いことも魅力です。

ただ、不動産投資はけっしてローリスクではありません。「コロナ禍でも家賃は下がりにくい」「不動産投資は安定収益源として再認識されている」「物件の売却価格も上がっている」。記者が潜り込んだ不動産セミナーでは、このような営業トークのオンパレードでした。

今回、アパートを運営する複数のオーナーからも話を聞きました。安定収益をうたい文句に、業者が物件を借り上げて家賃を保証する「サブリース」。これまでは賃料減額に関するトラブルが話題になることが多かったのですが、最近は新たなトラブルが多発している実態が浮かび上がってきました。「サブリースを解約しようとしたら、家賃36ヵ月分の違約金を請求された」。「水漏れの修繕をサブリース会社に頼んだところ、相場の3倍もの値段を請求された」。このような解約やリフォームにまつわるエピソードが、次々と出てきました。

サブリース会社の元営業員の話も驚きの連続でした。「客に見せる収支計画はウソだらけ。税金の割賦金や金利の想定を操作して見栄えを良くしていた」「サブリース会社は賃料の10%程度の管理手数料で儲けているように思いがちだが、最近はリフォーム代金などで稼いでいる。オーナーはサブリース会社以外の業者にリフォーム工事を発注できない仕組みになっているケースもある。実はこのことは営業員時代には知らなくて、会社を辞めてから知った」。

コロナ禍での家計の「カネ余り」もあり、ここのところ不動産投資に注がれる視線は熱くなる一方。20歳~30歳代の若者投資家も増えているようですが、十分にリスクを認識して挑んでいただきたいところです。特集では、優勝劣敗の分岐点に迫ります。

担当記者:梅咲 恵司(うめさき けいじ)
東洋経済記者。ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
不動産投資 天国と地獄

不動産投資市場を読み解く3つの視点

Part1 コロナ禍での投資市場
若者層もじわり増加中 不動産投資家のリアル
コロナが人の流れを変えた 賃貸「繁忙期」に異状あり
急激な規模拡大のツケ 上陸から2年、「OYO」の誤算
1棟物件のフルローンは困難に 銀行融資「狭き門」の突破法
「もはや別の銀行」との指摘も スルガ銀行、水面下での変節
専門家に聞く コロナ禍での投資の焦点
最新 高利回りを狙えるエリアはここだ!

Part2 不動産投資の光と影
賃貸市場で生き残るには アパート投資で勝つ方法
新法きっかけにトラブル噴出 サブリース、まさかの盲点
「弱者に付け込む理不尽」 サブリース被害対策弁護団長 三浦直樹
不動産オーナー・サブリース会社元社員 座談会 「僕らがはまった落とし穴」
スルガ銀行が異例の対応 シェアハウス騒動 借金帳消しで解決へ

Part3 不動産投資の極意
利回りだけを見ていてはダメ 借金を使いこなせ 
すご腕投資家に学ぶ 不動産投資の勘所
今さら聞けない税金のイロハ 不動産投資 節税Q&A
顔認証をフル導入したマンションも 「テック」を活用し空室対策
AIで10年後を予測 資産価値が「 落ちやすい駅」「落ちにくい駅」
人気サイトを使いまくれ! 不動産サイト「徹底」活用術
不祥事で一時は存続危機も IoTで旧TATERUは復活できるか
[10年前比]2021年住宅地 騰落率ランキング
・東京圏 上昇70・下落50
・大阪圏 上昇20/名古屋圏 上昇20

巻頭リポート
株価ユーフォリアと超富裕層マネー アルケゴス騒動を読み解く
アルケゴスを動かす「すご腕」の意外な横顔

ニュース最前線
車谷社長が「事実上解任」 東芝で一段と深まる混迷
au「povoは集客装置」 不適切販売が横行する背景
半世紀ぶりの本館建て替え 帝国ホテルが抱く危機感


連載  
|経済を見る眼|日銀緩和の正常化「取りあえずの終着点」|早川英男
|ニュースの核心|北朝鮮の「東京五輪不参加」の怪しさ|福田恵介
|発見!成長企業|三井ハイテック
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|東芝社長兼CEO 車谷暢昭(4月14日辞任)
|フォーカス政治|菅氏に問われる「台湾有事」への覚悟|歳川隆雄
|グローバル・アイ|揺らぐ米国の通貨覇権 米中逆転のシナリオに備えよ|ケネス・ロゴフ
|INSIDE USA|5Gの反省と6Gへの反攻 米国が期す通信の失地回復|ジェームズ・ショフ
|中国動態|再分配政策をためらう習指導部|益尾知佐子
|財新|半導体不足でスマホ大手の成長鈍化製造業の回復がペースダウン
|マネー潮流|米国でインフレの加速は起こるのか|森田長太郎
|少数異見|TOKYO2020で考える幸福論
|企業事件簿|新社長の裏の顔 経歴は人の一面しか映さず|高橋篤史
|知の技法 出世の作法|北朝鮮の東京五輪不参加は 日本への対決シグナルだ|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|電力卸価格の高騰 今後の市場設計への教訓|伊藤公一朗
|リーダーのためのDX超入門|「スマホの次」を想像する力があるか|山本康正
|話題の本|『もし、アドラーが「しゅうかつ」をしたら』著者 長田邦博氏に聞く ほか
|経済クロスワード|賃貸市場
|人が集まる街 逃げる街|福岡県 久留米市|牧野知弘
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告

訂正情報

「週刊東洋経済2021年4月24日号」(4月19日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
37ページ ■1段目8~11行目

【誤】家賃からローン返済や管理費を差し引いた手取り収入は年間2500万円。
 ↓
【正】家賃からローン返済や管理費を差し引いた手取り収入は年間約900万円。
46ページ ■表「エリアや頭金割合にも注目 -各金融機関の商品一覧-」

【誤】三井住友ローン&ファイナンス
 ↓
【正】三井住友トラスト・ローン&ファイナンス