週刊東洋経済

担当記者より

特集「マンション管理　異常事態」を担当した梅咲恵司です。「うちのマンションを担当している管理会社は本当にアホ」。今回の特集を企画する前段階で、現状をつかむために都内のマンションで理事を務めている友人に話を聞きました。すると、友人は冒頭のように切り出し、次々と管理会社への不満を口にしました。「管理会社の担当者には、びっくりするほど話が通じない。普段の掃除も行き届いていないし、理事会には修繕工事についての知識が少ないので困っているのに、なんにもアドバイスをしてくれない」。「管理会社に対する不信感でいっぱい。“クビ”にできることならば（管理会社を変更することができるのならば）そうしたい」。

この友人のように、管理会社に対して不満を募らせている管理組合の方は少なくないでしょう。そのため、数年前から「リプレース（管理会社の変更）」がブームのように広がり、実際にリプレースに踏み切るマンションも増えました。奴隷のように管理会社の担当者を扱い、「おまえたちの代わりなんていくらでもいる」と捨て台詞を吐いて、リプレースを実行したマンションもあります。管理会社に不満がなくても、マンション委託費を下げるために、2度、3度とリプレースしているマンションもあります。

ところが、いまやマンション管理組合と管理会社の立場は逆転しました。現在は、管理会社が管理組合に「三行半」を突きつけるケースが続出しています。人件費の高騰などを背景に管理会社の採算が厳しさを増しており、「管理戸数を伸ばすよりも、採算の取れる物件を厳選して受託している」（大手管理会社の幹部）ためです。都内にあるマンション管理会社の社長は「うちのような（中規模の）管理会社には、管理を打ち切られたり、委託先が見つからなかったりするマンションからの依頼がたくさん舞い込んでいる」と明かします。

マンション住民や管理組合はこれまでのように、管理会社に対して安価な委託費で手厚いサービスを求め続ければ、逃げ出されてしまう事態を招きかねません。そうならないために、管理会社とのコミュニケーションの取り方など意識を変えることが求められます。

今まさに「転換期」にあるマンション管理。「もはやこれまでの常識が通用しなくなった」と言っても過言ではありません。今回は取材班で、のべ30人以上の理事・理事長経験者に取材。管理会社と管理組合の付き合い方の変化や、騒音や喫煙、置き配問題といった最新トラブルなどの最前線を追いました。ぜひお手にとってご一読ください。

担当記者：梅咲 恵司（うめさき けいじ）
東洋経済記者。ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』（イースト・プレス）。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い