週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年1月22日号
2022年1月17日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201340125

【特集】企業価値の新常識


アップルの時価総額が3兆ドルを超えて話題になりました。その98%が決算書類には記載されない「非財務資本」です。今やグローバルな機関投資家は気候変動対策や人的資本など非財務情報への関心を高めており、株価形成における重要度は極めて大きくなっています。

開示内容をチェックする側の監査法人も激変を迫られています。決算書だけでは企業価値を評価できない時代にどう対処すべきか。ケーススタディーを豊富に盛り込んで解説します。

担当記者より

特集「企業価値の新常識」を担当した梅垣勇人です。「2100年までに地球の気温が産業革命前と比べて4度上昇するとき、あなたの会社のビジネスにはどのような影響がありますか」と問われたとき、みなさんは真正面から答えることができますか。

4月以降、新設されるプライム市場に上場する1841社は、冒頭のような質問に対して答えていくことが求められています。確かにこの半年ほど、取材などで出会った企業の経営者やIR担当の方から「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示ってどこまでやればいいの」などとよく尋ねられるようになりました。TCFDとは、気候変動にかかわるガバナンスやリスク管理などの情報開示についての国際的な枠組みです。

恥ずかしながら私自身もほとんど知らず、まずはTCFDにまつわるキーワードを一つずつ調べるところから特集作りがスタート。しかし、識者や制度作りを進める官庁への取材を進める中で何度も出てきたのは意外なキーワードでした。

それは「経営戦略」です。一見、気候変動とは関係が薄いように見える言葉ですが、そうではありません。企業には気候変動はもはや避けられない前提で、将来にむけた長期の経営戦略を練り、その過程で見えてきたリスクや収益機会について開示することが求められるというわけです。

特集の後半では、公認会計士業界の地殻変動についても追いました。度重なる制度変更や規制強化で現場の負担は増加。大手監査法人から準大手・中小法人に監査先企業が流出する傾向が加速しています。さらには企業の開示担当者や公認会計士の匿名座談会も掲載、企業の開示や会計士業界の最新トレンドを詰め込みました。ぜひお手にとってご覧ください。

特集の後半では、公認会計士業界の地殻変動についても追いました。度重なる制度変更や規制強化で現場の負担は増加。大手監査法人から準大手・中小法人に監査先企業が流出する傾向が加速しています。さらには企業の開示担当者や公認会計士の匿名座談会も掲載、企業の開示や会計士業界の最新トレンドを詰め込みました。ぜひお手にとってご覧ください。

担当記者:梅垣 勇人(うめがき はやと)
証券業界を担当。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。最近ハマっているマンガは『夏目アラタの結婚』。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
企業価値の新常識

Part1
非財務資本が生死を分ける

アップルの"非財務資本"はソニーグループの約30倍

[スペシャルインタビュー] 一橋大学 CFO教育研究センター長  伊藤邦雄
「高ROEだけではダメ TCFDや人的資本の開示充実は待ったなし」
機関投資家に買ってもらえなくなる? 「非財務開示」の充実が株主との対話のカギだ
プライム1841社に期限迫る 超難関「シナリオ分析」を4ステップで徹底攻略
気候変動対応の次はこれ! 人的資本の開示で企業価値を向上させる

開示先行企業の事例に学べ! 10年後「稼ぐ力」の上手な示し方
事例1 製薬【エーザイ】柳モデルが解明したESGの価値
[インタビュー] エーザイ CFO 柳 良平 「ESGと高利益とは両立できる」
事例2 小売り【丸井グループ】環境配慮の「売らない店」伸ばす
事例3 食品【キリンホールディングス】収穫量の減少を前提に戦略立案
事例4 総合商社【伊藤忠商事】経営トップが強烈にコミット
事例5 化学【住友化学・帝人】「影響は軽微」に隠された事情
事例6 銀行【メガバンク3行】株主提案の外圧が開示を促す
開示が頻繁だと経営が短期志向になるって本当? 四半期開示"廃止"の行方
[開示担当者の本音 誌上覆面座談会]

Part2
大手から流出する顧客企業は年々増加

顧客選別で監査難民続出も

[インタビュー] 日本公認会計士協会会長 手塚正彦「性急な改革では監査難民を生みかねない」
あの大企業の粉飾も見抜けなかった 企業監査、信頼失墜の歴史
 [独自調査 監査報酬ランキング]
 最大は三菱UFJの57億円弱 増加倍率はサクサHDが首位
[独自調査 4大監査法人の働き方改革]
 作業合理化は大きく前進も 工数増えて依然“ブラック”
相手が役員だとパートナーに昇格できない! 法改正で「配偶者問題」解消へ
[公認会計士の苦悩 誌上覆面座談会]

産業リポート
富裕層消費に懸ける百貨店 外商ビジネス再興への難題
現代アートに殺到する「新しい富裕層」の思惑

深層リポート
中台に続き韓国が申請 転機のTPP
[インタビュー]韓国のTPP加盟申請をどう評価するか
亜細亜大学アジア研究所教授 奥田 聡 「ルール決めに参画 中国への配慮は減退」
韓国・国立外交院経済・通商・開発研究部長 金 良姫 「加盟申請は不可避 課題は戦略的自律性」

ニュース最前線
スマホの次はモビリティー ソニー、EV参入の真意
主役交代が進む株式相場 22年はバリュー株に勝機
帝人、8年ぶりトップ交代 新社長に求められる柔軟性


連載  
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|ニュースの核心|中年世代の悲哀が見える韓国大統領選|福田恵介
|発見!成長企業|マネジメントソリューションズ
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|トップに直撃 富士通 社長  時田隆仁
|フォーカス政治|今必要な「安倍的なるもの」との決別|山口二郎
|中国動態|食料安保の号令で進む農村統制|益尾知佐子
|財新 Opinion&News|下降局面の中国経済、リスク管理を徹底せよ
|グローバル・アイ|左派大統領と「極左の距離」 チリが占う中南米政治の今後|ホルヘ・カスタニェーダ
|Inside USA|デジタル人民元とドルの攻防 米国で高まる暗号資産規制論|ジェームズ・ショフ
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