週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年6月11日号
2022年6月6日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201320622

【第1特集】瀬戸際の銀行

本業がジリ貧に陥る中で、銀行のあるべき姿とは何でしょうか。本特集では、地方銀行全99行の最新決算を基に、地銀「衰弱度」ランキングを作成しました。併せて、目下地銀を悩ます「3大リスク」に関する、個別経営指標のワーストランキングも掲載しています。

厳しい現実を背景に加速する経営統合や提携など再編ドミノの最前線を、東北から九州まで列島縦断ルポで克明に描いています。また海外戦略が軌道修正を迫られるなど、将来の事業構造転換を模索する3メガバンクのトップに直撃インタビューをしています。
 

【第2特集】不妊治療はひとごとですか?


今年4月、不妊治療への保険適用が拡大された。治療数も過去最多となる中、患者、企業はどう向き合えばよいのだろうか。

担当記者より

特集「瀬戸際の銀行」を担当した中村正毅です。メインライターとして銀行業界の特集に参加するのは、ほぼ10年ぶりです。隔世の感を抱きながら、15年以上の付き合いになる地銀の役員と話していたら、こんな話を聞きました。

ある大手通信社の記者が、頭取に取材がしたいと東京から訪ねてきたときのこと。頭取にインタビューをするのかと思いきや、口から出たのは「金融庁長官が提携するのは、ダメだと言っている」という謎の発言でした。

頭取が慌てたように、「長官がそう言っているのですか。大変失礼ですが、あなたは金融庁のお仕事もされているのですか」と尋ねると、「いえ。私はそれを伝えに来ました」と記者が答え、その後大した取材もなく、東京に帰っていったというのです。

金融庁としては、その銀行が足元で検討していた提携策がよほど気に入らなかったのでしょう。監督官庁が直接介入したとなったら不味いと思ったのか、わざわざ懇意にしている記者を使って、間接的に潰しにかかってきたわけです。

「金融庁が提携を潰すために“密使”を送ってきたぞ!」と、そのとき行内は騒然となりましたが、国から免許をもらっている地銀としては、お上の意向には容易に逆らえません。その後、準備を進めていた提携策が日の目を見ることはありませんでした。

金融庁と地銀を巡るそうしたドロドロ劇は、今に始まったことではありません。「護送船団行政」と呼ばれる銀行を徹底的に保護してきた時代から、何十年にもわたって続いてきたことです。

久しぶりの銀行取材で隔世の感があったのは当初だけで、取材を進めれば進めるほど、「何も変わっていないじゃないか」という思いを強くしました。

はたして、密使を送り込まれたその銀行とはどこなのか。本誌で詳述していますので、是非手に取ってお読みいただければ幸いです。

担当記者:中村 正毅(なかむら まさき)
これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険、消費者金融などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
全国地銀ルポ!合従連衡の最前線 瀬戸際の銀行
[プロローグ] 地銀再編を阻む"みずほ"の呪縛

Part1 地銀の優勝劣敗
最新決算を徹底分析 地銀「衰弱度」ランキング
個別経営指標ワーストランキング 地銀を悩ます3大リスク

Part2 地銀「政策再編」の末路
経営統合や提携の最新事情を網羅 列島地銀相関MAP
東北から九州まで列島縦断 加速する再編ドミノ
【東北】再編の余波が招く東北の大同団結
【北陸】オール福井で対抗 カギ握る創業家株
【関東】きらぼしと東日本を結ぶ浜銀の一手
[インタビュー]「企業価値が上がる再編策は積極的に議論」 コンコルディア・フィナンシャルグループ次期社長 片岡達也
【東海・甲信越】激化する愛知の乱 スルガの救世主は
[インタビュー]「愛知はマザーマーケット メインバンクにもなれる」 三十三フィナンシャルグループ社長 渡辺三憲
【中四国】四国アライアンスが生んだ再編の渦
[インタビュー]「増資するなら地元企業とSBI。公的は受けない」 島根銀行頭取 鈴木良夫
【九州】公的資金注入行に生じた再編の種火
[インタビュー]「取引先の販路開拓支援が第3の本業であり使命」 豊和銀行頭取 権藤 淳

Part3 メガバンクの構造転換
軌道修正を迫られるメガの海外戦略 岐路に立つ外銀拡大路線
商業銀行業務の行方と将来あるべき事業構造とは 3メガのトップに直撃!
[インタビュー]
「金融超えたサービス提供」 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)社長 亀澤宏規
「提案力が勝敗を分ける」 三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長 太田 純
「銀行の役割は依然大きい」 みずほフィナンシャルグループ(FG)社長 木原正裕
歪み始めた地銀連合の円環 新生銀行を阻む3つの壁

第2特集
保険適用開始で社会の問題に 不妊治療はひとごとですか?
[インタビュー] 「不妊治療の保険適用だけでは少子化対策につながらない」 慶応大学名誉教授 産婦人科医 吉村泰典
患者を取り巻く治療の実態 データで読み解く不妊治療
企業も模索する支援のあり方 従業員の治療どう支えるか

深層リポート
なぜ待遇が劣悪なのか 生保レディー「給与制度の闇」

ニュース最前線
米大統領の台湾発言で波紋 安全保障の関わりに変化か
飯田Gを襲うロシアリスク 買収後1カ月で侵攻勃発
アルペンが新宿に超大型店 都心で勝負する切実な事情


連載
|経済を見る眼|岸田首相「資産所得倍増計画」の大矛盾|佐藤主光
|ニュースの核心|米国が願う関係改善に日韓は踏み込めるか|福田恵介
|発見! 成長企業|エニグモ
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|JR九州 社長 古宮洋二
|フォーカス政治|「黄金の3年」へ岸田外交の面目躍如|歳川隆雄
|中国動態|中台衝突で最悪のシナリオとは何か|富坂 聰
|財新 Opinion &News|中国の深刻な「雇用危機」をどう打破するか
|グローバル・アイ|人権抑圧という中国の大罪 弱腰続けるバチカンの不徳|クリス・パッテン
|Inside USA|マスク氏の危うい「言論の自由」 不透明なツイッター買収表明|瀧口範子
|FROM The New York Times|仮想通貨暴落で浮き彫り セレブマーケティングの罠
|マネー潮流|「小国」への転落をどう生かしてゆくか|森田長太郎
|少数異見|堂々と値上げできる自社の強みを今こそ
|知の技法 出世の作法|QUAD会合の結果を米外交の蹉跌とみるロシア|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|スタートアップ創出政策 重要なのは「出口」の整備|加藤雅俊
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