週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年7月23日号
2022年7月19日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】学校が崩れる


先生が足りず、授業の「穴」が埋められない。全国各地の公立学校からそうした悲鳴が上がるほど、日本は今、深刻な教員不足に陥っています。公教育崩壊はあなたの子どもの学校で、すでに生じています。本特集では緊急アンケートで集まった教員400人の声などを基に、教員不足の深層に迫りました。見えてきたのが、“使い捨て”の非正規教員への依存、少子化の一方での特別支援学級の増加、進まない定数改善など、教育現場の数々の問題です。中学受験の激化で広がる格差や塾業界の子ども争奪戦の実態も描きました。

担当記者より

特集「学校が崩れる」を担当した井艸恵美です。82歳の教員が、ひ孫に当たる年齢の小学生を教えている――。特集の取材で何人もの教員に会いましたが、最も驚いたのはこの女性でした。

記事の中でも登場するこの女性は、都内の小学校で非常勤講師として働いています。取材する前は「非常勤」と聞いて、週何回か授業をしているだけだろうと思っていました。ところが、待ち合わせた喫茶店に到着するなり、彼女の携帯電話が鳴ります。欠員が出たため「明日午前中に授業に入ってくれないだろうか」という教頭からの相談に、二つ返事で快諾する女性。こんなことは日常茶飯事のようです。

毎日朝8時頃から夕方まで勤務し、給食の時間には特別支援学級の配膳まで手伝っている女性。欠員が出たときにはピンチヒッターも務めます。もし彼女が突然辞めたら、おそらく学校の運営は成り立たなくなるでしょう。

ところが、女性は週7時間の担当授業分の給与しかもらっていないと聞いて、さらにびっくり。代替した授業などはすべて無給なのです。「無給なのはおかしいですよ」と言う私に対して、彼女は「子どもと接することも、授業することも好きだから」と穏やかに笑って答えます。彼女を紹介してくれた70代の元教員は、無給で何でも引き受ける女性を「奇特な人よ。私にはできない」と評します。

いま学校は深刻な教員不足に陥り、こうした個人の善意によってギリギリ持ちこたえています。今回の特集「学校が崩れる」では教員不足が起こる真因、その解決策を探りました。学校の先生にはもちろん、保護者のみなさんにもぜひお手に取っていただきたいです。

担当記者:井艸 恵美(いぐさ えみ)
群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。調査報道部などを経て統合編集部記者。

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目次

特集
教員不足が招く連鎖崩壊 学校が崩れる

Part1 崩れる公教育
公立学校から上がる悲鳴 「先生が足りない」非常事態
緊急アンケート 教員400人の声 実を伴う「働き方改革」が必要
教員不足の深層❶
「卒業式にいない先生」の正体 “使い捨て”の非正規教員へ依存 教育ジャーナリスト 佐藤明彦
実績のある非正規教員が正規になれない ブラックボックス化された採用試験 教育ジャーナリスト 佐藤明彦
教員不足の深層❷
少子化でも特別支援学級はなぜ増える? 急増する「発達障害」の真因
子どもと教員を不幸にする学校文化 「 ブラック校則」はなぜ変わらないのか
教員不足の深層❸
悪循環を好循環に変えるために 根本対策は「定数改善」だ 慶応大学教職課程センター教授 佐久間亜紀
スポーツ賭博の解禁か、それとも親の自己負担か 「タダ」だった部活動がコスト化

少人数学級化に財務省の高い壁 文科省予算をめぐる攻防
[インタビュー] 教師は“労働者”なのか?
「一人の労働者、家庭人だと認めてあげるべきだ」 名古屋大学大学院 教授 内田 良
「新自由主義が教員を『会社勤め人』にした」 星槎大学大学院特任教授 元文部科学官僚 寺脇 研

Part2 教育格差
検証なし、根拠なしの教育改革 「ふとり教育」で格差拡大
高校受験の内申点に不満募らす親 中学受験激化で広がる格差 フリーランス記者 宮本さおり
少子化でもなぜ儲かる? 塾業界の子ども争奪戦
自治体間の格差が浮き彫り 学校「教育力」ランキング

緊急リポート
安倍晋三元首相 「異次元」の航跡
通算在任日数は最長の3188日 安倍政権は政治に何を遺したのか
・「長期安定政権が残した忖度の構造と人材難」 東京大学教授 牧原 出
・「未達成に終わった宿願の『改憲』挑戦」ノンフィクション作家 塩田 潮
・「議論百出の経済政策 地道な検証が必要」 帝京大学教授・ジャーナリスト 軽部謙介
・「独自取材メモが示す 岸、小泉、安倍の“系譜”」 『インサイドライン』編集長 歳川隆雄
異次元の金融緩和が生んだ「アベノミクス」負の遺産

深層リポート
強権発動し独自に役員提案 「エニタイム」会長が大暴れ
[インタビュー]「会社として通すべき筋は通した」 ファストフィットネスジャパン 社長 土屋敦之

産業リポート
ナイキの「選別」で激震 靴小売りを揺さぶる地殻変動
靴業界に殴り込み ワークマンの成算

連載
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|ニュースの核心|日中首脳会談へ早急に踏み出そう|西村豪太
|フォーカス政治|日本政治の大転換点となった参院選|山口二郎
|発見! 成長企業|日本エコシステム
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|SUMCO 会長兼CEO 橋本眞幸
|中国動態|「習3選」と同時に世代交代の動き|富坂 聰
|財新 Opinion&News|中国で若者の失業率が過去最悪を記録した背景
|グローバル・アイ|このインフレで中央銀行は「国民の敵」になる|ハワード・デービス
|Inside USA|対中ロで先走る、日米防衛予算増額の現実味|ジェームズ・ショフ
|FROM The New York Times|非業の死遂げた安倍元首相が変えた日本の「国家安全保障」
|マネー潮流|FRBは景気よりも物価安定を優先|木内登英
|少数異見|ニッポンスゴイと言っている場合ではない
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