週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年8月27日号
2022年8月22日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201340828

【第1特集】東芝の末路

不正会計の発覚から7年。迷走を重ねた東芝が株式非公開化への一歩を踏み出しました。モノ言う株主たちに経営を翻弄された末の決断です。本特集ではさまざまな角度から、この創業150周年を目前とする名門企業の末路を描きました。取締役会は同床異夢が続き、ガバナンス不全は重篤化、インタビュー取材に応じた島田太郎新社長の描く新戦略にはすでに3つの懸念が浮上しています。混迷の長期化で30代は見限り新卒学生からは敬遠されるなど、グループ12万人組織で進む人材先細りの現状についても迫りました。
 

【第2特集】水道危機


宮城県で水道事業などの民間委託が始まった。一方で値上げしか選択肢がない自治体もある。

担当記者より

特集「東芝の末路」を担当した藤原宏成です。東芝は現在、株式非公開化を含む戦略を検討している最中です。かつては日本を代表した巨大企業が、自ら市場を去ろうとしているのです。

その背景にあるのはモノ言う株主たちの大きな存在です。東芝の経営はここ数年、株主の声に振り回されて二転三転してきました。そんな東芝に残された解決策は非公開化しかないように思えます。

特集を作るにあたって、若手からベテランまでたくさんの東芝の社員に話を聞きました。彼らの考えも同様で「とにかく早く経営の方向性を固めて欲しい。株主を追い出すためには非公開化もやむなし」というものでした。

ただし、非公開化には障害もあります。現在4社に絞られたスポンサー候補は本当にお金が出せるのか、経済産業省はどう考えるのかなど、乗り越えるべき壁は多く残されています。東芝にとってのリスクも小さくありません。社員たちは「非公開化後、スポンサーが利益を上げるために、自分の事業は切り売りされるのではないか」と不安を口にします。

島田太郎社長が「複雑な連立方程式」と表現しているように、株主、従業員、スポンサー、顧客、国などさまざまなステークホルダーが納得するようなゴールを見つけることはそう簡単ではないでしょう。

誰もが知っている大企業が、これほどまで追い込まれている。その経緯や今後の行く末は今後市場と向き合っていく日本企業たちにとっても注視すべき事例の1つだと思います。

特集では、足元の東芝の混乱から、非公開化を検討するに至った経緯、事業の現状と将来まで詳細に解説しています。渦中の島田社長にも、株主に対するスタンスや経営のビジョンを語ってもらいました。ぜひ、お手にとってご覧ください。

担当記者:藤原 宏成(ふじわら ひろなる)
1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。半導体業界、銀行業界担当を経て、電機業界を担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
東芝の末路
[prologue] 群がるファンドに託す命運 非公開化のカウントダウン
ベインの陰で虎視眈々 筆頭株主エフィッシモの狙い

Part1 揺れる経営
なぜ「非公開化」が浮上したのか 株主大分裂で失った経営の舵
混乱の始まりは2017年 6000億円増資の代償
ガバナンス不全は重篤化 同床異夢が続く取締役会
スポンサーのそろばん勘定 非公開化は「おいしい投資」
ファンドが気をもむ 視界不良のキオクシア上場

Part2 多難の新戦略
「データで稼ぐ」は可能なのか 島田改革を阻む3つの懸念
90年代から研究開発 量子技術はいつ花開く
「私はビジョナリーな人」と公言 島田太郎社長とは何者か
事業の「成長性通信簿」 「不可」はないが「優」もなし
逃がした魚は大きかった 売却事業たちの「その後」

[インタビュー] 東芝社長CEO 島田太郎
「私はビジョンを示した あとは株主の選択を待つ」

Part3 社員の葛藤
グループ12万人を待つ未来 人材先細りが進む不安
[誌上座談会] 現役社員たちが明かす 東芝社内のリアル
日立に負けず劣らず 12万人社員の最新懐事情
大きな声では言えない話 従業員持ち株会は今がお得
[epilogue] 漂流の原因は「文化」にあり 遠く離れた日立の背中

第2特集
水道危機
水道料金を4割値上げ 経営難に直面する自治体
老朽化や技術者不足で満身創痍の水道インフラ
水道事業の民間委託 世界で戦う商社の視線


ニュース最前線
虎の子のアリババ株を放出 防戦一方のソフトバンクG
日野のエンジン不正が拡大 まだまだ終わらない正念場
サントリーが柱事業を再編 創業家御曹司が抱く危機感

連載
|経済を見る眼|社会的にコロナをいかに終わらせるか|苅谷剛彦
|ニュースの核心|米バイデン大統領「肝煎り法案」成立の影響度|中村 稔
|発見! 成長企業|メニコン
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|ルネサンス 社長 岡本利治
|フォーカス政治|ツキだけではない岸田首相の突破力|歳川隆雄
|中国動態|「国策ファンド」汚職は産業政策の限界か|梶谷 懐
|財新 Opinion&News|BYDが乗用EVで日本参入、競合も虎視眈々
|グローバル・アイ|西側諸国が民主台湾を残したい「本当の理由」|ダロン・アセモグル/ジェイムズ・ロビンソン
|Inside USA|極右の黒幕に賠償命令、陰謀論が映す米社会の闇|瀧口範子
|FROM The New York Times|中国に筋金入りの強硬姿勢 ペロシ下院議長「訪台」の必然
|マネー潮流|「ゴルディロックス期待」は早すぎる|森田長太郎
|少数異見|「夏の甲子園」は抜本的な見直しが必要だ
|知の技法 出世の作法|国際人権団体が指摘したウクライナ軍の戦術|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|社員と部署の希望を反映 人事異動を経済学が変える|小田原悠朗
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