週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年11月26日号
2022年11月21日 発売
定価 750円(税込)
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【第1特集】1億「総孤独」社会

一人暮らし世帯が4割に迫ろうとする今、頼れる人のいない孤立状態に、あなたの親・子・同僚など、誰もが陥りかねません。とりわけ病気や離婚、失職をきっかけとした、相談相手がいない働き盛りの「超孤独」には、ある日突然陥ります。本特集では役職定年世代の50代、コロナ禍で生活困窮が露呈した中高年女性、過度な気遣いで疲弊するZ世代など、1億「総孤独」ともいえる日本社会の現実を描きました。「成年後見人」の巧妙な罠、家事や介護に縛られる20~30代「若者ケアラー」の実態などにも迫りました。
 

【第2特集】勃興するインドネシア


巨大な潜在力を秘めるインドネシア。今後も経済発展を続け、大国への道を歩んでいけるのか。

担当記者より

特集「1億『総孤独』社会」を担当した井艸恵美です。今、なぜ「孤独」をテーマにしようと思ったのか。きっかけは旧統一教会の問題です。前回、宗教をテーマにした特集をつくる中で、カルト的な宗教に入信する人の中には、頼る人のいない孤立した状態にある人がいると感じたからです。

一人暮らし世帯が全世帯の4割に迫ろうとしている今、誰もが孤独に陥る可能性があります。今回印象的だったのは、「身寄りがあっても無縁状態にある人」が増えているということです。ある自治体に安置されている引き取り手のない遺骨は、以前ならば「身元不明者」が大半でした。しかし、今では身元が判明して親族に連絡を入れても、引き取りに来ない人が増えているというのです。

親の介護や葬式の手続き代行をする、家族代行業者の需要も高まっています。相談の多くは「親の面倒を見たくない」という子どもたちから。「家族頼み」の自助・共助の社会は崩壊しつつあると感じました。

そんな社会の歪みが引き起こす、あらゆる世代の孤立を取り上げました。病気や離婚を機に孤立する現役世代、成年後見人に財産を狙われる高齢者。そして、私たちのすぐ近くにいるのに、最も見えづらい存在にもスポットを当てました。一つは単身の中高年女性、もう一つは20~30代で家族の介護をする若者ケアラーです。

まじめに働いてきたごく普通の中高年女性たちは、「女性活躍推進」の裏でひっそりと声も上げられず貧困に喘いでいます。彼女たちは飲食店やスーパーで働く女性。すぐ隣にいる存在です。若者ケアラーは「20代で介護している」ということを理解してもらえず、仕事を続けることも難しくなります。会社の同僚にもいるかもしれません。

今回の特集で取り上げた孤独は、自分ごととしても、周りにいる誰かのこととしても読んでもらいたい記事ばかりです。

担当記者:井艸 恵美(いぐさ えみ)
群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
1億「総孤独」社会

Part1 現役世代の孤独
40代が語る「頼る相手がいない」地獄
病気や離婚、失職がきっかけで誰でも陥る 働き盛りの「超孤独」
データでわかる 日本の孤独社会

[インタビュー] 経済合理性だけを追求してきた結末
家族、農村、会社からの解放を求め そして「孤独」になった
早稲田大学文化構想学部教授(社会学)石田光規

年収は2~3割減、あてがわれる仕事が少ない
「役職定年」の50代を襲う孤独

宗教2世の「孤独」 山上徹也容疑者が夢見た「社会との接点」
エリート両親との「格差」 氷河期世代のあらがえない孤立

Part2 コロナで露呈した孤立
[ルポ] コロナ禍の孤独死
特殊清掃の現場が照らす 日本の暗部  
       
子どもがいない単身女性は支援の対象外
「女性活躍」の陰に埋もれる 中高年女性の貧困

[インタビュー]「自分が悪いと思わないで堂々と助けを求めていい」
 NPO法人くにたち夢ファームJikka代表 遠藤良子

相談相手は「お母さん」という若者が増える理由
過度な気遣いで疲弊する「コロナ×Z世代」の憂鬱

Part3 無縁社会の果て
死者の意思尊重へ奔走する横須賀市の終活支援
親族に引き取ってもらえない遺骨の「声」
 
東京都港区「ふれあい相談員」の悪戦苦闘
セレブな街に埋もれる高齢者の声なき声

[インタビュー] 「一人暮らし高齢者の半数は生活保護水準以下」
明治学院大学名誉教授 河合克義

親の「最期」を業者に委託する人々
相談の約6割は「親の面倒を見たくない」

[インタビュー]「孤独・孤立に陥る高齢者ほど詐欺被害に遭いやすい」
慶応大学経済学部教授 駒村康平

身元保証や死後の手続きを誰が担うのか
身寄りのない単身高齢者が陥る社会的孤立

認知症を疑われた高齢者の後見人トラブル
あなたの親を狙う 「成年後見人」の巧妙な罠

家事や介護に縛られる20~30代
家族、行政の助けなく孤立無援 「若者ケアラー」の実態

NPOと行政の連携で「人間の安全保障」を実践
子どもの「孤立」防ぐ 東北被災地の奮闘

第2特集
気がつけば経済大国 勃興するインドネシア
若者に浸透する中韓企業 日系企業が「SNS敗戦」
インドネシア「大国化」と低下する日本の存在感    

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