週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年4月8日号
2023年4月3日 発売
定価 780円(税込)
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【特集】狙われる高齢者 喰い尽くされる親のカネ


あなたの親のお金を、あの手この手で吸い取ろうとする“だましのプロ”たちがいます。こうした詐欺師たちは、決して詐欺師らしい顔はしていません。本特集では想像を超える巧妙さを持つ特殊詐欺の最前線、家族や健康の不安に付け込む身近な悪徳商法、成年後見人の闇など被害の全貌に迫りました。また名簿やアジトの供給など詐欺師を支える犯罪インフラや犯行の「分断策」のリアルなど、加害者たちの実像を描きました。金融機関が定年世代を狙う「退職金プラン」の問題や催眠商法対策など資産防衛策も紹介しています。

担当記者より

特集「狙われる高齢者」を担当した野中大樹です。

このテーマで特集を組んでみようと思ったのは、昨年の秋、「高齢者の孤独・孤立」について取材をしている時でした。

親族や友人と疎遠になり、会話をする機会が減って寂しい思いをしている一人暮らしの高齢者に、親しげに電話をかけては不要な住宅修繕を提案したり、「要らないものを買い取ります」と言いながら高価な貴金属を二束三文で買い叩くいかがわしい業者が多いという話でした。

高齢者の生活相談にのる自治体の相談員の方々は「明らかに一人暮らしの高齢者がターゲットになっている」と危機感を募らせていました。

取材で見えてきたのは、周囲に相談できる人がいない高齢者たちが狙われ、多くの被害に遭っている現実でした。

高齢者が狙われるという意味では、「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺も同じです。広域強盗事件の容疑者としてフィリピンから移送された「ルフィ」疑惑の4人の取り調べが今も続いています。彼らによる被害総額は60億円と言われていますが、特殊詐欺の全体の被害額は年間300億円を超えています。一日に1億円近いお金が騙し取られているのです。

特集では、「オレオレ詐欺なんかに自分がだまされるわけない」と思っていた高齢女性が、まんまと150万円をだまし取られたエピソードを書きました。特殊詐欺に、暴力団が介在している現実も記しました。

高齢者の資産額や住所、電話番号が載った「裏名簿」が、探偵事務所や名簿屋、暴力団たちの間で売り買いされていることも明らかにしています。

どうやって資産を守ればいいか、「親子で学べる資産防衛術10カ条」もあります。ぜひ、ご一読ください。

担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
狙われる高齢者

喰い尽くされる親のカネ

Part1 被害の全貌
特殊詐欺最前線
想像を超える巧妙さに喰われる高齢者

家族や健康の不安、孤独に付け込む 高齢者を襲う身近な悪徳商法
損をするまで買わされる 高齢者を狙い撃ちした「仕組み債」
社会福祉行政の落とし穴 成年後見人の闇 西岡千史

Part2 加害者たちの実像
犯行の「分断策」
指示役、リクルーター、実行部隊、運搬役… 分断された犯行と犯意 田崎 基

“ルフィは誰か” その正体暴きの難儀さ 田崎 基
友人を助けたつもりが逮捕が待っていた 特殊詐欺の「共犯者」にされかかった男の後悔

詐欺師を支える犯罪インフラ 名簿やアジトを供給する人々
詐欺でシノぐ者たちの[覆面座談会] 高齢者をだます者の「素顔」と「本音」
[インタビュー] 特殊詐欺の主犯格が手口を激白
「喜怒哀楽を与え判断力を鈍らせる」フナイム(活動名)

Part3 資産防衛マニュアル
親子で学べる完全保存版
詐欺・悪徳商法から家族を守る10カ条 西岡千史

元販売員が手口の全貌を語る 高齢者の心を奪う「催眠商法 」対策
株式とJ-REITに絞った運用術 元ファンドマネジャーが指南 親の資産運用術 川元由喜子
投信の手数料が高く、「買ってはいけない」 金融機関が定年世代を狙う「退職金プラン」 鈴木雅光
詐欺師たちの常套手段を理解する 40代以下の被害相談も急増 投資被害から身を守る鉄則 鈴木雅光

深層リポート
東日本大震災 米軍のトモダチ作戦
置き去りにされた米兵被曝

[インタビュー] ジャーナリスト エィミ・ツジモト
[インタビュー] 元首相 小泉純一郎
「米兵は日本を助けてくれた 被害救済に誠意ある対応を」

ニュース最前線
東芝の買収価格は割安か 「賛同」でも消えない懸念
商工中金ついに民営化へ 銀行業界に渦巻く「不安」
マツダ新社長に「米国通」 EV投資の原資確保が使命


連載
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