週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年4月15日号
2023年4月10日 発売
定価 800円(税込)
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【第1特集】激変の生保、損保の憂鬱 保険動乱

コロナ患者への総額1兆円近い保険金支払いを迫られている生命保険。足元のインフレで車両修理費などのコストが急速に膨らむ損害保険。経営環境が厳しさを増す中で、保険金の不正請求問題も直撃する両業界の実情に迫りました。生保のうち医療、がん、引受基準緩和型の3大商品をランキングで徹底解説しました。巻頭特集は「トヨタ 急転のEV戦略」。新経営体制が4月1日に発足したトヨタ自動車。佐藤新社長が強調する「EVファースト」の狙いを読み解き、転換期に直面する3つの難題についても検証しています。
 

【巻頭特集】トヨタ 急転のEV戦略

トヨタ自動車の新経営体制が4月1日発足した。佐藤新社長が強調するのは「EVファースト」の姿勢だ。
 

【第2特集】これからどうなる? 欧米銀行危機の余波


 

担当記者より

特集「保険動乱」を担当した中村正毅です。本特集では全体を貫く大きなテーマの一つとして、「不正」に着目しています。

ここでいう不正とは、保険金の不正請求といった契約者側によるものだけでなく、「生保レディ」と呼ばれる営業職員による金銭詐取といった企業側によるものについても指しています。

保険金の不正請求でいえば、新型コロナの陽性者が感染したことを隠して医療保険に加入し、加入後すぐに保険金を請求するといった事例が昨年、全国で相次ぎました。「業界として少なくとも数十億円規模の被害があるのではないか」(大手生命保険会社幹部)という見方もあり、コロナ禍を通して日本人の道徳心、倫理観が大きく崩れていっているのではないかと不安になります。

他方で損保業界では、中古車販売大手ビッグモーターによる事故車修理費用の不正請求が大きな問題となっています。ビッグモーターは保険販売の代理店業務のほかに、全国に30超の整備工場を持っており、車検や事故車の修理も手掛けています。その修理事業で、作業者が故意に車体に傷をつけて塗装し直したり、中古部品を新品だと偽って取り付けたりしながら、修理費用を水増し請求していることが昨年初めに発覚しました。

問題が大きくなったのは、そうしたビッグモーターの不正行為、顧客軽視の姿勢に対して、“主幹事会社”となる損保ジャパンが目をつぶって早期に幕引きをしようとしたからにほかなりません。修理費の水増し請求という被害者でもある損保ジャパンが、自動車保険の契約欲しさに不正を水に流そうとしていたのではないかと疑われているわけです。

そうして契約者、事業者、保険会社それぞれがそのモラルを問われるような事態に陥っているのが、保険業界の偽らざる現状です。

本特集ではその舞台裏で一体何が起こっているのか、その実情を余すところなくお伝えしていますので、是非雑誌を手に取ってご覧頂ければ幸いです。

担当記者:中村 正毅(なかむら まさき)
これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険、消費者金融などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

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視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

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ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
激変の生保、損保の憂鬱
保険動乱


PART1 プロが選ぶ生命保険
入院給付金は総額1兆円に迫る コロナ患者支援で激変した生命保険
医療保険ではなないろ生命が躍進 激化する価格・保障競争
医療保険 がん保険 引受基準緩和型保険 ランキング&商品比較
外貨建て保険 苦情増加の懸念
節税保険 残った規制の抜け穴
ミニ保険 行政処分連発で成長市場に暗雲

PART2 生保営業の光と影
再発防止を妨げる大量離職問題 抜け出せない不祥事の連鎖
代理店品質評価制度の行方 業務負担の軽減に活路
大手/中堅/外資の7人が放談! 生保営業職員覆面座談会
[インタビュー]大手生保2社に聞く 営業職員のあるべき姿
「不正防止の仕組みを強化。窓販と海外の成長を加速」日本生命保険 社長 清水 博
「5年後在籍率を40%へ。非保険領域にも注力」 住友生命保険 社長 高田幸徳

PART3 損害保険の憂鬱
車両修理にもインフレの波 浮上する保険料の値上げ
損保ジャパンとの蜜月どこまで ビッグモーター 不正請求の深淵
利上げで局面転換 異常事態の再保険市場
[インタビュー]「中小企業の経営支援を一段強化」東京海上日動火災保険 社長 広瀬伸一

巻頭特集
トヨタ 急転のEV戦略
VWも苦戦のソフトウェア戦略 浮沈のカギは「ウーブン」が握る
トヨタはどう動く? 転換期に直面する3つの難題
6人目の非創業家社長 「豊田」頼みを超えられるか

第2特集
経済、金融政策、株価を総点検
これからどうなる? 欧米銀行危機の余波

デジタル取り付けの破壊力 リーマン後の金融規制に盲点
危機抑え込みに動いた政府 日本が堅持する 公的資金の“切り札”
いざ銀行破綻、私の預金は大丈夫?

ニュース最前線
電力会社の「不正」に鉄鎚 新たな違法行為で泥沼化も
中国のアステラス社員拘束 「スパイ容疑」連発の恐怖
LINE銀行が開業を断念 金融事業リストラの序章か


連載
|経済を見る眼|なぜ現代サプライサイド経済学が必要か|佐藤主光
|ニュースの核心|TSMCのおひざ元での人材育成システム|福田恵介
|発見! 成長企業|ヴィッツ
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|アサヒビール 社長 松山一雄
|フォーカス政治|求心力維持には5補選全勝が条件|塩田 潮
|中国動態|習主席訪ロで、「中立」政策はどうなる|小原凡司
|財新 Opinion&News|中国車載電池のCATL、業績好調も漂う暗雲
|グローバル・アイ|複雑すぎて機能しない米金融監督の「迷宮的」欠陥|ハワード・デービス
|Inside USA|SVは「テックの中心地」であり続けられるか|瀧口範子
|FROM The New York Times|ティックトック禁止めぐり 火花を散らす米中政府
|マネー潮流|米銀問題の本質は政策ミックスの失敗|森田長太郎
|少数異見|賃上げに異論はなけれども
|ヤバい会社烈伝 | 銀行、武富士、カネ貸し 体育会っすから 実は手荒いっす|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の技法⑥|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|料理の煙で健康被害も 人々のリスク認知には歪み|横尾英史
|話題の本|『事実はどこにあるのか 民主主義を運営するためのニュースの見方』著者 澤 康臣氏に聞く ほか
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  • 10/27(月) 週刊東洋経済 2025年11月1日号